Music TO GO!

2011年08月16日

ACS T1 - ソフトシェルのカスタムIEM

数年前はカスタムイヤフォンというとポータブルアンプと並んでかなりマニアックな製品でしたが、最近はどちらもずいぶんと市民権を得てきたように思います。とくにカスタムが取り上げられる機会が多いのには驚きます。そうならばより様々な製品が出てきても良いでしょう。

多くのカスタムイヤフォンはアクリルのハードシェルによって耳の形にシェルを成形します。ところが最近Jabenで取り扱いを始めたイギリスACSのTシリーズはソフトタイプで、医療グレードのシリコンを使用しています。
http://www.acscustom.com/uk/index.php?option=com_content&view=article&id=30&Itemid=45
耳道は顎の動きによっても変形するので、ソフトタイプのシリコンはハードタイプのシェルに比べるとそうしたズレを吸収してよりピッタリとしたシーリングを提供するというわけです。
今回紹介するのはACS T1というトリプルドライバーの上級モデルです。

acs3.jpg

カスタムイヤフォンらしくこうしたケースと付属品がついてきます。
手入れ用のジェルがついてるのが珍しいですね。

acs1.jpg acs2.jpg

カスタムというとカラーリングも楽しみの一つですが、ACSでもさまざまなオプションがあります。
今回はマーブル模様で右がレッドとイエロー、左がターコイズとイエロー。表面にはACSのロゴをいれてくれとオーダーしましたが、その通りの仕上がりです。
以前の低価格カスタムのようなバタバタはなく、思った通りのものが来ました。Jabenを通していますけれども、品質は安定しているようです。FreQとかLive Wiresなどはなかなかひどい目にあったので大手・国産以外のカスタムには不信感があったんですけど、ACSはそういう問題もなさそうです。

*シリコンによるソフトシェル

さて注目のソフトシェルですが、ゴムラバーのような柔らかいシェルでいままでにない不思議な触感があります。装着もハードシェルよりも耳全体にゆっくりはめ込んで行く感覚でいれて行きます。慣れが必要ですが私の場合は上側から始めて耳穴にはめ込んでいくとうまく装着できました。もちろんカスタムですからここは人によって違うでしょう。
装着すると耳に吸盤で密着するようなフィット感があります。吸い付くような感じで隙間がピッタリなくなる感じですね。実際外すときにはピッタリはまって外せないかと焦ったくらいです。アクリル製の普通のタイプはうまく耳型ができてないと隙間感や痛さがあるけど、これはそうした多少の遊びを柔らかさで吸収してくれる感じですね。かなりぴったりとした装着感を得られます。

耳に巻くメモリーワイヤーはないのですが、ケーブルが柔らかいので無理なく耳に巻けます。残念なことにケーブルは交換は出来ません。

*音質

T1は音質もかなり上質です。とても滑らかで適度なウォーム感があります。音楽的に聴いて楽しいタイプですね。高能率なのでアンプはLOWゲインをお勧めします。
それでいて高域は繊細でバランスド・アーマチュアらしい細やかさと切れの良さがあります。音色も良く、ギターの音色もリアルでピアノの響きも美しく再生します。低域もパンチがあって適度なタイトさと十分な量感があり、弾むベースが心地よく響きます。帯域バランスも過度な強調はなく、適度に聞きやすい感じですね。ヴォーカルは適度に甘くて肉感的で、囁くようなヴォーカルの手島葵の「さよならの夏(コクリコ坂のテーマ)」も魅力的に表現します。

acs4.jpg

音楽的にも聴きやすいけど再現性も高いのでiPodベースのポータブルアンプよりもiPodデジタルとかHM602のようにDACが強力な方が合うように思います。HM602なんかにもよく合います。ロックでもうるさすぎず、かっこ良く楽しめます。

*

耳にピタッとつくところはある意味カスタムらしいカスタムと言えますね。ソフトシェル独特の吸い付くようなフィット感と音楽的な音の良さで個性的なカスタムIEMと言えるでしょう。
ケーブル交換が出来ない点が残念ではありますが、大きく物足りなさを感じるわけではないと思います。前はカスタムイヤフォンというと、とにかく究極の音を目指すという感じがありましたが、いまはもっといろんなアプローチがあってよいかも知れません。
posted by ささき at 23:00 | TrackBack(0) | ○ カスタムIEM全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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