女性ヴォーカルとアコースティックギターによるデュオ、フライドプライド9枚目の作品。
前作がジャズスタンダード回帰で上質感を意識したトーンで仕上げられていたのに対して、本作ではもっと生き生きとしたフラプラが聴けるものになっているように思います。サマータイムやテイク5などジャズスタンダードのカバーとオリジナル曲による構成はかわらず、shihoさんのハスキーヴォイスと横田さんのスピード感あるギターのからみなど、フライドプライドらしさのあふれるアルバムで、ここからフライドプライドに入るという人にもお勧めです(試聴は下記Amazonリンクよりできます)。今回はジャズじゃないけどエアロスミスのウォーク・ディス・ウェイのカバーも聴きものです。
異色なのは最後の曲。これは宮城県の民謡、大漁唄い込みをカバーしています。おそらくは震災を意識していて今作のテーマであるアルバムタイトルもそこに関係しているのでしょう。
大漁唄い込みは斎太郎節とも呼ばれますが、松島の出てくる一番の歌詞はもしかすると他県の人でも知っているかもしれません。しかし、石巻(いしのまき)の出てくる三番は地元の人間以外にはほとんど知られていないでしょう。
松島のさーよー 瑞巌寺(ずいがんじ)ほどの 寺もないとえー あれはえーえ えとそーりゃー 大漁だえー
石巻さーよー その名も高い 日和山とえー あれはえーえ えとそーりゃー 大漁だえー
この日和山(ひよりやま)から見る北上川河口に広がる石巻の眺めは格別に素晴らしく、この歌で取り上げられることに恥じません。しかし、いまではそこにあったものは流され消えています。
ただこの歌を口ずさむといまでも、記憶にある美しい光景でその空白を埋めることができます。それが歌の力というものかもしれません。
Music TO GO!
2012年07月25日
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