最近Macの高音質ミュージックプレーヤーソフトが多く出てきていますが、またひとつ新星が出てきました。このペースではMacのほうがWindowsを追い抜くかもしれません。
そのソフトはAudiophile Engineeringという会社のFideliaです。MacOSX 10.5以降対応です。こちらがホームページです。Download nowからダウンロードできます。
http://audiofile-engineering.com/fidelia/
Fideliaの一番の特徴はiZotope社のライセンスを受けたSRC(サンプルレートコンバーター)を搭載しているということです。Fideliaは有料ソフトですが、このライセンス料も入っているのでしょう。またビット拡張などの際のディザ処理もMBIT+というiZotopeの技術を使用しています。
iZotopeはプロのスタジオ業界的にはよく知られている会社で、以前はiZotopeのOZONEを紹介しました。
実はこのAudiophile EngineeringというのはWave Editorという安価なDAWソフトで知られている会社なのですが、このWave EditorにもiZotopeのSRCライセンスが使われていてサンプリング変換ができ、高品質で定評あるもののようです。それをミュージックプレーヤーにも応用したというところなのでしょう。
ただしFideliaのものはリアルタイム処理ですが、Wave Editorのものはバッチ(一括)処理です。
iZotopeのSRCはartifacts freeをうたい文句にしています。artifactはHQ Playerのところでも書きましたが、直訳すると人工生成物という感じでしょうか、もともとなにもないはずのところに計算誤差とかなんらかの処理上の副産物として生じるデータのことです。これはデジタルカメラの画像処理でもよく出てくる偽色とかモワレなんかですが、オーディオにおいてはプリエコーなんかがあると思います。iZotopeのソフトではそうしたものを取り除いたクリーンな出力を売りにしているということでしょう。
これはスタジオなんかではマスターの96kとか88kをCD品質の44kにするときにより重要です。
リサンプリングの上限は192kHzです。ビット拡張のさいにもiZotopeのMBIT+を使用していますが、ビット幅の上限は32bit floatとなっています。これは32bit Integerではなく、CoreAudioのAUフォーマット(Virtual format)ということでしょう。(前のCoreAudio記事を参照ください)
それとCoreAudioのAUプラグインに対応していて、あらかじめいくつか入っています。これを3つまで組合わせられます。それとLinuxのようにOSXにもJackがあるのですが、Jackとも親和性があるようです。DAW寄りのプレーヤーソフトといえるでしょうね。再生画面に波形が出てくるところもこだわりを感じます。
もちろん自動サンプルレート切り替えに対応しています。こちらがリサンプリングの設定画面です。
またMacにおいてはiTunesとの親和性というのが重要なポイントの一つですが、FideliaはかしこいことにiTunesライブラリファイル(itl)から設定を読むようです。プレイリストなどもそのままインポートできます。Fidelia上ではFidelia独自のライブラリとiTunesライブラリが共存して見えます(一番上の画像参照)。
この方式はAmarraとかPure MusicのようにiTunesにしばられませんし、Decibel(AyreWave)のようにAppleスクリプトを使う方法よりもスマートに思えます。
またリモートにはFidelia専用のiOSアプリが用意されています。ただし$9.99と有料です。
http://itunes.apple.com/us/app/fire-field-recorder/id408043917?mt=8
音を実際に聞いてみましたが、たしかに品質はかなり高いですね。ほとんどAmarraなどに匹敵するトップクラスの音質ですが、Fideliaはより楽器の音がリアルで明瞭でありながらあまり乾いたところがなく、造られたシャープさを感じないように思います。この辺がiZotopeソフトの効果でしょうか。リサンプリングがなくても44kHZでも素晴らしいですね。
15日間の無料トライアルができますが、価格は$119のようです。(いまストアに見えませんが)
しかし「最近は有料ソフトが多い、プレーヤーソフトって無料じゃなかったのか」という人もいるかもしれません。たしかにこうしたミュージックプレーヤーソフトはWindowsを中心としてフリーソフトとして開発者の好意で行われてきたという経緯があると思いますが、最近はマーケットや高音質ソフトのニーズも広がり、よりビジネスとして認識されつつあるのかもしれません。
そうした意味では有料ソフトがでるというのはきちんとしたマーケットとして形成されてきた証かもしれません。そうなればまた力のある会社が参入してきてこの分野も発展していくでしょう。たとえばiZotopeのライセンスのエンジンを使うというのは個人ベースでは難しいところもあると思います。
またFideliaではサポートという点も力を入れて書いています。いままでの無料ソフトの文化ではAt your own riskというところが基本ですが、コンピューターオーディオの裾野が広がるとそういうわけにもいかなくなってくるかもしれません。
こうした点ではミュージックプレーヤーソフトというものも変わりつつあるのかもしれません。
Music TO GO!
2011年02月07日
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