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2012年03月05日

Altmann Tera-Player - 手のひらの上の192k再生・高音質DAP

Tera-PlayerはAltmann Micro Machinesというドイツのオーディオメーカーが開発した小型の高音質ポータブルプレーヤー(DAP)です。

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手のひらに入る小型軽量ですがその代わりディスプレイはありません。分かりやすく言うと「高級iPodシャッフル」みたいなものです。ではなぜ高級とつけたのかというとこんな感じです。

1. 192/24まで再生可能     (ただしDACの仕様は16bitです - 後述)
2. 小さいのにとても音質が良い  (CK4とかHM601ではなく、HM801とかC4と比肩できるくらい)
3. 小さいのにとても高価     (840ユーロ=約88,000円 2012/2月現在)

ここまでですでに興味を失った方と、少数のかえってとても興味がわいたという方に両極端に分かれると思います。このあとはこれで興味が出たという方にお送りします。
(うちのブログはだいたいそういう感じではありますが)

* Tera-Playerとは

一般にポータブルシステムの音質を高めるにはiPod+ポータブルアンプのような組み合わせを使いますが、これはかなりかさばります。2段ならともかくSoloなんかを使うと3段になってしまいますね。最近では高性能DACとアンプの一体型DAPとしてHM-801、Colorfly C4、iBasso DX100などがありますが、音質は素晴らしくてもやはりそれなりにみな大きいものです。AMP3なんかは小さくてよいんですが、音的にはいまひとつ物足りません。T51(sflo2)、CK4、以下同文ですね。
多少利便性は犠牲にしても、ほんとにポケットにはいってかつ、さきのHM801とかC4など高性能DAPに匹敵する音質のポータブルプレーヤーがほしかったという人もいるでしょう。わたしもそうです。
そして、それがこのTera-Playerです。

開発者はAltmann Micro MachinesのCharles Altmannさんで、発売されたのは昨年の12月くらいです。私が買ったのは三週間ほど前で、そのときはCharlesさんはTera-Playerは日本にはじめて送ると言ってました。ホームページはこちらです。
http://www.tera-player.com/

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再生できるファイル形式はWAVのみで、192kHz/24bitまで再生できます。音源はSDカードに入れます。
要になるDACチップは明記されていませんが、フィリップスのR2R DACをNOS(ノンオーバーサンプリング)使用しているということです。このR2Rというのはデルタシグマに対するマルチビットDACのことです(RというのはRegister)、またNOSについてはこちらのHM-601ページをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/160865129.html
チップはこの手の小型NOS DACでは一般的なTDA1543ではなく、最大で384kHzを受けられるフィリップスのDACチップと言うことです(1543は192kまで)。ただし先に触れたように24bit音源は再生できますが、DACのリゾリューションは24bitではなく16bitになります(ソフトで切り捨ててます)。マルチビットDACはビット幅が増えるとそのまま回路が複雑化しますので16bitというのは致し方ないことではあります。PCM1704は優れた24bitのマルチビットDACですが、1704はチップだけでなく電源やI/V変換など周辺から大変でこれをこんなコンパクトなパッケージでは作れません。
高性能DAPはたとえばHifiMan HM801ならPCM1704、Colorfly C4ならCS4398、iBasso DX100はES9018と据え置き並みのハイエンドDACチップを使う点がポイントではありますが、もともとポータブルの制約でそれらのDACチップのポテンシャルをフルに発揮できないなら、発揮できるDACチップを使用してフルに性能を引き出すと言うのがTera-Playerのポリシーのように思います。たとえばクロックなども手を抜かずにAudiophilleoなみの高精度(Period jitter: 5ps max、Phase jitter: 1ps max)です。
これはCharlesさんが他に普通のDACも制作していてジッターについても一家言あるという理由があると思います。(jitter.deというサイトも運営していてジッターに関する情報とジッターを提言する製品が書いてあります)

