GS-Xでダイナミック型の可能性について考えていると、ちょっと気分を転換して静電型にも本格的に手を出してみようとおもいました。
静電型はゼンハイザーのHE60/HEV70(通称baby orpheus)を入手したり、静電型とダイナミックのハイブリッドのAKG K340を入手したりと変わったところに手をつけてきましたが、本格的に手を出すならば自然とSTAXに興味がわきます。
そうこう考えているとタイミングよくわりと安く入手できましたので、定番SR-007(OmegaII)と新型ドライバーのSRM-007tAをセットで入手しました。
(静電型はSTAXだけではないので、うちでは静電型ヘッドホン、静電型アンプとも適宜使い分けして呼びます)
いままでSTAXに手を出さなかった理由の一つは静電アンプについての迷いがあったというのがありました。
STAXの純正は性能は良いかもしれませんが、アンプの音が自分の好みとはやや離れているところが気になっていました。そこでオメガIIだけ買っておいて、静電アンプは個性的な海外アンプを組み合わせようと思っていたのです。
最終的にはSTAXの純正を入手したのですが、そこでまずドライバーの007tAの方から記事として書いてみたいと思います。
STAXの純正の静電型アンプ(ドライバー)で考えると、選択としてはSRM-006tAと007tAの二つに絞られます。
理由としては真空管が静電型に合うのではないかという読みもありますが、もうひとつの問題として単純に717とか旧型の007tはバランス接続が3番ホットなのでIKEMIにはあわないのです。静電アンプもバランスで使いたいと思っていましたので、候補は2番ホット(ヨーロッパタイプというかいまの主流)に改良された006tAと007tAに自然に絞られます。
はじめは海外アンプを追加することが念頭にあったので、とりあえずはコストを勘案して中堅の006tAにしておこうと思いました。
しかし007tAと006tAを聴きくらべてみると、思ったよりも自分としては差を感じました。007tAは006tAをパラシングルにしたものということで基本的な音は006tAの延長上にあるかもしれませんが、omega2と組み合わせた場合に駆動力の余裕というか表現的な彫りの深さを感じます。
こうして買うつもりでまじめに試聴してみると007tAもアンプとしてなかなかよく出来ていると思うようになりました。基本的なところも良いですが、なにより純正のアンプとしてSTAXの長所を引き出すように作られているという気がします。そこで結局007tAの選択となりました。
STAXのアンプはちょっと味気ないように感じるところがいまひとつではあったのですが、IKEMIとつなげればスコットランドの魔法のスパイスをかけてくれるのではないかとも思ったわけです。
箱には"A"の文字がシールで張ってあるので前の箱を流用したというのがわかります。(ちなみに国外モデルは007tAではなく007tIIです)
設置するとわりと奥に大きく感じますが、大きさを比較してみるとHEV70(Baby-oの専用静電アンプ)がかなりコンパクトさ重視で作られていたということがわかります。新型で改善されたフロントパネルは実際に置いてみるとかなり高級感があります。
使用真空管は6FQ7ですが中を見てみるとGE製のようです。前作の007tのときはいろいろと真空管メーカーが変わっていて、なかには評判の良くないのもあったようですがGEだと安心感はありますね。
真空管らしく動作中はかなり発熱してボリュームノブまで少し暖かくなります。
007tAは静電型では自然な構成であるフルバランスで設計されています。
IKEMIとの接続はバランスがAQ Diamond3、アンバランスがAQ AnacondaというGS-Xと同じパターンで試しましたが、予想通りバランス(XLR)とアンバランス(RCA)ではバランスの方がずっとよい音質が得られます。
アンバランスでは細みで薄くややボリュームレベルが下がります。バランスでは音場の広がりというより、音自体が豊かに厚みを増します。また静電型の軽いという印象もあまりなくなり適度な密度感を持ちます。アンバランスに戻すと解像感やセパレーションなど基本的な性能もやや下がるような気がします。ちょうどGS-Xのシングルエンドとバランス駆動の音に近い感じがします。
IKEMIのXLR出力はフルバランスではないと思いますが、それでもかなり差を感じます。フルバランスのDACがあればおそらくさらにマッチするかもしれません。
つぎに電源ケーブルですが、手持ちのキャメロットPM600とハイエンドホースAC3.5で試してみるとキャメロットの方がクリアさでやや上回りますが、ハイエンドホースの方がより鮮度感や躍動感が出てSTAXのアンプの不満点を補える感じがしました。そこでAC3.5を使うことにしました。
これでIKEMIとの組み合わせで自分の環境ではまずまず思うような音になったと思います。
音に関してはオメガII編でより詳しく書きますが、買った当初から比べるとだんだんと安定してきましたので傾向はつかめるようになりました。数百時間もエージングに待っているとうちのブログがなくなってしまうかもしれませんから(笑)この辺でコメントしておきます。
あまりつよく真空管のイメージを強調する方ではありませんが、やはりしなやかでシルキーな滑らかさがあるのはシングルの真空管を感じます。音のエッジがシャープというよりはなめらかにトレースされていてヴォーカルに微妙な艶を与えています。音楽の表情にも少しウォームな質感が感じられます。低域もIKEMIとの組み合わせでIKEMIの持つタイトで締まった音を低域でも再現しているのは十分なドライブ力があるといえます。
またSTAXの純正だけあって、細かい音の再現もかなり高いものがあります。音数は多いのですがさきの滑らかさとあいまってささくれた感じはしません。森の木々に風があたっていっせいにざわめくような心地よいさわがしさがあります。
静電型の特徴とあいまって細部の表現とかニュアンスを浮き彫りにしてなかなか表情豊かなアンプだと思います。
難点としては電源を切るとセレクタが1番にリセットされるのがバランス接続(3番)で使っていると煩わしいと感じます。
これならば旧型のような切り替えスイッチの方が機械的にロックされて良いと思いますが、スタートアップ時にいわばミュートのポジションになるのは真空管にとってはいいことかもしれません。
海外アンプも興味をひきますが、またそちらは項を改めて。。
次はSR-007(オメガII)について書いてみます。
Music TO GO!
2006年09月26日
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既に凄い音になっていると予想していますが、
更なる発展がありそうですね・・・(^^;
たしかに007tAとSR-007だけでもなかなかすごいものがありますが、ここが到達点というよりはここが出発点というように発展を考えたいものですね。