以前コンシューマー用のPrivate 333の記事を書きましたが、今回新たな製品として334のデモ機をいただきましたので、レポートします。
ちなみに須山カスタムの名称には意味があり、334の場合は3Way + 3 units + 4 driversという意味です。これはひとつのBAユニットに2つのドライバーが入っているものもあるためです。

この334はもとはProAudio用として開発されたもので、333とは異なるラインということです。334はもとあった335(Low 1, Low-Mid 2, High 2)を引き継ぐものとなります。335は業務用途での高域ヘッドルーム確保のために同じドライバー2基を高域として使用したというものです。ただし、これにより位相の問題か、低位があいまいになるデメリットなどがあったため、335のクロスオーバーを見直して、Highのドライバーの受け持ちを狭くして負担を減らした結果、Highを一基で済ませ、334(Low 1, Low-Mid 2, High 1)として位相特性や対入力特性の向上を図ったというものということです。このおかげで内部もコンパクトになったので、製作可能な耳穴の形状やサイズに余裕ができたということです。あとで書きますが実際に音のバランスはよく仕上がっていると思います。

334はまずはProAudio 334として販売開始をするそうですが、ケーブルなどの見直しをしてのちに新シリーズ、FitEar MH334として来春ころ一般販売をするということです。
わたしがいただいたものはこの新シリーズ版に近いものですが、最終版とは音が異なるかもしれませんのでお断りをしておきます。
*機能的な面について
シェルの造りのよさ、透明度・装着感は問題なく世界トップでしょう。シェルの指かけなど細かい造形はまさに日本人が作ったものですね。


UE18ではUE11よりシェルの造形品質が落ちたように思えますし、JH13/16はシェル的には元からあまり良くないので、他よりもはっきりと優れています。ただシリアルなどがシールになっているのがちょっと残念ではあります。
使い勝手で言うとケーブルが硬くて柔軟性がないので、使用中にも気になることがありますが、ケーブルの品質はなかなかによいように思えます。メモリーワイヤーのない点は改良されると思います。
*音質面について
全体的なレベルはとても高くてUE18とかJH13/16など海外トップクラスと比肩できるレベルにあると思います。差は音の好みや使い方に出ると思います。実際に試用中は主に13/16や18とどういう違いがあるのか、自分の使い方ではどうなのか、ということに重点を置いていました。
個人的にざくっというと、UE18よりも全体的に優れていて、JH13/16とは好みにより分かれる、という感じに思えます。
帯域特性にはプロ用としてもコンシューマー用としても通用するようなバランスの良さをまず感じました。
JH16などと比べると、低域の充実感は引けを取らないくらい十分にありますが、JH16のように低域だけ膨らんでいるという感じはありません。そのため低域の充実感が他の帯域をマスクするということなしに、全体的なソリッド感というか、よい音の厚みがあるように感じられます。そのため、バランスが良いといってもいわゆるニュートラルフラットのモニター調のようなつまらない音ではなく、聴いて楽しい音になっています。また334では中域に独特の厚みがあり、全体的なバランスのよさに貢献しているかと思います。特にヴォーカルの聴きやすさ・充実感はJH13/16と比べた大きな334の利点のように思います。全体にJH13/16よりも良い意味で厚み・重み・芯があるソリッドな音と感じます。
もちろん細かい音もよく聴こえますが、音の再現性・音色に忠実さを感じます。
たとえば古いロックで録音のよいもの(Band on the runとか)を聴くと、JH13/16などでは現代モノのように先鋭的に聴こえますが、334だともともとの音がこう録音されていたか、という感じに脚色無しに伝わってくるような感じです。JH13/16は中高域の明るさと明瞭感が特徴的でそれはよいのですが、ややそこが強調されて聞こえるのかと思います。
JH13/16のほうが音がはっきりと明確に描き出される明瞭感はあります。ただしJH13/16ではやや軽さを感じます。この辺が好みの差と前に書いた点です。
JH13だとヘルゲリエンのような現代ジャズトリオのようなものは音が明瞭でかっちりとしてよく聴こえますが、334は自然でバランスが良く厚みがあるので、ビートのあるサウンドでもジャンルを問わず良く聴こえます。
UE18と比べると全体的にソリッドで芯があり、楽器の音もシャープで明瞭に聴こえます。UE18にある音のあいまいさがなく、音のインパクト・アタック感をしっかりと感じられます。UE18も音色の美しさとか音場感のよさはありますが、あまり決定的な差とは感じられないので、客観的には全体的に334の方が良いと感じられます。
他のカスタムとの差が一番出るのはプレーヤーとの相性のように思えます。
おそらくiPhone4単体と組み合わせるイヤフォンとしてはいままでで一番良いでしょう。特にFLAC Playerを使ってiPhone4で334を使うとバランスも良く、欠点をあまり感じさせないすばらしい音を楽しめます。おそらくiPhoneでこれだけの音が出せるということに驚く人は多いでしょう。iPhoneはポータブルアンプとは組み合わせにくいので、単体で十分なよさが引き出せるというのはなかなかに魅力的です。JH13/16やUE18と比べてもiPhone4単体との相性は優れていると思います。またこれだけで完結しています。
ポータブルアンプの組み合わせとかHM801なんかとあわせたときにも良いのですが、ただ334は少し能率が高すぎてパワーを生かしきれないというか、そうしたもどかしさがあるかもしれません。たとえばゲインが低であってもボリュームの余地が取れなさ過ぎる気もします。ただ音の相性が悪いというわけではなく、HM602なんかとの組み合わせが個人的には一番気に入っています。
334はとてもバランスがよくて、かついろんなジャンルで楽しく聴くことが出来るイヤフォンに仕上がっていると思います。自分のお気に入りのひとつです。特にiPhoneだけ持って出かけたいというときはこれがベストチョイスという感じですね。