Tera-Playerは開発に4年かけたといいますがソフトウエアが一番大変だったそうです。
ここで病的なのは、Tera-PlayerはプロセッサにARM Cortex系を使用しているのですが、そのプログラムをすべてアセンブラで書いたそうです。普通はファームウエアでもCなどのわかりやすい言語(高級言語)を使うのですが、アセンブラは機械寄りというより機械語そのままで、たしかに効率よく細かい点まで書けるでしょうが組むのもそうとう大変なはずです。CharlesさんがARMに不明点を問い合わせをしたときにむこうからC言語で書いたらどうですか、と言われたそうです(笑)。
でもCharlesさんいわく、Cで書いていたらこんなサイズのパッケージでは192k対応のソフトウエアは書けないということです。実際にTeraでも176k超えの音源を再生すると曲によってはたまにプツプツと途切れノイズが出るので、この辺がぎりぎりなんでしょうね(44kや96kではそうしたノイズは出ません)。このあたりの実装が一番大変だったそうで、まあWAVしか再生できないというのも許してあげましょう。
もうひとつのソフトウエアでのポイントはSDカードのアクセスです。SDカードを読むさいにFATで読むのですが、その読み取りを最適化しないと不連続データを読む際に電源サージが発生してしまい、それがジッターに影響するとのこと。それにたいしてフラグメントの連続性を考えたカウンタかなにか使って最適化を行いサージの発生を最小限に抑えたら劇的にジッターが減ったとのこと。そうしないとSDカードは動くパーツが無いといってもジッターに与える影響がばかにできないとのことです。
こんな小さなパッケージですが、ソフトウエアの中になかなか濃い中身が詰まっているということですね。

Tera-Playerについての開発中の話やプロトタイプの中身はこちらのリンクで見られます。なおここで記述されているDACチップなどは製品版とは異なりますので念のため。
http://www.altmann.haan.de/tera_player/default.htm

* Tera Playerのデザインと使用感

実際に手に取ってみるとかなり小さく軽いということを実感します。ほぼiPodの半分ですね。完全に胸ポケットに入りますし、かなりがっしりしているので多少では壊れないでしょう。重さは80gです。

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書いたようにディスプレイはありません。コントロールは再生・停止、ボリュームアップ、ボリュームダウン、次の曲、前の曲の5つのボタンを組み合わせて操作します。中央ボタンはPlay/PauseではなくPlay/Stop (止めると曲の先頭に戻る)です。
キーの組み合わせで次のアルバム、次のアーティスト、ランダムプレイ(シャッフル)再生も可能です。アーティストとアルバムはメタデータではなく階層で判断します。そのため基本的にはiTunesの階層にならってSDカードに格納するのが良いでしょう。ただし一階層だけや階層なしで入れても再生はできます。音源データはSDHCカードを使用します。64GB以上のSDXCは対応できないと考えたほうが良いようです。

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このSDHCカードを入れることで電源オン、外すことで電源オフになります。上の写真では左がオンの状態です。SDカードはスプリングがないので、指で引き出します。

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ヘッドフォン端子は二つあって、それぞれゲインが異なります。内側のほうがLowで外側がHighです。ただLowとHighというよりはLowとMidで、HD800だとハイゲイン側にさして普通に音量が取れるかどうかです。良録音でレベル低めに入ってるのではHD800では音量が取れないでしょう。Edition8などは問題ありません。
USB端子は充電のみでUSB DAC機能はついていません。LEDは青(外側)がアクセスで赤(内側)が充電ステータスです。

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上の写真は背面で説明文が書かれています。Made in Germanyが新鮮ですね。
電池は15時間ほど持つということなので他の高性能プレーヤーよりはけっこう持ちます。
充電も5V USBから取れるので、いつもiPhone用に予備バッテリーを持っていればUSBミニ端子があれば充電できますので便利です。充電時間は80%で2時間とされています。

