KSC35/CARDASを加えましたので、手持ちのポータブル機材を組み替えながらベストな組み合わせなどをいろいろ試行していました。そこで引っ張ったままでひさしく仕舞っていた(忘れていた)XinのSuperMacroIV(以下SM4)とSR-71のいわば頂上対決にも少し触れてみたいと思います。
最近Xinを使う機会が多かったのでSR-71を取り出してみるといろいろと考えることもあります。そこでSM4とSR-71では単にA/B比較で白黒つけるというよりも、この機会に「SR-71再考」という視点で書いたほうがふさわしいと思うようになりました。SM4と比較することでかえって設計者のサミュエルズさんがSR-71にこめたものがよく見えるような気がしたのです。
あらためてSR-71をSM4と比較するとまずハードとしての作りの優秀さが際立ちます。
SR-71は一年以上経ちますがいまだなんの不具合もありません。まさにもと軍事関係の開発をしていたサミュエルズさんらしく"Build like a tank"という感じです(彼は飛行機関係ですが)。
SM4は数ヶ月ですがヘッドホン端子に太い端子をつけたときの安定がやや心もとなく、ビスには錆も浮き出てきました。ぱっと見はそんなに大きい差はないように思えますが、このような細かい仕上げについてかなり差はあります。
SM4はオペアンプやバッファの仕様のバリエーションが豊富でそれによって大きく音が変わりますが、SR-71にはオプションはありません。Xinはバージョンアップを重ねていますが、SR-71はそうした大きな変更はありません。また音を変更するインピーダンス切り替えやベースブーストなどXinにある豊富な機能はSR-71にはありません。ただひとつの音がSR-71です。まさに「この音を聴け」というサミュエルズさんの主張が聞こえるようです。
ちなみにSR-71のオペアンプは公開されていませんがおそらくAD8610であろうと言われています。対してわたしのSM4はMaxed outということでOPA627+スタックバッファ(BUF634x2)Hi-Cモードというフル装備になっています。
Xinの言によればバッファのHi-Cモードの効果が現れるのは低歪み性能においてということです。それだけ音が正確なかたちで出るということでしょう。
実際にスタックバッファ+Hi-Cの効果は顕著で音の純度とかタイトさ、切れの良いシャープさ、楽器のきっちりとした分離感、SNなどにあらわされるクリアな感じはSM4の方が上です。ベースのピチカートなどはSR-71はやや丸みを帯びるのに対してSM4の方がくっきりとタイトで切れ味良く感じます。音の広がりも4チャンネルの威力か、3次元的な独特の広がり方は新世代を感じさせます。
しかしオーディオアンプとしての温かい味のある感覚や、高域の美しさによる味付けなど、ウェットで有機的な魅力はSR-71の方により大きく感じます。これはアンプが温まってくると顕著で、特にヴォーカルのウォームな表現でSR-71はかなり音楽的な鳴りを感じます。音の広がりはデュアルモノの効果で自然に左右に広さを感じます。
KSC35/CARDASはHD25/BDv2に比べると低域の押しが強すぎることもなくバランスよく聴くことができます。このKSC35/CARDASとSR-71と組み合わせると特にヴォーカルに暖かさ・滑らかさ・独特の質感を感じてとても印象的です。この組み合わせでジャズヴォーカルものを聴くとぞくっとする不思議な音楽的魅力を感じます。
HiFi、つまり高再現性という意味ではSM4に軍配が上がり、音楽性という意味ではSR-71の方により魅力を感じます。これはSM4が音楽性に劣る分析的な音というわけではありません。XinはXinなりに前にでるアグレッシブな音で聴かせてくれます。
ただSR-71の方がいぶし銀のこなれた魅力を持っています。気合を入れて超絶技巧テクニックを披露する若いSM4にくらべて、聞かせどころを心得た熟練ミュージシャンという感じです。
ここに書いたのは比較的という意味であって、もちろん他のアンプに比べればSR-71は性能という面でもぬきんでたものがあるでしょう。しかしSR-71はそれだけ取り上げると性能面が表に出てきますが、こうしてSM4-Maxedoutという強力な比較対象であるライバルが出てくると内なるSR-71の真の姿である音楽性の高いアンプという点が光ってくると思います。
SM4-Maxedoutではポータブルとは思えない豪華絢爛たる音空間にただ圧倒されますが、SR-71ではより音楽そのものに没入させる力があります。その力をオーディオというのではないか、とふと思いました。
アンプというのはオーディオ機器で一番設計にセンスが出るものだそうです。とくに海外のオーディオはつくった人の感性がそのまま反映されます。わたしがオーディオでLINNが好きなのも総帥たるアイバー・ティーフェンブルンの感性というか主張に共感するところが大きいと思います。
わたしはXinとサミュエルズさんのどちらが設計が上手かということについてはまったく判断できません、しかしこの二つのアンプを聴いていると二人の音楽経験や考え方まで見えてくるような気がします。
音楽を生かすためにはオーディオは無個性であるべきと考える人もいるかもしれません。しかしこうした音の個性を楽しむということはオーディオの大きな魅力の一つではあると思います。
ポータブルオーディオという世界においても、単に性能を競うというよりもこうして作り手の個性と音楽性が評価できるようになってきたことは喜ばしいことです。
Music TO GO!
2006年09月15日
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オーディオの場合、そこに行き着くまでの出費が何かと大変かと・・・( ̄  ̄;)
まあ個性云々はいろいろ買うための言い訳という話もありますが(笑)、作り手だけでなく聴くほうも人それぞれいろいろな感じ方がありますので、こうして選択肢が増えてくると人それぞれにちょうど良い機材と言うのが見つかりやすくなりますね。
SM4は入手して1週間ですが、性能的には抜群ですね。でも、もっとを求めて、OPA rollingを行いたくなってしまいます。実際にOPA627からOPA2134に変更してしまいましたf(^ー^;。次にXin Magicで何が出てくるのか?pure audioの楽しみと、器械をさわる喜びの両方を味わうことが出来ます。
Hornetはoriginalからmodifiedに変更しましたが、ともに非常に魅力的です。文字通りFun to Musicのためのaudioですね。聞いていると落ち着いてくるんです。入力音源の質が良いと驚くほどの音を出してくれます。
あえてポータブルの枠にとらわれる必要はないのではないでしょうか。
国内のポータブル機器で好みの音質を見つけるのは大変ですorz。自分でアンプを作った方が早い現状って一体・・・(苦笑。
SM4のゲットおめでとうございます。たしかにSR-71やHornetクラスのアンプだと家で使っても十分なので標準プラグでも使えるようなオプションがあるといいですね。
まあ次はハルさんが日本のサミュエルズさんになるようがんばってください!
お金以外なら暖かく支援いたします(笑)