MonoAndStereoという海外のオーディオサイトにマークレビンソン氏のインタビューが掲載されています。
彼の音楽体験やフィロソフィーも含めて長いインタビューなんですが、なかでも過去のプロダクトのことを赤裸々に語ってるところが面白いのでちょっと紹介します。また現在やっているDaniel Herzブランドについても取り上げてみます。
マークレビンソンという名前(ブランド名)が彼の手から離れたことについては、そのとき自分は若くビジネスマンとしては経験不足なただの音楽家だった、詐欺師(sharks)が彼から盗み取って株を奪うために計画倒産(Planned bankruptcy)させたと強い口調で非難しています。彼自身はなにも対価を受け取っていないと言うことです。1980年以降は彼の名前のついた製品には彼自身まったくタッチできていないとのこと。
チェロについてはその製品はオーディオの高みに達し、一般ユーザーだけではなくマスタリングラボにも使われたと言うことで満足しているようです。マークレビンソン氏は音楽業界にいた人なので、録音側と再生側の両方が重要だと言うことを語り、一般ユーザーのほかに製作側でも使われるオーディオシステムがひとつの理想となっているようです。チェロをAudio Paletteで始めた時は専門家に失敗すると言われたけど結局1000台も売ったよと満足げです。読んでると彼自身はチェロが一番気に入っていたように思えます。
しかしここでもチェロのカスタマーだった人物にチェロを乗っ取られて追い出されてしまいました。その後チェロは倒産してしまいます。
Red Rose Musicについては手ごろな価格で多くの人に製品提供をすることを目標に立ち上げたが、内部の経理担当者の詐欺行為にあって会社を崩壊させられた、証拠を残さないようにパソコンまで壊されたと言うことです。
その後なんとかしようとしたけど経済の悪化や9.11など(Red Rose MusicはNYの会社)で結局アメリカを離れて、いまヨーロッパにいるということです。
理想のシステムを目指してメーカーを立ち上げて人に取られてしまうの繰り返しでなんともかわいそうな人でもありますね。「人は誰かが素晴らしいものを作り上げるとそれを取り上げて壊してしまいたくなるらしい」と語ってます。
いまは自分の過去は見ないでやはりDaniel Herzを見て欲しいということです。こちらがホームページです。Daniel Herzはスイスの会社です。
http://www.danielhertz.com/
Daniel Herzはアンプ・スピーカー・ケーブルを手がける総合オーディオメーカーで2009年創業です。彼いわく彼の総決算としての妥協のないブランドということ。パワーアンプのTelikosというのはギリシャ語で究極とか最後のという意味だそうです。
Daniel Herzは高能率スピーカー(100dB/1W)の利点を生かしたシステムとしてのアプローチをして自然な音を目指しているとのこと。低能率のシステムは信号が熱になりその分は消えてしまうから、ということです。またRed Rose Musicで真空管を手がけたことはあやまりだったと後悔しているとのことでDaniel Herzでは半導体アンプでやっているようです。
あまり日本では馴染みないメーカーですが、ロシアのメドベージェフ大統領がDaniel Herzのシステムを持っているとのこと。Daniel Herzというのは彼の両親の名前と苗字から取っていると言うことです。
ちなみに価格は2009年の発表当時でフラッグシップのM1スピーカーがペアで$75000、M7スピーカーが$17000、M5モノアンプが一台$6000、M6 1MegOhmsプリが$8000ということです。システムでアプローチしているというのはM1スピーカーは内部にクロスオーバーがなく、M5パワーアンプにアクティブクロスオーバーが内蔵されているので組で使うように設計されているようです。ただし面白いことにM1スピーカーの背面にはアクセスパネルがあって、そこに通常のパッシブクロスオーバーも取り付けられるようです。
M6プリは1MegOhmsという名前でチェロを思わせます。M6はUSB DAC内蔵でスペック不明ですが2009年製ですからそれなりでしょう。こういうハイエンド機にDAC内蔵させるとアンプは数年では古びないのにDACは進歩が早いので型落ちしていくという問題はあるかもしれません。
いまラインナップに単体DACはないですが、デジタルオーディオも手がけるので見ててほしいと言っているのでそのうち出てくるのかもしれません。当初アナウンスにはM9 Media server(SSD搭載のPCベース)というラインナップもあったようですが、いまカタログにないようです。CDPというのは用意しないでM9(PC)からUSBで伝送するという上流のシステムのようですね。今風のシステムと言えるでしょう。
半導体も素子自体なにか新しいタイプを開発しているようで、マークレビンソン氏も単に伝説の人物というだけでなくけっこう今現在も新しい試みを取り入れながらアクティブにやってる現役の人と言えるでしょうね。
マークレビンソン氏は小さい頃にキースジャレットと同じ音楽学校に通ってお互いのバンドで演奏したりしてたそうです。その他彼の音楽経験など興味ある方はこちらの原文リンクをどうぞ。
http://www.monoandstereo.com/2011/12/interview-with-mark-levinson-daniel.html?m=1
Music TO GO!
2011年12月03日
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