ヘッドフォン祭で使用したHM901の試聴機(プリプロダクションモデル)を使用しての実機インプレッションです。
HM901は通常のボリュームに比べるとかなり高価で本格的なステップアッテネーターを搭載していて、本体上部はそれで占められるというこだわり用です。本体前面には再生停止・早送り、曲選択などのハードボタンとホイールがありますのでDX100で面倒を感じてた人には福音でしょう。UIはHM801から比べてかなり使いやすくなっています。
ユーザーインターフェースはかなり使いやすくHM801の古いDAPのようなものではなく、一気に国産のメジャーメーカー製品的な洗練された優れたUIになりました。ホイールを回すところころとアイコンが転がって選択します。ただしDX100のようなアップサンプリングとかデジタルフィルターの機能は試聴機ではありませんで、代わりにSPDIF入力の機能などがありました。
底面はAppleの旧30ピンコネクタのような拡張ポートになっていて、アナログアウトやデジタルアウトはこのポート経由となります。また充電もこのポートを使います。側面にいくつかスイッチがありますが、HD/Vintageとはアナログローパスフィルターの設定で、帯域特性を変えることができるようです。
音質の点でいま現在のハイレゾDAPの王者としてDX100と比較してみました。DX100は差異もありますが、HDP-R10のベースとなったモデルです。
感じるのはまずHM901の透明感の高さです。DX100はAndroidベースっていうのも原因と思うけど、iriver AK100あたりと比べても透明感に劣るのはちょっと問題ではあります。前に書いたようにDX100の音声出力は最終的にALSAを経由しているようですが、プレーヤー本体はJAVAベースで仮想マシン(VM)上で実行されます。ただDX100ではFirmware1.2.7でかなり手が加わったのか音質のこの辺は改善されてはいるようです。この辺は別記事(iBasso DX100とAPI開示)に続きます。
ただし仮にこの透明感・クリアさの問題がさらなるバージョンアップで少なくなったとしても、HM901はDX100に比べて一段上の音楽再現の質の高さを聴かせてくれます。これはもう少し補足して言うと、たとえるならオーディオ的で自然な鳴りの豊かさとち密さですね。濃密感・実体感のようなハイエンド機器で使うような言葉が浮かんできます。DX100もそれだけで聴くと良いんだけど、HM901からDX100に戻すと物足りなさ、密度感の低さ、音再現が淡白なものに感じられます。これは一つの曲をじっくり聴き比べて分かるというレベルではなく、聞き流していてもすぐわかります。JH16+Twagのような再現力の高いイヤフォンを使うと顕著ですね。たしかに音の細かさという点で言うとDX100でもかなり高いレベルにあるのですが、901ではそれにプラスしてオーディオ機器的な意味での音の豊かさが再現されています。この差はDX100のバージョンアップをしても埋まらないハードの差だと思います。
HM901の技術的なポイントはハイエンドDACチップのES9018を二個使用しているところです。このES9018はもともと一個でマルチチャンネルの機能がありますから、それを複数使うというのは贅沢なことで、ハイエンド機材の世界を見てもアキュフェーズをはじめそれほど例はありません。HiFiman CEOのFangにヘッドフォン祭で会ったときに話を聞いてみたんですが、プロトタイプではさまざまなモデルを作成し、実際にはES9018一個のタイプも作成したそうです。そのモデルではたしかに性能は良かったけれども、いわゆるESSくさいというかドライで分析的すぎる感じが取れなかったそうです。しかし二個使用することで音楽的に豊かさのある再現力までが可能となったということです。
実際に中国のHiFiman本社には高性能スピーカーを使用した環境があって、そこでES9018を使ったある有名ハイエンドDACと比べたりして音決めをしているということです。そんなにそのリファレンスDACと遜色ないって話です。
カスタムIEMと合わせてみると、JH13だと音の表情は掴みやすいんですが、音楽的に良いのはJH16です。JH13だとジャズトリオに向いていて、JH16だとオーケストラのスケール感をも再現できるという点もあります。またそれだけの余裕を備えているのがHM901とJH16の組み合わせです。もちろんWhiplash TWagなどの高性能ケーブルも必要ですね。このレベルになると。
HM901とFitEar ToGo 334/Ultrasone IQ
Ultrasone IQと合わせるとさらに音楽的には聴きやすくなります。FitEar To go 334と合わせると空間表現の豊かさに圧倒されます。ただK3003だとやや薄い表現が目立つようにも思えます。
いずれにせよ901レベルの音になると一つの音が正確であいまいさというものが少なくなるので、テスト機器的な意味でもイヤフォンの性能があばきだされます、まさにもちあるくアキュフェーズみたいなものかもしれません。
またHM901とペアになる新型のRE600もなかなか良いイヤフォンです。音楽的に豊かで性能も高い一方でiPhoneにRE600とUBiOアプリあたりを組み合わせただけでも満足できる鳴らしやすさもあります。
RE600は4pin TRRSバランスプラグを備えているので901を組み合わせるとバランス出力が楽しめます。バランスに切り替えるとぱっと音が広がってポータブルでのバランス駆動を手軽に楽しめます。バランスとシングルエンド(ノーマル)の切り替えはスイッチのみです。
試聴機はバランスアンプカード付きで、アンプカードは電池裏蓋を外すと交換ができるようになっています。
持ちあるきに関しては文鎮とも称されたDX100とはちがって、AK100ほどではないにしろHM901がそれなりにコンパクトでものすごく重いというわけではありません。バッテリーの持ちは測ってはいませんが、特によいわけではなくだいたいDX100くらいかなと思います。ただ、あまり長く持つよりもこのクラスだと数時間程度と言う方がいっぱい電流を流してる感じがして良いですね。もちろんそれなりにあったかくなります。
ファームに関しては割と安定していてあまり落ちるということはありませんでしたが、タグの扱いなどがまだ試聴機ではうまく出来てないところもあります。基本的にいま使えたのは音質だけを試すモデルで、機能についてはまだ試聴機では実装されていないものも多いので生産モデルが使えるようになったらまた詳しく見てみたいと思います。
ハイレゾDAPも注目を集めてきていますが、HM901は音質に関してはハイレゾDAPの頂点を極めた新しい王者と言えるでしょう。日頃ハイレベルのオーディオ製品を聴いている人にもぜひお勧めしたい製品です。
Music TO GO!
2012年11月26日
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