買ってから二週間ほど毎日使ってみた感想としては動作はかなり安定していますが、たまに読めないWAVがあると止まります(後述)。そのときは電源オフオンでリスタートできます。ただし電源オンですぐに一曲目を読みに行くので、一曲目が読めないWAVだとスタックしてしまうので注意が必要です。
キー操作に慣れが必要なときもありますが、ランダム再生主体ならそれほど問題はありません。私は基本的にはランダム再生で楽しんで、週末買ったCDを今日聴きたいという時はフォルダ名の頭に0を付加して先頭にフォルダが来るようにしています。

* Tera Playerの音質

主にK3003とユニバーサル334、Edition8で聴きました。K3003とTera-Playerの組み合わせは普通の人から見たらいいとこ数万円の組み合わせだと思うでしょうね。実際は20万以上するオーディオシステムが手のひらに乗ってるんですが(笑)
おそらくTeraの価値はほんとにどれだけ音が良いかという点でしょう。そこで少し詳しく書いてみます。

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- マクロ的にみた音の感じは
ぱっと聴いて思い浮かんだベタなキャッチは「小さな巨人」。小さくても音はビッグというフレーズが陳腐ですがぴったりときます。
小さいから音がこじんまりとしているわけではありません。音場に広がりがあり、深みがあります。その三次元的な立体感がちょっと驚かされます。小さいからがちゃがちゃした粗い音ではありません。とても微細な音まで描き出す高い解像力と、厚みのある本格的な音の再現力を持っています。

音の性格的にはNOS DAC、マルチビットDACということからだいたい想像つくと思いますが、「音楽的で自然な」再現を重視した設計です。実際にわずかな暖かみがあり滑らかで自然な音の再現力があるいわゆるオーディオっぽい音です。薄い音ではなく音にしっかりとした密度感があります。また音再現に滑らかさを感じます。

- ミクロ的にみた音の感じは
背景がかなり黒く、楽器の音が明瞭に浮き上がり、環境音や楽器が擦れる音も良く拾います。音に甘さがなく鮮明に描き出されるという他の高性能DAC一体型のDAPにみられる特徴も感じさせます。解像力はとても高いので高性能のBAイヤフォンだとかなり情報量が多いという印象を受けます。K3003なんかで聴いていると、ものすごく細かい録音中の環境音まで拾っています。音の立体感にも優れていてここはユニバーサル334なんかでは音楽表現に圧倒されます。
また楽器の音色がとても正確でリアルな感じです。音が消えいるまでのニュアンスも見事で、ここは小さいDAPとは思えないですね。音の制動がすごくタイトでビシッ、バシッとドラムやベースのインパクトが決まります。帯域特性はかなりフラットで低域も強調感はありません。

- イヤフォン・ヘッドフォンとの組み合わせで言うと
さきに書いたようにK3003とかユニバーサル334がとてもよく合うというか、この二者の違いも鮮明に描き出します。K3003だとやや小ぶりな音再現だけど細部をよく拾い音場の見通しが良くクリアで、室内楽的なミクロレベルの細かさとダイナミックさがあります。ユニバーサル334だとイヤフォンながらスケール感も豊かにマクロ的な音楽の構成を精密に描き出すという感じでしょうか。立体感も堪能でき、リアルに音楽を聴いているという実感がわくことでしょう。
背景が黒いので高感度カスタムにも合います。滑らかさも生きてきて、適度な低域の量感もありJH16+TWagがいい感じです。
Edition8で聴いてもEdition8の性能に聴きおとりしないですね。むしろReference Recordings HRXのブリテンの青少年のための管弦楽入門(192/24)なんかはやはりEdition8で聴くとオーケストラの迫力が堪能できます。ただしHRXのデータのWAVそのままだと再生できないので、いったんWAV-WAVの空変換を実施しました。これはWAVによってはタグの有効化のためにややフォーマットを変更しているケースがあるためということです。

