バッハの無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータというとバイオリン独奏曲としてはもっとも有名なもののひとつです。全曲だとかなり長いのでシャコンヌなんかはよく単独で取り上げられます。わたしはクレーメルが好きなこともあって、バイオリンのリファレンスとしてテストなどで使う曲は新録音のクレーメルのソナタとパルティータ(下Amazonリンクの一番右)を使ってました。もちろん言うまでもなくすでにたくさんの名録音がありますが、もう一枚それに加えても良いかもしれません。
本アルバムはフランスのアマンディーヌ・ベイエールという古楽演奏者のアルバムで、バロックバイオリンを使用しています。バイオリン自体はビンテージではなく現代製作のバロックバイオリンのようです。
これ、試聴機で聴いた時点ではっとするくらい透明でかつ鮮やかという音色の美しさに魅了されました。聴いていてちょっとした快感ですね。無心に音の響きだけに身を任せられ、音楽を聴くのがむずかしいことではなく、単に音に身をゆだねるのが気持ちが良いことだと気付かせてくれます。演奏もわりと現代的な解釈だと思いますが退屈ではないですし、音楽堂での録音も古楽器らしい響きの良さを生かした素晴らしいものです。演奏・楽器の音色・録音と三拍子そろった素晴らしいアルバムだと思います。加えてジャケットのデザインも良いですね。
またこのアルバムがちょっと変わっているのはバッハの無伴奏バイオリン全曲集だというのに最後にヨハン・ゲオルク・ピゼンデルというバッハ同時代の演奏家・作曲家の曲も含まれているところです。この演奏をしているベイエールという人が古楽の教授のようでピゼンデルとバッハのバイオリン作曲対比というのがこのアルバムのひとつのテーマになっているようです。マーキュリー輸入の国内版の日本語ライナーはバッハのソナタとパルティータについての音楽学校の論文とかアナリーゼみたいな濃い解説がたっぷりと書かれています(その割にはこのアルバムについてはあまり書かれていませんが)。そういう意味では音楽の難解で深いところにも触れていけるのでしょう。
音楽の原初的な楽しさに深い解釈が加わった、なかなかの好アルバムだと思います。試聴は下中のAmazon MP3のリンクで可能です。CDは左リンクです。また国内版がほしい方はこちらのタワレコなどでどうぞ。
Music TO GO!
2012年01月08日
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