このユニークな形のイヤフォンは音茶楽のFLAT4-粋(sui)で先日のヘッドフォン祭で限定発売されて話題となりました。
音茶楽というのは名の通りにお茶屋さんなのですが、イヤフォンメーカーでもあります。ユニークですね。
こちらはイヤフォンメーカーとしての音茶楽のホームページです。
http://ocharaku.jp/sound/
現在販売はフジヤエービックさんのみで取り扱っています。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail12596.html
* 音茶楽 FLAT4の特徴
音茶楽のオーナーはもともとはSONYでヘッドフォンなどの開発をされてた方のようですが、自分の理想をお茶とイヤフォンで実現しようとされてるのでしょう。このお茶とイヤフォンと言うのは関係なさそうでいて、その根っこに共通する思想がありそうです。そこでまずこのFLAT4の形から見ていきます。
この取っ手のようなパイプがまず特徴的ですが、これにはこうした意味があります。
ダイナミックとかBAに寄らず耳を塞いでしまうカナル型では耳道の中での共振によってある特定周波数(6k,12k)のピークが出来やすく、それがいわゆる耳に刺さるサ行のきつさに結びつき易いとのことです。普通はいわゆる音響フィルターでそれを打ち消すのですが、それだと他の高域も影響されてしまいクリアさが欠けてしまいます。
そこでFLAT4では経路差をつけることで位相差を付けてそのピークを打ち消すとのこと。これによって自然な中域再現と、音響フィルターの排除によってクリアな高域が実現でき、かつ耳に優しいというわけです。
もう一つの特徴は外からは見えませんが、ドライバーのユニットが対面で向かい合って音を出していると言うことです。これによって中低域に音圧感を得るとともに、振動系の反作用による機械振動をキャンセルして深い低域を実現したということ。
このように特徴的なデザインは自然な音再現を重視した設計ゆえのことと言えます。この自然な音、という人への優しさがお茶というキーワードとなにかつながっているようにも思えます。
* 音茶楽 FLAT4の音質
まずiPhone4S直で聴いてみました。イヤピースはコンプライのフォームチップでT200が指定されています。遮音性はコンプライの効果もあってなかなか良いですね。電車騒音も柔らかく低減されます。
FLAT4で聴いて、まず感じるのは音の広がりの豊かさです。豊かさと言うのは単に二次元的に幅が広いだけではなく奥行きがあり立体感があるという感覚です。この三次元感覚はまるでバランス駆動で聴いてるようで、iPhoneで普通に差してこれだけ三次元的な豊かさが得られるって言うのはなかなか聴いたことがないレベルです。
次の特徴はiPhone直でさえ低域の深さと量感の豊かさは驚くほどたっぷりとあることです。歪みなく淀みなく量感がたっぷりある感じですね。この辺はAtomic FloydのSuperDartsあたりと比べると分かりますが、ベースが多くても不自然なバランスではありません。
また、ヴォーカルも魅力的で、楽器の音色もリアルに感じられます。中域では適度な響きの良さと滑らかで自然な音鳴りの良さが印象的です。普通iPhone直だと無機的に聞こえてしまうんですが、FLAT4ではiPhoneだけでも良いかと思わせるイヤフォンの持つ音の良さがあります。
そして音響フィルターがないせいか、ダイナミック型と言っても高域のシャープさは十分にあります。また高域は優しく、サ行の擦過音など痛さを感じないけれども、よくある高いほうの伸びが詰まったのとは違いますね。きれいな中高域で、楽器の音も美しく感じられます。
音の印象をまとめると、全体に滑らかで音場が広く3次元的、明瞭感のある高域と厚みある中域、深く豊かな低域と、フルレンジとは思えないほど帯域ごとに個性があります。ただFLAT4で良いのは音の広さや帯域の豊かさのような性能面を誇示することで無機的になるのではなく、あくまで聴いて豊かな音楽体験が得られる点です。
しかしFLAT4で特に際立っている空間の広がりというのは、たとえばピークの低減とかタンデム配置ドライバーによる振動の相殺というFLAST4の売りの技術ポイントでは書いてないんですが、良い音を求めていたら自然に空間再現力も高くなったというところでしょうか。これは面白いところだと思います。
こうした凝った機構を持ってるものは能率が低いものだけれど、iPhone直でも7割くらいで音量が取れてるのもこうしたDAPやスマートフォンと組み合わせるのに適しています。iPhone4S直ではGoldenEarアプリが相性が良かったですね。普通GoldenEarアプリではiPhoneの音の荒さが時として助長されてしまう傾向があるけど、FLAT4だと音の滑らかさが上手くそれをカバーする感じです。これだとアンプなしでiPhoneだけでもけっこう満足できます。
アンプではGo-Vibe Martini+が良かったですね。マニアックに言うとnichiconコンデンサの初代RSA Hornetもよくあいました。iBasso DX100の精細感を引き出すというくらいになるとやや物足りなさを覚えるけれども、細かさを誇示するタイプよりさきにあげたような音楽的な方向に降ったものが似合うと思います。一番気に入ったのはNOS DACのHM601で、これで聴くと自然な高音質という言葉がぴったりとはまります。
こうした自然な良い音を聴くとFLAT4の「耳に優しい音を目指す」という目的は十分に達成されていると思います。そこがお茶のリラックスした優しさと通じたものがあり、自然な音楽の美しさを楽しむのにお勧めのイヤフォンと言えます。
Music TO GO!
2012年07月18日
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