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2006年08月21日

バランス駆動アンプ Headamp GS-X

1. Headamp

Headamp.comはヘッドホンアンプを製作しているアメリカのガレージメーカーで、主催はJustinさんです。ここは静電用アンプのKGSSの製作でもよく知られています。静電型については以前記事に書いたように新型のAristaeus(アリスタイオス)という新型を開発しています。
他の製品としてはポータブルではAE-1、据え置きでは$300前後のエコノミーなGilmore lite、liteに専用電源DPSを加えたもの、 プリとしても使用できる上位機種のGS-1などがあります。AE-1の改良型も登場が噂されています。

特徴としてアンプ回路はディスクリートで組まれていて、回路の基本設計は主に(公開されている)Kevin Gilmore氏のデザインを使っています。それをJustinさんが実際のアンプとして設計して組上げるという形をとっているようです。
またアンプ部分はモジュールになっていてユーザーが交換できるので拡張性があります。いまは上記のいわゆる"Gilmoreモジュール"ですが、今年のあちこちのオフで新モジュールが公開されていて、つい最近の西海岸オフでもかなり完成形に近いものが公開されていますので、そろそろ登場するのかも知れません。これはJustinさん独自設計のモジュールでMOSFETを使用しているようです。
GS-Xに興味をもたれた方はこの辺を考慮にいれてもいいかも知れません。

こちらがHeadampのホームページです。
http://headamp.com/

2. GS-X

GS-Xは昨年登場した新機種でバランス駆動に対応するため、そのアンプモジュールを4つ使用しています。HeadampではGilmore Balancedというバランスタイプを以前製作していて、そのレビューはHeadFiに載っています
Gilmore Balancedに比較するとまずその洗練されたシャーシに目が行きます。アンプ部と電源部に別れたスマートなツインシャーシになっていて両モジュールは専用の電源ケーブルで接続されます。そのシャーシもメーカー製といってもよいくらいプロフェッショナルな仕上がりで洗練されて美しいものです。

blog_gsx3.jpg

通常のヘッドホンアンプと違うのは前面にバランス接続できるXLRコネクタを備えているところです。またGS-Xでは普通のタイプのヘッドホンも使えるように標準タイプのコネクタも2基備えています。
そのためにバランスタイプでないヘッドホンも使えますが、もちろんバランスの利点は享受できません。ただし強力な電源を備えたGS-1の上位機種としての高い性能を期待できます。

blog_gsx5.jpg

ボリュームはアッテネーター(4チャンネルなので4連)となっています。これは下位機種ではオプションだったのですが、フラッグシップのGS-Xでは標準です。
このほかには3段のゲイン切り替えのスイッチや入力切り替えがあります。

blog_gsx4.jpg

目を背面に移すとさまざまな入力端子が装備されています。
入力はバランスでもアンバランスでも受けられますが、試して見るとやはりバランスでの入力が良いように思えます。

GS-Xのもう一つの特徴はプリアンプとしても使える点で、背面には二組の出力端子を備えていて、それぞれバランスでもアンバランスでも接続できます。出力端子はそれぞれループアウトとプリアウトで、ループアウトは入力のスルーでプリアウトはアンプの増幅した出力をだすのでしょう。(ちなみにマニュアルはついていません)
プリアンプとしてはフルバランス構成のプリアンプになるわけです。
アンプ部には専用の電源モジュールから専用の電源ケーブルで電力が供給されます。


GS-Xの大きな特徴は電源部が別シャーシになっていることです。電源部はかなり大きなもので本体より重さがあります。
これは電源を増幅部と干渉を避けるため切り離すという従来のメリットのほかに、バランス駆動ならではの問題を解決するために巨大な電源部をつけたために分離したとも考えられます。

バランス駆動はさきに述べたようにスピーカーでのブリッジ接続に置き換えることが出来ますので、スピーカーでのブリッジ接続を例に取ります。この方式は手軽にステレオアンプを二つ流用して大きなパワーを得る半面で落とし穴がひとつあります。
それはブリッジ接続では理論的に2倍ではなく4倍の出力が取り出せる、つまり大きな電流が流れるために通常ステレオ(2ch)用に設計したアンプを流用してもステレオ用に設計した電源が4倍の出力まで持たないということです。そのために特別に設計されたアンプでなければ、ブリッジ接続をしてもリミッタをつけて2倍の出力に抑えているようなものもあります。
またブリッジ接続によってアンプの対応する負荷のインピーダンスの最低保証値が変わってあまり低いインピーダンスの負荷(スピーカー)をつけられなくなるということもあるようです。

ブリッジ接続は手軽に大出力を得られる半面で、従来のステレオの仕組みを流用しただけだとこうした電源にまつわる問題があります。
ただしはじめからこの問題を考慮していればブリッジ接続では高い駆動力を得ることが出来ます。このあたりがGS-Xが特に強力な電源部を設計した理由に思えます。


3.他のバランスタイプとGS-X

バランス駆動のタイプのヘッドホンアンプは他にもありますが、GS-Xを選んだポイントはまずGS-1という評価の高いベース機種があるので試聴なしでも手がだし易いということがあります。

