GW突入記念の簡単まとめ記事です。
最近よく「DSD再生」っていいますが、そもそもなぜいまDSD再生が求められるか、と思うかもしれません。それをまとめてみました。
まずDSDとPCMの違いと音の影響を端的にまとめるとこんな感じです。
DSD
- ノイズシェーピング(*1)が必要なため、高域でノイズが増えてダイナミックレンジの低下を招く
- PCMはこの影響はない、帯域ごとのノイズレベルは一定である
PCM
- デジタルフィルタが必要なため、アーチファクト(*2)が生じることで不自然な音を生じる
- DSDはこの影響はない、自然な音再現ができる
さて、ここでのポイントはいまのDACはほとんどデルタシグマ方式を使用しているという点です。(*3)
そうするとPCMをいまのデルタシグマDACで使用すると上に書いたDSDとPCMの悪い点を両方受け継ぐことになります。
これから次の二点がわかります。
*PCMを使うなら、マルチビット方式のDACが向いている (これは今回ふれません)
*デルタシグマ方式のDACを使うならば、DSDが向いている
つまりDSDがPCMより優れているから求められているというよりも、実のところはじめに書いたように一長一短ですが、いま一般に普及しているデルタシグマ方式のDACを使うならばDSDを使うのが理想的だというわけです。
SACDはそれを物理メディアでやろうとしましたが、商業的に失敗しました。それをいま物理ディスクではなくPCオーディオでやろうというのがDSDファイル再生の動きです。
そしてこのメリットをフルに発揮するためには、いったんPCM変換をかませないでストレートにDSDを送る「DSDネイティブ再生」が求められるというわけです。
* ちなみにこの他に下記のような考慮点もあります
- 44k→96k→192k→384kと来たPCMの力技の音質向上が、かつてのデジカメの画素数競争のように頭打ちになりそうという状況
- HD音源の配信がダウンロード主軸になったときにDSDの方が音質等価な場合にサイズを少し小さくできるということ
* いまはデルタシグマ方式のDACが主流といってもそれは内部の話で、DAC本体の入力としてはPCMのみを受けられるものがほとんどです。そのためDSDネイティブ再生にはPC側のソフトとDACの両方に対応が必要で、その方式としてDoP(DSD Over PCM)という業界標準が提唱されています。(これによりdCS方式という名称は今は死語ですので注意ください)
参考資料
コッチ先生のホワイトペーパーの記事
DoP標準規格(現在v1.1)
傍注
*1 ノイズシェーピングはノイズを除去するのではなく高域に追いやること
*2 計算の副作用により元の音のデータにはない付加物(プリエコーなど)ができること
*3 マルチビットDACよりデルタシグマDACの方が低価格で作りやすい
Music TO GO!
2012年04月29日
この記事へのトラックバック