ボリュームコントロールはデジタル機器でもアナログ機器でもキーポイントです。NFB11.32の記事でデジタルボリュームとアナログボリュームの得失について触れたのですが、実際はどうなのかということをSaberDACチップのESS Technologyが昨年の10月にRMAFで行ったプレゼンテーションの資料から見てみます。
http://www.esstech.com/PDF/digital-vs-analog-volume-control.pdf
こちらはESSのキーパーソンのひとりMartin Mallinsonが行っている上記セミナーの動画です。
プレゼンテーションの図を見るとわかりやすいのですが、デジタルボリュームが16bitの場合にはボリュームを下げると信号が下がるのに対してノイズレベルは下がりません。しかしアナログボリュームの場合にはボリュームを下げると信号が下がるとともにノイズも減少します。つまりアナログボリュームの優位点がみて取れます。
しかしデジタルボリュームが32bitの場合(ESSのDAC内蔵ボリュームを指していると思います)にはアナログボリュームのように信号が下がるとともにノイズも減少します。
これをビットレベルでみると以下のようになります。
16bitのデータ(30,003)を16bit幅のデジタルボリュームで-35dB変えたとすると、次のように誤差がある結果となります。16bitのデータを16bit幅で計算しても冗長部がないので余りが吸収できないというわけです。
0010010100010000 = 30,003
↓
0000001000010110 = 534 (本来は533.5372)
ただし下記のように16bitのデータを32bit幅のデジタルボリュームに(左詰めで)入れたとすると同じ-35dB減少させたとしても下記のように誤差がなくなります。
(表現形式は32bit整数ではなく固定小数点を使用していますね)
0111010100110011.0000000000000000 = 30,003
↓
0000001000010110.1000100110000100 = 533.5372
つまり余剰ビット幅(冗長分)の16bitを余りの余裕として吸収できます。
ESSは「アナログボリュームがDAC自体よりも低いノイズフロアを持っていれば、DAC内部のデジタルボリュームを使用するよりも優れている」と結論付けています。ただしESS Sabre DACのノイズフロアの-135dBより低ければだが、と付け加えて。
たとえばNFB11.32の例で言うとDACにアナログボリュームがついていますが、やはり低価格製品ですのでそれほどボリューム自体の品質には期待できないかもしれません(測定したわけではないですが)。そこでデジタルボリュームとのトレードオフとなるでしょう。ただNFB11.32の場合にはデジタルボリュームを生かしてもアナログボリュームはカットできないでしょうからもっぱら利便性の問題にはなります。
ちなみにこれらでESSが念頭に置いているのはPC側ボリュームではなく、DAC側ボリュームです。
DAC側ボリュームについては下記のDragonflyの項を参照ください。NFB11.32ではAudio-gd DeckというソフトウエアでPCからコントロールします。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/278372379.html
Music TO GO!
2012年09月12日
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