次に価格の面です。$1800はまだ高価ではありますが、他のバランス駆動タイプに比べると最安値の部類です。
(発注した時点ではより安価なRudiのNX33はまだ出ていませんでした)
他にはSinglePower SDS-XLR,Moon Audio Luna,RSA B52, Rudi RP1000など真空管を使うものが多いわけですが、真空管の場合はフルバランス構成では+と-で特性の一致が半導体より大変です。そこで価格が高くなるというのもあるかもしれません。


4. 設置

箱は2つに分かれていますのでまとまって大きなダンボールで届きます。シリアルは13という縁起のいい数字ですが(笑)まだ13個しか出ていないようです。また電源ケーブルははいっていません(アンプと電源部をつなぐ専用ケーブルは入っています)。このクラスのアンプを使う人はいずれ替えるでしょうから必要ないともいえます。
ちなみにわたしはパワーアンプ用電源ケーブルでは定番のひとつ、キャメロット・テクノロジーのPM600を使いました。これは電力供給能力では定評のあるものです。

わたしはいつものようにLINN IKEMIをCDPとして使用してAudio QuestのDiamond3 XLRバランスケーブルでGS-Xとつないでいます。
Diamond3はいまうちのシステムではアンバランスでメインに使っているAudio QuestのAnacondaの一つ前の世代のAudio Questのフラッグシップケーブルです。(中古購入ですが当時の価格はGS-Xとほぼ同じくらいです)
Anacondaとは共通した傾向があって周波数バランスが整っていて繊細で抜けが非常に良くクリアであるという特徴があります。傾向が似ているのでAnacondaを使った他のヘッドホンアンプとも比較が容易だと思います。
エントリークラスともいえる根岸通信のバランスケーブルもつけてみましたが、さすがにかなり物足りなさを感じました。GS-Xはとにかくソースやケーブルなどのあらを根こそぎ洗い出すという感じですので、透明感のような聴覚上の差だけでなく歪みなど基本性能が重要と感じました。P-1だと根岸通信はまあ使えるかと許せたのですが、GS-Xだと高域がロールオフして透明感がいまひとつという欠点がありのままにでてきます。
ちなみにHeadampのサイトには書いてませんが、聞いて見たところバランスの接続は2番ホットです。

電源をいれると上下のシャーシに青いLEDが点灯して、シャーシのなかのアンプモジュールの赤いパイロットランプも点灯します。これで暗闇ではなかなかきれいです。他のA級ヘッドホンアンプくらい暖かくなりますが、SAC K1000みたいにさわれないほどではありません。
ボリュームはアッテネーターなのでステップ動作をします。


音はあとで詳しく書きますが端的に言うと、かつて感じたことのない豊かで厚みのある音と空間表現力、そして力強い躍動感です。高域は空気感を、低域再現は強いというより重みを感じます。
いまはCDを片端から聴きなおしているところです。エージング、というのではありません。ちょっと感動したのです。

posted by ささき at 01:15| Comment(8) | TrackBack(0) | __→ GS-Xとバランス駆動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
どんどん期待が膨らむ記事ですね。(^^;
高性能故に周りの環境を選んでしまうというのはある意味大変ですね。逆に言えば周りをよくすれば何処までも高みに登れると言うことで・・・。
ささきさんが感動してCDを聞き直しまくっているというだけで、その凄さが想像できそうです。(^^
Posted by rabbitmoon at 2006年08月21日 06:40
らびさん、どもども。
そうですね、特に上流の流れが汚れてるとそのまま増幅されてしまいますので上流をクリーンにするというのは重要です。
Posted by ささき at 2006年08月21日 19:39
GS-X良さげですね。なんかとってもアメリカーンな音が出そうなアンプですね。
見るからにヘッドホンのポテンシャルを引き出してくれそう。
インプレが楽しみです。
HD650以外でもedition7やL3000でどんな音が出るのか気になります。
Posted by M16 at 2006年08月22日 00:50
ハイエンドオーディオなんかはみなデザインもいいですし、オーディオでも形がよいと音もよいと言う気がしますね。
GS-Xも見た目のスマートさと音の素晴らしさが調和していて、CDだけでなくヘッドホンもとっかえひっかえ聴きたいという気にさせてくれます。
Posted by ささき at 2006年08月22日 22:29
実にハイレベルなシステムですね!
前記事のバランス駆動に関する解説もとても参考になるというか、ささきさんの先進性に激しく啓蒙されております。
どんな音がするのかインプレが楽しみです。
Posted by nina at 2006年08月23日 00:15
ninaさん、どうも!
そうですね、やはり新しい可能性が見えるものは魅力的です。
また別な先進性を感じるものもオーダーしてますので、またそれもそのうち...
Posted by ささき at 2006年08月23日 08:25
うーんやはりすばらしい。
GS-X.強烈にほしくなってきますね。
今考えると、GS1000はバランス接続型買えばよかったな〜と後悔しています。木製だとケーブル交換受け付けてくれないのかも、とおもうと。。。
もう一台。。。(^^

とりあえずHP4がプリアンプ機能ももっているんで、そちらにつなげてみようと思います。


Posted by KOZZ at 2006年09月03日 12:44
GS1000のバランスもなかなか良さそうですね。
前にリケーブルは受けてないと書きましたが、いま見直すとHeadphile(Larryさんのとこ)ではGS-1000のリケーブルを受けているそうです。
http://headphile.com/page15.html
でもHP-4でも使いたいでしょうからやはり2セット必要かも(^^
Posted by ささき at 2006年09月03日 17:56
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