ソウルノートはもとはマランツで主力製品の開発をしていた鈴木氏がみずからの音の理想を追求するために立ち上げたブランドです。そうした点で国産機の中でもユニークなメーカーで、根強いファン層を獲得しています。
もともとソウルノートは第一弾として単体DACを出したほど鈴木氏のもつDACへのこだわりというのがあったと思います。ソウルノート(魂の音)というブランド名にこめられたのは、一枚のCDを作るために演奏者が込めた想いをオーディオが損なってはいけないと言う考えがあり、DACを用意することで音楽再現の全体的な底上げができるという考えがあるということです。そのための機材として単体DACのdc1.0を発売して市場に受け入れられました。その当時(2006年)は単体DACというととてもマニアックな機材だったわけですが、現在はPCオーディオの普及に伴い単体DACが半ば当たり前となっています。そうした潮流の変化の中で満を持して発売する高性能DACがこのsd2.0です。
ホームページはこちらです。
http://www.soulnote.co.jp/lineup.html
このように期待の新製品ですが角田さんのところに試聴機が届いたと言うことでお邪魔していつもの試聴室で聴いてきました。また設計者にしてソウルノート主催の鈴木氏からも直接お話を伺う機会を得ました。
sd2.0Bの技術と特徴
電源とDAC部が分離した堂々とした高級感のあるシャーシで底面はスパイクつきです。ピアノブラックの仕上げが高級感を演出していますね。
アナログ出力はバランスXLR端子を備え、内部もバランス構成で組まれています。もちろんアンバランスRCA端子も備えています。
入力はSPDIFが3系統、光が2系統、そして192kHz対応のUSB入力が1つと充実していて、ホームAV環境のセンターとしても使えるように工夫されています。
なかでも特徴的なのはSPDIF入力1番がCD専用として設計されていることです。入力1番は44kHzまでの専用設計で、CD入力専用のFPGA(カスタムIC)とメモリでジッターを低減させた高品位の音再現を実現しています。ここが選択されているときは他の回路は切り離されて完全にCD専用のDACとなります。このときにUSB部分の電源もシャットダウンされると言うことです。
この辺がいわゆるPCオーディオ向けのUSB DACとは異なる点ですね。ソウルノートのはじまりがCDにこめられた音楽をできるだけ正しく聞き手に伝えたいと言うこだわりからきているので、その思想がここにも見られます。
他方でPCオーディオへの対応については入力6番がUSB入力となっています。ここではTenorの新型で192kHz対応のUSBコントローラーを使用しています。これはXMOSやCMediaの6631と並んで最近出てきているHigh Speed対応の新型USBコントローラです。現行の良く使われるTenor7702は88.2kHzが非対応ですが、この新型は88.2kHzと176.4kHzもサポートされているようです。
USBのモード切替があり、USB 1.0モードのときはドライバーレスでWin/Macとも96kHzまでの対応で、2.0モードのときはWin/Macともドライバーをインストールして192kHzまで対応します。1.0モードではアダプティブ、2.0モードのときはアシンクロナスとして機能します。アシンクロナスではDAC側の高精度クロックを使用できるわけです。(この新型Tenorコントローラは内蔵クロックも持っていますが、それは使っていないと言うことです)
USB入力に関してもバスパワーを取らないで内部のクリーンな電源を使うというこだわりが貫かれています。そのためiPadもUSB1.0モードのときに使用ができるそうです。iPadもバスパワー取ってるかどうかテスターとして機能するというのも面白いところですね。またUSBでの電源を使用しているときはさきのFPGA部の電源をオフにすると言うことで、こちらも手抜かりがありません。
鈴木氏はPCオーディオ流行と言ってもUSBをただつけるだけのものはやりたくないと言います。どの場面でも最善を尽くすと言う意味で、CDの入力1とUSBの入力6番は同じくらい力を入れてるということです。
内部を開けてみましたが電源部を開けてびっくり、アンプかいっという巨大なトランス(400VA)がどんと鎮座しています。単体DACで電源別は珍しいですが、小信号を扱う機器ほど電源部を分離した方が良いという思想によるものだそうです。
DAC部のほうを開けると基盤をみてもDACとは思えない密度のぎっしり詰まったパーツが満載されていて、空中配線がまるで森のように感じられます。デジタル機器というと中はスカスカしたイメージがあるかもしれませんが、sd2.0Bに関しては重厚なオーディオの伝統がデジタル機器にも生きていると感じられます。
ハイスピードのため小容量コンデンサーのパラ使いをして、アナログ段ではあえてI/V変換は抵抗でパッシブにして鮮度を高くしたということです。またバランスイン・バランスアウトの無帰還バッファを使用しています。フルディスクリートはもちろんワイヤーの空中線がわたっているのはパターンを使いたくないという音へのこだわりがあり、全体に鮮度感・ハイスピードという思想が感じられる作りになっています。
いまはパーツ供給が不安定でもありディスクリートで回路を組むと言うことはなかなかむずかしくなっているそうですが、見ただけで技術者魂が感じられる内部といえるでしょうね。
試聴
まずUSB入力でMacのAudirvanaから聞きましたが、2.0モードのハイレゾ再生では背景が黒く静かであり、音場の広さ深さも吸い込まれるように聞こえます。微細なニュアンスの抽出が素晴らしく、パーカッションの刻むリズムに倍音豊かな鳴りの弦がくっきりと浮かび上がる様は圧巻です。ひとつひとつの楽器の音再現も正確で、キャロルキッドの声の消え入り方が素晴らしく歌声に微妙なニュアンスが感じ取れます。
続いてCD入力からSHANTIの新作を聴きましたが、とても瑞々しく透明で鮮度感が高いと感じられます。バッキングのギターも美しく解像していますが、スピード感があるせいか音の立ち上がりも速く力強く生き生きとした演奏に感じられます。フルバランス・大容量電源の恩恵もあるのでしょう。
USB入力ではハイレゾの高精細感が生き、CD入力では演奏の生々しさが感じられともに魅力的です。
使用しているDACチップの1792Aは高性能DACの定番ですが、さらに発見があるようにも思えます。これはDACチップだけでは語れないアナログ部分の優秀さでしょう。聴いていて角田さんとも100万クラスの音と言ってもおかしくはないんじゃないですかとお話しをしましたが、実際高性能のフォーカルのスピーカーの能力が最大限に引き出されていると感じました。
ただ一番素晴らしいと感じたのは、これだけ高い再現力がありながら音の印象はあくまで自然であって、オーディオ機器自体の強い主張やクセが出ているわけではないと言うことです。技術を誇るのではなく、あくまで自然で音楽を大事にしている感じが伝わります。
設計の鈴木氏はとても経験ある技術者ですが、その経験が生かされた完成度の高い音だと感じました。鈴木氏は音楽畑なので演奏者がリスナーに音を届ける想いがよくわかるということです。だからこそ、演奏者の一音にこめた想いをオーディオがそのまま届けたいと言います。たしかに音楽ファンが聞くためのオーディオという感じがしますね。
単純に流行のUSB DACがまた出てきましたと言うのとは違います。CD再生も含めたDACらしいDACがSoulnoteと言うか鈴木氏らしいこだわりなんでしょう。
Soulnote sd2.0Bは来週はじめ(9/12)から出荷開始で35万7000円(税込)ということです。
ぜひ試聴機のあるショップでこのこだわりの音を聴いてみてください。
Music TO GO!
2011年09月08日
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