ハイエンドスピーカーで知られるFocalの初のヘッドフォンであるSpirit Oneが発売されるという記事をCESの時に書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/245823132.html
Focalも最近ではnaimの買収などスピーカーメーカーというよりも総合的なオーディオメーカーとなってきましたが、これもその戦略の一環なんでしょう。
私は一月から予約いれてたんですが、何回か発売遅延の後にようやく届きました。国内でも4月に発売される予定です。こちらはフジヤさんのオンラインサイトです。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail11931.html
こちらはFocalのSpirit Oneの紹介ページです。
http://www.focal.com/en/headphones/nomad/spirit-one.php
Focal初のヘッドフォンでポータブルという選択も興味深いですが、ホームページではNomad Headphonesと称してるのも面白い点です。ノマドは遊牧民のことですが、最近では自宅以外で仕事するスタイルをノマド・ワーキングなんて言いますね。
ノマドと銘打たれた通りに225gと軽量で密閉型のポータブルタイプです。インピーダンスは32オームと標準的でiPhoneなどで使用して問題ありません。iPhoneリモートがついていて音量とポーズ・スキップなどがコントロールできます。
Spirit Oneのドライバーは40mmのチタニウム・マイラー(マイラーはポリフィルム)でUltrasoneと似ていますね。
Spirit Oneはまずデザインが魅力です。アルミとプラスチックを組み合わせて199ポンドという価格にたいしてかなり高級感を感じる良い仕上がりになっています。イヤカップの赤い裏地もなかなか良い感じです。
耳を覆うタイプですが、イヤパッドの密着性も高く側圧もあるのでかなり遮音性は高い方です。上のページでは開発に二年かけたけれども、とくにクローズドタイプの密閉性に注力したようです。パッドも快適ですが少し蒸れるのは仕方ないところ。その分がっちりしています。
イヤカップは回転させて折り畳めますが、やはりそれなりにかさばります。ケーブルは方側出しの着脱式でこれも布巻の質感高いものです。ソフトバッグやプラグにFocalの刻印がある点もブランド力に訴求してます。
ただFocalはスピーカーでは名の知れたブランドと言ってもヘッドフォンでは新参ですからやはり製品の質、特に音が重要です。先のページにも"deliver Focal performance on the move"フォーカルの音を外でも、とあるのでブランドなりの音質は期待したいところです。
まずiPhone直の音ですが、ぱっと聴いていろいろな意味で好感が持てる音と感じます。
高い方はクリアで音の解像感は高く、もやっとした感はなくて程よく晴れてます。楽器の音はきれいに分離されて、楽器の音色がきれいなのも特徴です。高域は十分に鮮明ですが鋭さは控えめできつさがないのも好ましく聴きやすい印象を与えているところだと思います。
中域では厚みがあってヴォーカルはかなり魅力的です。男声は力強さ、女声はほどよく甘さがあります。低域に埋もれることなく歌詞も明瞭で声の震えもよく再現されます。楽器の音色も良いけどこうしたヴォーカルも魅力的です。
低域は強めで下も出ていますが量感もあるので下支えのある厚みと迫力を感じます。またSpirit Oneの良い点は低域が強めながら、インパクトは緩くなく膨らまないでタイトである点ですね。低域の量感がたっぷりあると言うのはドライバーと言うよりSpirit Oneのもう一つの特徴である密閉性が高いせいもあると思います。
音場の広がりからも心地よさが伝わります。立体的で広く、空気感なども伝わります。 オーケストラものでも良いでしょう。
iPhone直でも満足感は高いですね。
iMod+SR71Aもなかなかに良い感じでパワフルなSR71Aと合わせてロックもかっこよくダイナミックに聴くことができます。SR71Aのほどよいウォーム感ともよく合います。音楽を気持ちよく聴けるでしょう。
HM801にすると精細感がストレートに増す性能の余裕もあり、それに重厚さがさらに加わります。ただ801だと曲によってはベースヘビーと感じることもあります。ジャズトリオなどではやや厚ぼったくなる傾向があります、
Teraで聴くとSpirit Oneの滑らかな表現がさらによくわかり曲によってはスモーキーな雰囲気感をよく伝えます。ヴォーカルも一層魅力的に感じられます。Teraは低域は抑えめなのでこの点では組み合わせとしては良いバランスに思えます。
いわゆるモニタ的という意味で正確な音ではないけど、基本的な音性能の高さをベースにして楽しめる音に仕上がってます。きつさがなく、聴きやすさ・音楽再現の空気感を重視という点ではB&W P5を想起するところもあります。ヘッドフォンというとシャープで顕微鏡的というものと思われがちですがある意味スピーカーメーカーの考える音はこうしたものかもしれません。
フォーカルの音と比べてどうか、という視点を離れると魅力的なヘッドフォンとして完成されてると思います。音質、遮音性、機能性そしてデザインと全体的によく考えられていますね。
単にヘッドフォンが売れてるからブランドで売り出そうと言うのとは異なります。逆にヘッドフォン市場にも影響できればFocalの名を知らなかった層に広めることもできると言うことを十分に考えて完成度を高めていると思います。
音質のグレードで言うとEdition8ほどではないけど、ESW10より良いと言うところでしょうか。ESW10は軽さは良いけどSpirit Oneの方がよりしっかり遮音されるので電車で使っても安心感があります。私は電車ではもっぱらカスタムなどのイヤフォンで聴くんですけど、やはりヘッドフォン使いたい時もあります。そういう時に混んでいても割と使えそうです。音性能もESW10よりSpirit Oneの方が高くて音が整っています。音の広がりも良く、明瞭感もより高く感じます。
比較対象としてはHFI780とかHD25と比べる方が良いのかもしれません。(これらはうちは改造ものしかないので比べませんが)
ゼンハイザーの新型HD25 Amperierとも比べてみたいですね。今年はAmperierと合わせて、なにげにポータブル密閉型も流行ることを期待してます。
Music TO GO!
2012年03月25日
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