最近特にコンピューターオーディオ機材の開発ペースが早いように思えますが、それは気のせいではないというお話です。
*ネットワークオーディオ
本日のニュースによるとTIがネットワークオーディオ開発キット、nSDKというのを発表したとのこと。
こちら日本語プレスリースです。
こちら英語リリースです。
英語リリースで見ると日本語リリースに書いてあるOSとはLinuxと明確に書いています。このnSDKが対応しているTIのオーディオ用プロセッサ・DA8xファミリーというのがARMプロセッサとDSPのパッケージのようですから、つまりはDA8xを使用する(ARMベースの)組み込みLinuxをOSとしたミュージックサーバーを作るためのキットということでしょう。ここで書いているプレーヤーとはミュージックサーバーのコントロールソフトのことで、ストリーミングやストレージ上の楽曲ファイルを再生できるような機能と、管理機能、操作UI画面などの提供をさしているようです。
これにより、つまり最近CESでポンポンと出たようなDLNA対応のネットワークオーディオ対応のミュージックサーバーの開発が効率化できるということですね。さらにもっとたくさん出てくることでしょう。
ちょっと日本語リリースは訳がおかしいところがありますが、USBに関してはDA8xでサポートしているのがUSBマスストレージクラスとポータブルプレーヤー(DAP)というところから推測してもUSBに関してはホスト機能(A端子側)を持ってUSBメモリーとかポータブルプレーヤーからの再生を可能にするということのようです。(それとRobust solutionは高い堅牢性というより、高い安定性と書いた方がより分かりやすいでしょう)
これはさきに書いた"DA8x Aureus"というオーディオプロセッサ・モジュールのための拡販政策ともとれますが、似たようなのが実はUSB DACの192対応で見られます。
*192/24対応USB DAC
昨年末に少し書いたんですが、昨年予想外だったことはUSBオーディオクラス2.0の対応機種が意外と早く出て、多かったということです。これはXMOS社がUSBオーディオクラス2.0用に特化したパッケージ化されたモジュールであるXS1-L1を提供しているということが要因のひとつのようです。
http://www.xmos.com/products/development-kits/usbaudio2
XS1はUSBコントローラとして従来のFPGAのようなカスタムLSIに変わるものですが、XMOS自体は"Software Defined Silicon"(ソフトウエア定義シリコン)と別名がついているようにハードウエアではなく、小さなコンピューターのようなもののようです。http://www.atmarkit.co.jp/fsys/zunouhoudan/091zunou/xmos_cpu.html
つまり従来のハードウエアロジックでやることをソフトウエアで記述し、超高速のマルチコア並列プロセッサで処理します。言い換えるとハードでやることをソフトでやってるけど、その速度がハードなみに追いついてきたということですね。トランスピュータ(トランジスタ+コンピュータ)とも呼ばれていた一昔前の先進的な考えが、昨今のマルチコア技術の進展などで現実化したという側面もありそうです。
このソフトウエアを記述するさいにはアプリケーションを組むように高級言語(より分かりやすいということ)で記述できるというのがXMOSのポイントです。つまりASICはもとよりFPGAよりもさらに柔軟性が高く、(語弊はあるかもしれませんが)簡単に開発できるというものです。
そしてXMOS社がこのチップの応用領域を広げるためにさまざまな領域にキットを作り、そのひとつがこのUSB オーディオクラス2.0ということのようです。オーディオは比較的小ボリュームマーケットなのでASICよりFPGAが向いているように、FPGAよりもXMOSのほうがよいということなんでしょう。
最近ではXMOS WOWなんかも発表してます。
応用例は例えばこちらのOEM向けの192/24対応のUSB DDCボードのようなものです。
http://www.abc-pcb.com/?page_id=187
こちらも市場にも出てくることでしょう。
いまあるUSBオーディオクラス2.0対応の多くのUSB DAC製品の制限と機能がなぜか揃っている、つまり「Macは10.6.4以上が必要で、Win7は対応がなくThesyconかCEntranceのドライバを使う、かつAsync対応できる」という「特性」は実はこのXMOSのモジュールがもつ機能・制限を引き継いでいるというわけです。
昨年9月ころにUSBクラス2.0のまとめを書いたときはWavelinkやQB9 192をゴードングループと書きましたが、もしかするとここはXMOSグループと書くべきかもしれません。しかしすべてのメーカーが独自で一からやっているわけではなく、やはり最近出たグレースデザインのm903などはゴードンさんのXMOS用のコードを使っているようなのでグループというのは依然残るとは思います。ゴードンさんはStreamlength HSといっていますが、つまりはTAS1020のUSBオーディオクラス2版がこのXMOS XS1のコードといっても良さそうです。もちろん各々開発しているところもあるでしょう。
オーディオの改革というのはこうしたユーザーに見えないところでも着々と進んでいて、その進化のスピードが上がっているようです。
私も技術畑の人なので最近特に開発の効率化って言うのはうるさく言われるわけですが、オーディオも例外ではないということろでしょうか。こういう点でもオーディオが広い世の中の流れに組み込まれているというのが分かるのではないでしょうか。
Music TO GO!
2011年01月18日
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