そろそろ秋のハイエンドショウがはじまります。輸入代理店が主体のインターナショナルオーディオショウに比べて、ハイエンドショウはガレージメーカーとか小規模なオーディオメーカーが多数出品します。こうしたところはとにかくオーディオ好きな人がやはり好きな人のためにユニークでマニアックな製品を作るわけです。(ちなみにオーディオの世界ではオーディオマニアではなくオーディオファイルといいます)
そしてアメリカにもこうしたガレージメーカーはたくさんあります。またネット上にもAudio Circleという活発なガレージ系メーカーのフォーラムがあります。たとえばいま話題のものはオープンバッフル(従来的な箱の無い)タイプのスピーカーなんかの討論テーマがあります。
その中で最近もうひとつ話題のユニークな製品があります。それがSignature30です。
こちらに製品ページがあります。
http://www.redwineaudio.com/Signature_30.html
Signature 30はiModで知られるRed Wine Audio(Vinnieさんのところ)が開発した5月頃に発表されたばかりのパワーアンプです。
特徴はパワーアンプなのになんとバッテリー動力でしかも片チャンネル30Wもの立派な出力があるということです。さらに24時間ものバッテリーでの連続動作が可能です。
バッテリー駆動といってもポータブル用途というわけではなく、5kgくらいある立派なオーディオアンプです。30W/chもでますので能率しだいではフロア型の大きなスピーカーでも十分駆動できます。
そこでなぜバッテリーを使うかというとノイズレスのクリーンな電源として使うためです。これにより比類ないSN比が得られます。
オーディオ機器は電気で動くわけですから、最終的に電源がとても重要です。しかし一般家庭のACにはいろいろなノイズが乗っていたり電圧変動があったり必ずしもベストではありません。そこでノイズフィルターをつけたり、クリーン電源をつけたり、ケーブルを変えたり、コンセントを変えたりと大変な苦労をするわけです。
しかしACの波形を完全にしても究極ではありません。なぜかというとアンプに入ってくるACの波形が完全であっても、アンプの中の電源部のAC-DC変換プロセスのトランスやダイオードにもさまざまな問題があるからです。さらに電源によってはスイッチング電源のようにACラインを伝って他の機器に影響を与える可能性のあるものもあります。
この辺はこちらのRed Wineのページに詳しく載っています。
http://www.redwineaudio.com/SLA.html
そうした中で最良の電源はなんといってもバッテリーです。バッテリーはもっともクリーンで安定的な電源を提供できます。また直接DCで駆動できるのでAC-DCプロセスが不要です。これでそもそも電源ケーブルもコンディショナーもいらなくなり、日本もアメリカも関西も関東も夜でも昼でも等しく安定的にノイズフリーでクリーンな動作が期待できます。
問題はパワーアンプに向いたバッテリーですが、Vinnieさんの回答はSLA(鉛蓄電池)を使うことです。これにより大電流が得られ、また内部抵抗も低いのでオーディオ用途には向いているそうです。(Sig30に使われいるものは実際にはセキュリティシステムによく使われているもののようです)
バッテリー駆動のプリ・アンプはJeff Rowlandのコヒーレンスなんかが有名ですが、このような高出力のパワー・アンプで用いられるのはユニークといえます。Vinnieさんは以前にClari-T(クラリティ)という同様なアンプを作成していました。こちらは6Wという小出力ですがユーザー評価が大変高いのでその大型版としてSig30が企画されたようです。しかしClari-Tよりはいろいろな面でずいぶんと進化を遂げているようです。
アンプの心臓部としてはデジタルのトライパス・モジュールを使用しています。つまりバッテリー駆動の(Dクラス)デジタルアンプというわけです。内部はほとんどバッテリーのスペースで占められています。バッテリーはデュアルモノのように左右がセパレートされています。またこの使用されているPaper-in-oil capacitorもなかなかの隠し味のようです。
Sig30は基本的にはパワーアンプですが、DACTのステップアッテネーターがついていてインテグレーテッドアンプとしてそのままCDPにつないで使えます。レビューを見るとプリアンプをつけてもそう大きくは違わないということで、はじめからこうしたプリ無しのパッシブな使い方を想定していると思います。またソースセレクタもありません(外付けでソースセレクタがあります)。
このできるだけダイレクトでシンプルにするために信号経路を省くという考えは日本のガレージメーカーで言うと47研究所のアンプを思い出しますが、Vinnieさんも音のダイレクト感、鮮度感と言うものに非常にこだわっているわけです。iModも基本的な考えはそうですね。
他のRed Wine Audioの製品も(iModを含めて)バッテリーを使用しているというのがRed Wine Audioの特徴でもあります。ちなみにRed WineとはVinnieさんの名前のVinnie Rossiをヴィノ・ロッソ(赤ワイン)にひっかけています。
Sig30は6moonsで評価されたのがブレークのひとつのきっかけでした。ここの主筆のSrajanさんはいままでに聴いたソリッドステートのアンプでは3本の指に入る、と高評価です。
実はSig30はAudio CircleだけでなくHeadFiでも話題になっています。
なぜかというと上の6moonsのレビューの中でいままででAKG K1000に一番相性がよいアンプというコメントがあったためです。ダイナミック型・静電型の次の第3のテーマとしてのK1000という点でも要チェックです。
これは現在のところとても人気があって、実は8月の頭に注文したのですがようやく出荷の知らせがきました。出荷の知らせをきちんと行って、さらにPDFのInvoiceを添付ファイルとしてきちんとつけるのもまじめなVinnieさんらしいところです。
というわけで届きましたらまたいろいろとコメントしてみたいと思います。
Music TO GO!
2006年10月04日
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ためごろうさんにお世話になっているとんかつ
と申します。
これはいいですね!
SLAバッテリーにも保証が・・ほしい・・
5年保証付くわけないですね。
このデザインずいぶん前に何処かで・・・・
見たような感じが・・・
シンプルでとてもイイ感じです。
バッテリーは残念ながら消耗品と考えてユーザーが数年毎に交換が必要とのことです。ただしバッテリー自体は低価格でかなり普遍的なタイプなので長期間なくなることはないだろうということです。
デザインは知り合いのプロのデザイナーに頼んだそうで実物の質感はなかなかいいそうですよ!
シンプル伊豆ベスト・・・自分の最近のテーマでもあります。その分大変なんでしょうけれど、発想してそれを形にする技術と努力は凄いですね。
そのような製品を見つけてどんどん購入されるささきさんも凄過ぎですが。(^^;
70年代後半に、Technicsからバッテリー駆動のセパレートアンプが出て、結構評判が良かったのを覚えていますが、後継機は出て来なかったですね。オーディオブームが過ぎて、アンプも作らなくなってしまったし…。玉石混淆ながら、あの頃の日本のオーディオは面白かったですね。
何がいいのかは分からないので、使ったコトはありませんが・・・(^^;。
しかし、バッテリー駆動のパワーアンプとはすごいですね。デジタルアンプを設計できる方でないと作れませんね・・・。
これはオフ会で聴けるのでしょうか(笑。
なかなか興味津々と言う感じですね!
Paper-in-oil capacitorはアンプの音が温かみを帯びていい感じになるということです。
まあこれなら北海道の原野でオフをやっても電源には困らないと思います(笑)