前の記事でGS-XはKevin Gilmore氏の公開されているデザインをもとに設計されていると書きました。
ここでは自作アンプとして見たGS-Xについて書いてみます。本来はわたしが自作系はわからないので省こうと思ったのですが、今書いている音質編でも関係しますし、製作に興味がある人もいるようですのでわたしの分かる範囲でもう少し詳しく解説します。
Gilmore氏は自分で設計したアンプの基本デザインをHeadwize.comに公開しています。Headwizeはcmoyアンプで有名なChu Moy氏の主催する自作系の人を中心としたヘッドホンフォーラムで、ここのProjectコラムにはGilmore氏以外のアンプ設計もたくさん公開されています。
またGilmore氏の作成したアンプもいくつか公開されています。たとえばGilmore氏が設計した静電型のアンプはKGSS(またはBlue Hawaii)だけではありません。このフォーラムに載っているトライオードタイプの全段真空管式の静電型アンプは最近WooAudioによって製品化されました。静電型については別の機会に書く予定です。
これらのデザインは一般に公開されたものであり、条件付(氏が認める高品質であること)で商用に使うことが出来ます。Gilmore氏自身は商用には作成しません。
HeadampのJustinさんが元にしているのは下記の"A Pure Class A Dynamic Headphone Amplifier"ですが、いまではこれは通称Dynaloと呼ばれます。現在公開されているGilmor氏のデザインは大きく4つあって、それぞれDynalo、Dynamid、Dynahi、Dynamiteと呼ばれます。
DynaloはHeadampのGilmore-liteとGS-1のデザインになっています。
Dyna-loは設計が一番早かったのでDynamic型のLowエンドという意味でもありますが、もう一つ意味があってDynamic型でLowインピーダンスに強いというものです。これはもともとGilmore氏が低インピーダンスの彼のGRADOのために設計したとも言われています。
低インピーダンスは鳴らしやすいと一般に思われがちですが、それは音量が取れやすいということであって鳴らしきるというのとは少し違います。スピーカーを知っている人ならば8Ωより4Ωのスピーカーの方が手ごわいという認識を持っている人が多いと思います。
低インピーダンスは電流が流れやすいのでうまく設計しないと安定して十分な電流を供給できません。特に周波数によってインピーダンスは変化するので低域で影響が大きく出ます。そのためGRADOの低域再現のためにはLowインピーダンス性能を高める必要があるというわけです。Dyanaloがいわばパッケージ化されたオペアンプを使わないでディスクリートにしているのはこのためだと言われています。
DynamidはDynaloをブリッジ対応(バランス駆動対応)にしたものでGS-XはこのDynamidです。
Dynahiは高インピーダンスや低能率のものなどに対応したものでK1000も視野にあると言われます。
このためDynaloはあまり発熱しませんが、Dynahiはかなり発熱するそうなので自作する人は熱対策が必要でしょう。
DynamiteはDynahiをブリッジ対応(バランス駆動対応)にしたものです。
こう見るとDynamiteが一番すごそうですが、これを商用にしたものはSFTオーディオのものだけであまり評判はよくないように思えます。やはり基本設計だけでなく、アンプとしての作りこみが大事なのでJustinさんのように実績と評判のある人が作成したものが結果的には安心できます。またDynaloデザインもDyanhiとは眼目が違うということであって、Lowインピーダンス向けというわけではなく全てのインピーダンスのヘッドホンに対応できます。
ただし自作してみる人はDynamiteなど挑戦してみるのも面白いかもしれませんね。
これらについてはこちらに詳しい解説のページがあります。
Music TO GO!
2006年08月30日
この記事へのトラックバック
色々と弄っている据え置き機で、バイアスをがんがん流してA級動作なんてことをやってみましたが、トランジスタが50〜70度くらいにはなっているのではないかと思います。放熱器をつけずにこれ以上無茶をすると、昇天するかもしれませんorz。
やはり大変なんですね。ハルさんのアンプも溶けないようにがんばってください!