Music TO GO!

2006年12月09日

An Ancient Muse - ロリーナ・マッケニット

「彷徨えるケルト人」と称されるLoreena McKennittの9年ぶりの新作です。彼女はケルト系のアーティストとしてそれなりの人気でしたが、9年前にアルバム"The Book of secrets"が300万枚と爆発的なヒットをとげてそれいらいどうしたのか活動をしりませんでした。そのときはアルバムの一曲のThe Mummers' Danceがシングルヒットしてというパターンで、ちょうど狂気がMoneyのシングルヒットから火がついてヒットしてわりとマイナーなアーチストがブレークしたのを思い起こさせます。
彼女は哀愁をたたえる曲調のケルト・アイリッシュ系の音楽でもさらに一段深く内世界を探るという感じのアーチストで、ファンは多いのですが一般に受け入れられるとは思わなかったのでそのときもびっくりしたのを覚えています。
アルタンなどのようにアイリッシュではなく、クラナドのようにポップでもありません。しかし彼女の音楽は深い憂いと精神性をもった独自の世界を歌い上げます。

こちらは公式サイトで、音楽が試聴できます。(日本語ページがあります)
http://www.quinlanroad.com/

日本でも最近はケルティックウーマンのヒットでケルトという言葉がよく知られてくるようになりました。ケルト系アーチストは一般的なケルト文化圏のアイルランドやブリテン島かブルターニュ半島というところの出身が主ですが、彼女はカナダ出身です。
彼女の苗字はMcKennittですが、このMcが前についた苗字の人はケルト系の祖先を持っています。たとえばハンバーガーのマクドナルドのMcDonaldが代表的なものです。他に有名な人ではマッカートニー(McCartney)やマックイーン(McQueen)が思い浮かびます。Mc〜はゲール語で「〜の子供」という意味です。これでマクドナルドの看板のMの次のcの文字が小さい理由がわかりましたでしょうか。

過去の曲でわたしが一番好きなのはBonnie Swansという有名なバラッド(歌い語り)をアレンジしたもので、これは恋敵の姉に溺死させられた妹が白鳥になり骨がやがてハープになるというものでペンタングルなども取り上げている伝承です。このように根はあくまでアイルランド・ケルトの伝統に深く結びついたアーチストのひとりです。
しかし、ケルト民族は世界各地に広がっていて今回のアルバムでもアイルランドを思わせるケルト系の曲よりも中近東のトルコやギリシャを思わせるものとなっています。それはケルトから離れた新境地というわけではなく、ケルト人というものをアイルランドやブリテンだけでなく、もっと広い世界から探してみたいという現われということです。もともとトルコのあたりにもケルト民族は多くいたということが示されています。これは前作の"Book of secrets"でもそうした傾向がありました。
曲は相変わらずのマッケニット節が聞かれますが、中近東風の曲でもちょっとアイリッシュ風の哀愁が感じられます。もとはギリシャ楽器のブズーキもアイリッシュのバンドで使われることも多くなってきましたが、この辺はもともと関わりがあるということですね。

このアルバムとともにBonnie Swansの含まれた前々作"マスク・アンド・ミラー"もお勧めです。

  
posted by ささき at 22:24| Comment(4) | TrackBack(1) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ささきさん、お久しぶりです。久しぶりすぎて忘れられてるかも(^^;) 私の方はいつもココを拝見しているのですが・・・
私もケルト音楽好きですが、ボーカリストには疎いのでLoreena McKennittという人は知りませんでした。
ケルティックウーマンは先月の日本公演行きましたが、満員盛況でした。今日は、ルナサが出演するということで、すみだトリフォニーホールのケルティック・クリスマスに行ってきましたが、いやあ、良かったです(満員とは行きませんでしたが)。来年は日本・アイルランド国交樹立50周年記念公演としてチーフタンズも来るそうですし、日本でケルト音楽熱が高まって来日公演が増えてくれると嬉しいです。
ちなみに、名字の頭にO´が付くのもケルト系らしいですねぇ。私にはギルバート・オサリバンしか思いつきませんが。
Posted by ひっちょ at 2006年12月09日 23:41
ひっちょさん、こんばんは。
ルナサはわたしも一枚(merry sisters of fate)しか持ってませんがライブでやったら盛り上がりそうなバンドですね。チーフタンズはけっこう来日しているような気がします。そのうちアイリッシュのベンチャーズと呼ばれるかも(^^
でもアイルランドとの親交にはやはりアイリッシュパブでギネスビールです(笑) そのへんでギネスを買ってもうまくないけどアイリッシュパブのギネスはいいですね。

あとO'がつく系ではオニールとかオブライエンなんかがそうですね。
Posted by ささき at 2006年12月10日 00:08
チーフタンズは、昨日もらったチラシによると6年ぶり9度目だそうです。
ギネスビールは、缶でしか飲んだこと無いので、アイリッシュパブへ行って飲んでみます(^_^)
Posted by ひっちょ at 2006年12月10日 09:52
そうか、最近はあまり来てなかったんですね。情報ありがとうございます。
来年にむけてアイリッシュ界隈も盛り上がるといいですね !
Posted by ささき at 2006年12月10日 11:03
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