Music TO GO!

2012年06月12日

OraStream、adapt(適応)型ストリーミングとスケーラブル・ロスレス圧縮


AudioStreamに面白いストリーミングサービスの記事が載っていました。
A Lossless Music Locker and a Q&A with OraStream

IMG_7927.PNG
OraStreamのクライアントアプリ、Digital LP

このOraStreamというミュージックストリーミングサービスです。これはユーザーからの音源をクラウドにアップロードしてそこからストリーミングできるという、いわゆるAmazonみたいなロッカー型のストリーミングサービスです。
OraStreamの売りは現在ではいいとこ300kbpsのストリーミングサービスをロスレスCD品質を超える1000-2000kbpsで運用するというもので、そのキー技術はadapt(適応)型ストリーミングとスケーラブル・ロスレス圧縮です。(将来的には192kHz/24まで考えているよう)
adaptive(適応)ストリーミング型はつまりストリーミングを受けるクライアント側の再生環境に合わせてビットレートを変えるというもので、受け手の再生環境(iPhoneか、PCでハイレゾ可能か)とかネットワークの帯域幅などに応じて、送り手(サーバー)が最適なビットレートで送るというものです。
これは前にAppleが作っているのではないかとかニールヤングが独自にやっているのではないかなどのうわさがあったのと同じものですね。

運用のワークフローとしては、ユーザーはWAVかFLACでアップロードしますが、それをサーバーではMPEG4-SLSというフォーマットに変換します。このMPEG4-SLSというのはSLS(スケーラブル・ロスレス)というもので、非可逆圧縮方式であるAACとそのロスレスとの差分を0.4kbps単位でレイヤー(層化)しているとのこと。下記にMPEG4-SLSの解説があります。少しでもロスがあったらロスレスっていうか、という話もありますがここではニアロスレスという言葉が使われていますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/MPEG-4_SLS
OraStreamではリアルタイムでネットワーク負荷をモニターしてこの段階化差分をストリーミングします。つまりユーザーの環境に適用するのでAdaptive(適用)ストリーミングというわけです。OraStreamingではこの調整があまり極端にならないようにスムージングしているとのこと(つまり80kbpsの次のフレームが急に800kbpsになったりしない)。現在のOraStreamではこれを64kbpsから1200kbpsまで動的に調整するそうです。またスマートフォンなどにおいてはユーザーのデータプランに影響しないようにビットレートの上限値設定ができます(下記参照)。
前に書いたようにWavPackフォーマットもロッシーとロスレスの差分がとれますが、このように積層化(段階化)しているのではなく、差分は一つ(ロッシーとロスレスとの差分)だと思います。MPEG4-SLSでは段階的に積層した差分を持つことでオーディオのミルフィーユみたいになっているんでしょう。

7月には運用開始するようです。料金プランはストレージと速度に応じて無料から年$240までいくつか用意されています。
当然法的なところが気になる点ですが、OraStream自体は中身にたいして責任を負わないが、ロッカーを貸すだけというスタンスのようです。これはこの記事のコメント欄まで読むとより明確に書かれているのですが、このサービスはもともと個人用ではなくミュージシャンか音楽プロデューサー向けと位置付けているということです。それで価格もやや高めだそう。(もちろん個人が違法アップロードしたらサービス停止するとのこと)

* OraStream Digital LPアプリ

受け手側はPCならばJAVAを使用したウエブか、iPhonesなどのアプリを想定しているようです。こちらの記事でクライアントであるOraStream DLP app(iOSアプリ)が紹介されています。
OraStream Digital Long-Play (DLP) App

これはいま試用版がAppストアからダウンロードできます。実際に試してみました。
IMG_7917.PNG
OraStream Digital Long-PlayのAppストアページ

iTunesリンクはこちらです。
http://itunes.apple.com/jp/app/orastream-dlp/id447633767?mt=8

IMG_7918.PNG     IMG_7921.PNG
OraStream Digital LPのアルバム選択画面。Concordレーベルからサンプルが提供されています。

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OraStreamの設定画面、キャッシュサイズやビットレート上限が設定できます。

IMG_7924.PNG  
再生コントロール画面、アップロードされているのは44/16のデータであることがわかります。

IMG_7925.PNG  IMG_7926.PNG
ライナーノートとアルバムアート画面もオプションで表示できます

ビットレートが変わるのは確認できませんでしたが、実際に試してみると音質もなかなか悪くないです。
*6/13追記 バージョンアップされてかなり動的に変化するのが分かるようになりました。

いまでも自分の作った曲をYoutubeにアップして有名になる人がたくさんいますが、OraStreamを使用すると高品質にそれを配信できます。さきのニールヤングとかAppleが作ろうとしているというのも、MPEG4-SLSみたいなものなんでしょうか。なんとなくこのタイプも仕組みが見えてきましたね。
いままではAACやMP3みたいに非可逆(ロッシー)圧縮か、FLACやALACみたいに可逆(ロスレス)圧縮かのふたつしかなかったんですが、このスケーラブル・ロスレス(段階化ロスレス圧縮)は第3の選択肢となるでしょうか。もう一つのアダプティブ・ストリーミングという言葉ももしかするとこの先いろいろと聞く機会が多くなるかもしれません。
posted by ささき at 00:16 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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