- 他のDAPとの比較で言うと
おおまかにレベル的に言うとHM601とかCK4ではなく、HM801とかC4、HP-P1と比肩できるようなものです。
CK4と比べるとCK4は音の芯が甘い感があり、立体感がなく平面的で、全体に密度感が希薄な感じです。TeraはCK4に比べると音の微妙なニュアンスを滑らかで諧調豊かに伝える感じです。
HM801ではTeraとHM801(IEM用カード)を持ち出して適当に変えながら一日聴き比べましたが、一つの音の正確さ、贅肉がなく引き締まった感じ、切れ味ではむしろTeraが上かもしれません。TeraはHM801よりも高いほうですっきり伸びる感じもあります。ドラムのバシっとしたインパクトの制動や切れ味はTeraはかなり優れていて、TeraのDAC部分は極めて優秀ですね。ただ全体的な躍動感や立体感・豊かさなど音楽表現ではやはりHM801が一枚上手に思います。アナログ部はどうしても物量の差は出るのでこのサイズでもアンプ部分の制約として効いているのかもしれません。ただTeraとHM801を並べて比べないでTeraだけ聴いているとこの辺の違いは劣っているという風には感じず、個性の違いと感じるくらいかもしれません。
DAC一体型のDAPとして考えると、DAC部分はややTeraが上でアンプ部分はHM801が上ということでしょうか。素のDACチップ性能的にはHM801のPCM1704が上であるはずですが、やはりDACチップの性能を引き出すCharlesさんの職人芸が効いているというところなのでしょう。
Dirigent USBケーブルで補強したHP-P1だとHP-P1が空間の広がりで優位、とくにユニバーサル334との組み合わせではそう思います。一方で音のシャープさではTeraが同等以上かもしれません。ただ両者についてはどちらかというとアンプ自体の個性の差・好みの差になるでしょう。しょうゆ系(HP-P1)、ウスターソース(Tera)、中農ソース(HM801)という感じでしょうか。関西の人、分かりにくくてすいません。
Colorfly C4だと音の輪郭の明確さ・音が引き締まっていて贅肉のない点、ぴしっとした音の制動感はかなり近い感じです。ややC4がシャープでクリアにも思えますが、Teraの方が自然な音鳴りのようにも思えます。またEdition8なんかで聞いた時の細かい音のニュアンスはややC4が上かもしれません。一方で音の立体感ではTeraの方がやや上に思います。これらはどちらかというと性能というより個性の差のようにも思えます。

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音質のレベルについて価格を考えると期待したところではありますが、サイズを考えると上記の高性能DAPとEdition8を使ってガチで比較してしまえるというのがすごいところではあります。
HM801、HP-P1、C4のよいところをそれぞれ9掛くらいで持っていると言っておきましょうか、ただ9掛けしたのはもしかするとこのサイズで同じはずがないという思い込みのなせることかもしれません。


* まとめ

上に書いたように音質の絶対的なレベルも高いですが、Teraの個性もあるので小さいからこれを選ぶんではなく音の好みでこれを選ぶって言うのもあるかもしれません。そのくらい音は良いです。ただしあの曲が聴きたいという時にぱっと選曲できないもどかしさはありますので念のため。
どちらかというとHM801とかC4、HP-P1を持ってる人がセカンドとして、音に妥協したくないけど気軽にランダム再生主体で聴くので小さいなら操作性は目をつぶっていいと言う人に向いてると言えます。そのクラスを持ってるひとならTeraの良さもわかるでしょう。

カメラの世界には一眼レフを使いこなす人が画質に妥協したくないけど小さいのを持ちたいという時に使うサブカメラというジャンルがあります。一般に高級コンパクトカメラといわれたリコー GR1、ミノルタ TC1とかコンタックス T2などですね。いまだとシグマ DP2があげられるかもしれません。これらは使い方によってはへたすると一眼レフを上回るような画質を持っています。そういう意味ではTeraも高級コンパクトDAP、サブDAPというジャンルというとピンと来そうです(私だけ?)

今年はDAC一体型の高性能DAPがまたちょっと焦点になるかもしれません。
posted by ささき at 23:44 | TrackBack(0) | __→ ハイエンドDAP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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