この2010年は自分としてもオーディオ業界としてもコンピューターオーディオの年でした。秋にはコンピューターオーディオのムックが3冊同時発刊されるという盛り上がりをみせ、新製品に活気付きました。
私も各オーディオ雑誌やPCオーディオムック、また単行本まで書かせてもらい、雑誌やムックと単行本のそれぞれの良さ、難しさ、など勉強になりました。
もともとコンピューターオーディオの世界はネットワークオーディオ機材であるLINN DSシリーズが火をつけたかもしれませんが、 2010年は QB9が嚆矢となった高性能USB DACが、フェーズテックHD7Aなどを中心にしてUSBのAsyncモードというキーワードとともに充実して行った年でした。
またブレークしたhiFaceをはじめUSB DDCも新たな選択肢となり、USBオーディオ系が市場を牽引して行きました。USBオーディオ用のケーブルも注目されたのも顕著な点でした。
今年のUSBオーディオの話題はもう一つはUSBオーディオクラス2.0です。うちで最新の話題として取り上げたのが7月頃ですが、今年後半は思っていた以上にUSBオーディオクラス2.0移行が加速して多数の機材が登場してきましたのに驚かされました。
これは新しいソフトウエア制御によるコントローラを使うことで開発が効率化されたということがあるようです。つまり普通のユーザーには見えない開発のところでも変革があったということですね。
そういう意味でもオーディオというのが表面的なところだけではなく、深いところからも着実に変わって行ってると思います。
それと今年は音楽再生プレーヤーソフトも豊作でした。もともと充実していたWindowsに比べると特にMacの進歩が良かったですね。昨年くらいから人気が出てきたAmarraだけではなくフリーウエアもAyreWaveやAudirvanaなど従来と一線を画するものが登場してきました。
Mac自体のシェアもiPhone人気で上がってますが、もともとオーディオに向いていると言われてたけど、再生プレーヤーの種類が少ないのがネックでしたから、ハードとソフトが揃って動くというのは良い傾向です。
iPadのUSBオーディオ対応もちょっと注目点でした。
iOS4.2で見せた音の良さ、オーディオへの適性というのは侮れません。ただ一部の機種では据え置きでもバスパワーを要求しているものがあって、4.2で供給リミットが100mAから20mAにカットされたこととあいまって、まだ大きく広がるには制約があります。
他にもiOSのオーディオへの適用というのは多様なものがあって、下記のように音楽をデータファイルではなく、アプリとして配信するという形もあります。
http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/1012/29/news015.html
さて来年2011年はということですが、トレンドとして見えてるのは先に書いたような今年黎明期だったUSBクラス2対応の加速化による192kHz対応の充実と、さらに384kHz対応の黎明期となるかもしれません。
どこまでDACのハイサンプリング化が続くか分かりませんが、かつてのパソコンのクロック競争とかデジカメの画素競争にも似てきたかもしれません。
ちなみにこれらを振り返って見ると下記のような結果となりました。
*CPUのクロック競争->製造プロセス細分化による発熱の壁->マルチコアなど別方面に進化の方向を変える
*デジカメの画素競争->センサーの細分化によるDレンジ不足で画質低下->手振れ補正など機能面に進化の方向を変える
オーディオに関してはまず対応ソースという問題もあるし、細分化によるジッターへの影響というのもあるかもしれません。上の両者は明らかな壁にぶつかって方向を変えてますので、どこかに何かが潜んでるんでしょう。
似たようなところでは32bit対応も出てくることでしょう。ただこれもMacのcore audioのところで書いたようにソフトウエアドメインでの壁があります。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/167849910.html
この他だとESS Sabre32チップの台頭とかDSDなんかも話題に登ってくるかもしれません。
ネットワークはどうかというと、2010年はUSBオーディオがブレークしたけれども、2011年はネットワークオーディオがブレークするだろう、と書けばもっともらしいように見えます。でもちょっと違和感も残ります。
そもそもUSBオーディオか、ネットワークオーディオか、というジャンルわけはどうなのでしょう。
例えば私のWindows7 PCではUSBオーディオクラス2のUSB DDCであるAudiophilleoを繋げて「USBオーディオ」になってるように見えますが、同時にfoobarにuPnPコンポーネントをいれて無線LANにつないでるので、iPhoneやiPadからPlugPlayerアプリでDLNA(uPnP)等価の「ネットワークオーディオ」として使えます。
またCantataのところで書いたようにUSB over IPなどを応用すると、USBで接続してもネットワーク透過でありえます。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/159069115.html
こうしてネットワークの一員としてのオーディオ機材のあり方も考えることになるでしょう。
さらに来年になるとMacでは10.7 ライオン、Win7はSP1が出ることでオーディオも左右されるかもしれません。例えばUSBオーディオクラス2の制限がOSの実装によるものならばそれが変わるかもしれないし、スノーレパードで移行期のようだったMacの64bit環境もライオンでデフォルトになれば再生ソフトも変わるかもしれません。
結局コンピューターオーディオというのは、単にトランスポートの代わりにパソコンを使うものであるというよりも、むしろコンピューターの世界とオーディオの世界の関係を見つめ直すものであるようにも思います。
それをまた考える年になることでしょう。
また、トレンドから推測はできますが、新しいものはどんなものが出てくるか分かりません。あとはCES2011が来年の幕開けです!
Music TO GO!
2010年12月31日
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