以前書いたように本日3月25日は「ダイナミックレンジの日」です。これは録音に関してダイナミックレンジの大切さをきちんと考えようという日です。
ホームページが用意されて準備万端整っています。
http://dynamicrangeday.co.uk/
このダイナミックレンジの日は大きく3つの要素からなります。
Competition(競技)、Challenge(取り組み)、Award(表彰)です。
1. Competition(競技)
Competitionでは実際にネットでだれでも参加できるものです。
方法はLargoというグループのJackという曲について、3つの異なるバージョンを聴いてどれが一番「ダイナミックか」を選んで投票するというものです。曲とフォームはこちらにあります。
http://dynamicrangeday.co.uk/comp-live/
3つのバージョンはそれぞれ異なるエンジニアリングで作られていて、ひとつはloudness warの典型で壊れて歪んでいるもの、もうひとつは平たくつぶれていて生気のなくなったようなもの、そしてもうひとつが正しくエンジニアリングされたものです。この最後のものを当てるということです。
この「ダイナミック」という言葉ですがなんとなく、ダイナミックレンジが広い→良録音→クラシックみたいな上品な音楽、という印象を受けるかもしれません。しかし、ここで言っているダイナミックとは日本語英語的な意味での文字通り「ダイナミックな」音楽のことでジャンルは問いません。試聴曲のJackを聴いてもらうとわかりますが、むしろロック・ポップに関したことです。波形でも表示されますが、3つともいずれにしても古楽の上品な良録音のようなスリムな波形とは違います。
これはCompetitionでの判断ポイントということで書いてありますが、3つの中で一番「パンチがあって」「インパクトがあり」「音楽的な高揚(lift)があり」「コントラスト(起伏)が高い」ものを選んでくださいということです。たとえばコンプレッサが過剰なつぶれた曲では、はじめはエキサイティングに聴こえるかもしれないが、次第にきつく聴きづらくなっていくというわけです。
投票はひとり一回、GMTの3/25の12:00までです。(日本時間の今日の夜9時くらい)
当選者は正解に投票した人からランダムに選ばれemailで知らされます。当選者には豪華景品が用意されています。一等はたぶんSSL X-Deskというミキシングコンソールですが、仮にわたしがもらっても仕方ないですね、これ。私ならアランパーソンズがエンジニアとして作ったDVDの"Art & Science Of Sound"がほしいです。これけっこう高いですから。
2. Challenge(取り組み)
Challengeはエンジニアや製作者が取り込むべきもので、興味深いのは明確な数値目標が設定されていることです。
それは「次のプロジェクト(レコーディング、ミックス、マスタリングなど)ではDR8(8dB)以上をキープすること」です。(これを既に達成している人は「達成していない人を説得すること」が目標です)
http://dynamicrangeday.co.uk/challenge/
このDR8という値はTT Dynamic Range Meterというソフトがあり、それで製品としてのWAVとかCDを解析した値で判断します。(AUなどのプラグインとアプリケーションの二種類あります)
巷のレコーディングではDR6以下というのもざらにあるということですが、DR8がきびしいかというとそういうわけではなく、loudness warのページにある基準ではDR14以上で緑(良)となっているので、最低線というところのように思います。こちらに実際に測ってみた結果がデータベースとして一覧できます。ここで見るとDR8というのはぎりぎり可ということですが、これさえも守っていない録音が多いということですね。
http://www.dr.loudness-war.info/
参加表明するためのTwitterとかFacebookのアカウントも用意されています。
3. Award(表彰)
Awardはダイナミックレンジを踏まえた良録音の表彰です。こちらはプロによる審査が行われてもっとも「ダイナミックさ」を感じられるアルバムに対して受賞が行われます。
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このようにダイナミックレンジの日というのは決して上品でおとなしい玄人向けの音楽を作りましょうというわけではなく、表層的ではなく真の意味でダイナミックで生き生きとした音楽を作りましょうというメッセージがこめられているといえます。
Music TO GO!
2011年03月25日
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