AudioStreamで面白い連載企画をやっています。
Audirvanaの開発者であるDamienとかDecibelのBoothにインタビューして、プレーヤーソフトウエアを語るという企画で、一回目はiTunesについてでした。ただこれはだいたいiTunesはライブラリとしては優れているが音質はいまひとつである、などだいたいわかる範囲でした。それを受けるという意味もありますが、二回目は開発者が自らのプレーヤーソフトウエアの特徴を語るというものでなかなか面白いものです。その問は「あなたのソフトウエアのどの機能が音質を改善するのか、それはなぜなのか」です。
http://www.audiostream.com/content/media-player-qa-q2-what-are-your-products-most-important-features
また第三回では他方で理解されていないかあまり使われていない機能は、との質問です。以下、二回目と三回目を少し私見を挟めながらまとめてみます。
Amarraでは25年の経験を生かしたSonic Studio Engine (SSE)でもっともアナログ的な音を提供する、信号処理とSSE/コンピュータ間の最適化を重視しているということ、信号処理においてはEQやデジタルボリュームの品質も自信がある、SSEは競合するメモリの管理を最適化することでハードとソフトのやりとりやオーバーヘッドを減らして結果的にノイズを減少させるとのこと。
また、あまり使われていない機能はFLAC変換とEQとのこと。
Audirvanaでは基本的に元の信号に変更を加えないビットパーフェクト再生を64bit処理で行うということ、DACへの最短で排他的なアクセスを行うということでコンピューター由来のジッターなどの影響を低減するということ、メモリー上にDAC形式(integer)で展開しておくことでCPU使用を最小にできるということ、またSystem Optimizerでの最適化やiZotopeも音質向上に寄与するとのこと。この辺はさきに書いたDamienのホワイトペーパーに沿っていますね。
あまり使われていない機能はないけれどもしいて言えばディザボリュームかな、ということ。
BitPerfectでは、特に機能というよりもディスクからDACまで効率のよいステップで実行すること。
使われていない機能というよりもうちは機能は最小限にする主義ですということです。ちなみにBitPerfectって会社になってたんですね。
Decibelではもっとも重要な機能は自動サンプルレート切り替えと最小限の処理で元データに忠実であるとのこと。つまり必要のない限りビットパーフェクトで処理して元のデータには手を加えないということ、また音飛び(glitch)を最小にするためにメモリーに読みこんで再生するなど、ボリュームが必要な場合は64bit処理をするなどなど。基本を忠実に守るという感じでしょうか。
あまり使われていない機能はマルチチャンネルサポートとのこと。今後拡張したいのはライブラリ機能(特に多数のファイルの管理)だそうです。
HQ Playerでは特徴はかなり技術的なことだと前置きして、、RedBook(CD品質)データにいくつもの手段でアップサンプリングを提供すること、特にリンギングを最小にしてストップバンド・アッテネーションを最大にするという組み合わせによりDACがもとの波形を正確に再現できるようにするとのこと。これはデジタルフィルター、アーティファクト(不要生成物)に関するところですね。
また二番目の特徴としてDSD対応DACへのデルタシグマによる出力も書いているのが注目点です。これはつまり現代DACの"native language"だから、としているのがポイントですね。これは計算処理を必要とするのでコンピューターに向くところだとのこと。
HQ Playerは基本的にDACでやるべきこと(デジタルフィルター処理など)をコンピューター側でやってしまうというコンセプトです。これはまたビットパーフェクトに忠実という既述Macプレーヤーソフトたちに比べると手を加えることが前提という点が面白い対比です。
あまり使われていない機能はデジタル処理によるルームコレクション機能であるとのこと。またデジタルボリュームも現代DACの性能を考えるならロスは許容範囲ではないかとのこと。
JPlayではただメモリ上に置くだけでなくメモリ管理の最適化を行い、CPUのタイマー・スケジューリングを最適化することでタスクスイッチの最小化をして、レイテンシーを向上させるという点がポイントということのようです。また強制ハイバネーションさせることでノイズ・ジッター出しそうなプロセスをすべて止めるということ。ビットパーフェクトなだけでなく、タイム・パーフェクトだと言ってます。
つまりきわどいくらいハードに近い低レベルの処理を最適化しているといのが、JPlayですね。ほとんど近代OSの機能を殺してしまって音楽再生プロセスだけで動かそうというコンセプトです。アセンブラで書いたら、と突っ込みたくなります。
これもMacソフトではここまで低レベルのことをいじっているのはあまりないので(ダイレクトモードはかなり低レベルですが)、WindowsよりもDOSっぽいというかちょっと個性的です。
一方でハイバネーションはあまり使われていないし、バッファ設定ももっと試してほしいということ。
JRiver Media Playerは内部処理を64bitで行っているのでいかなるDSP処理をしても音質は問題ない、またあるゆるダイレクトパス(ASIO、排他WASAPI、カーネルストリーミング)を備えている、マルチチャンネルやハイサンプルレート処理も可能、と柔軟性をアピールしています。
しかしHQ PlayerとJPlayがあまり強烈だったのでJRMCはWindowsプレーヤーソフトではかなり普通に見えます 笑。
JRiverではやはり機能が多いのでユーザーも迷いやすいかもということ。
Pure Music Playerではまず技術的な機能を語る前に信頼性が大事だとのこと。これは標準的なAPIにのっとって、あやしいAPIやコールを使わないなどが重要だろうとのこと。またPure Musicの前身であるPure Vinylの開発を通して(ソフトウエア技術よりも)まず自らがオーディオファイルであることを重視しているとあります。(Channel Dの試聴室の画像があるのはそういうこと)
またオーディオショウに出展する実績をあげることもユーザーとのつながりで大事たとしています。我々はデジタルオーディオもやっているがアナログを理解しているとも書いています。
技術に走りがちな他のソフトを暗に批判しているようにもちょっと読めますね。ちなみにPure Music Playerはサイトの中で(名指ししてませんが)AudirvanaのダイレクトモードはOS標準であるCoreAudioを使用していないので危険性があると批判しています。
他方でPure Musicの見過ごされがちの良さは一ライセンスコードでいくつでもマシンにインストールしてよいということ。またユーザーサポートも強力なのでぜひ使ってくださいということです。
しかし意外と各社とも個性的な見解で面白い内容です。
端的にまとめるとひとつにはコンピューター側でのソフトウエア処理を最適化すれば、ノイズやジッターなどでのハードであるところのオーディオ機器へのアナログ的な影響も結果的に抑えることができる、という感じでしょうか。
なぜソフトウエアを変えると音が変わるか、ビットパーフェクト以上に音が良くなるのか、という問いにはひとつの回答にはなっていると思います。
そういえばFoobar2000はありませんが、作ってる人がソフトで音は変わらないよと言ってるようなのであえて聞かなかったのかも。Foobar2000は本体というよりコンポーネントですね。
Music TO GO!
2012年08月16日
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