Music TO GO!

2011年01月23日

古い神話の国の新しい音楽

少し前に書いたデンマークのValraun(ヴァルラウン)をなかなか気に入ったので、こういう民族楽器(古楽器)+電子楽器というパターンのいわばロック・ポップ寄りのトラッドバンドを少し発掘してみようと、昨年から探していろいろとCDを買ってみました。日本ではほとんど売っていないものが多いので、まずいろいろ検索してバンド名の情報を仕入れ、そのバンドのホームページを探り当ててそこから買うというパターンです。

トラッドバンドといっても今回はアイルランドとイギリス、およびフランスとカナダなどケルト文化圏は除外しています。そのためポップよりでもロリーナマッケニットとかセシルコルベルは含んでいません(というかこの辺はすでに何回も書いてますけど)。
今回焦点を当てているのはゲルマン・チュートン文化圏の北欧とドイツ周辺です。もともとヴァルラウンという言葉は北欧神話から取ってきているのですが、そうした古い神話の国の今の音楽というわけです。
最初は「北欧神話の国の音楽」というタイトルにしようとしてたんですが、調べてみると北欧というよりドイツのバンドで日本ではルネサンス音楽として捉えられているものをベースとしたバンドが多いのに気がつきます。もっとも日本でよく知られている宮廷音楽的なものよりも、もっと大衆・世俗音楽といったものがベースとなっています。例えばはじめに紹介するFaunのAndroはフォークダンスかなにかの曲のようです。(ラ・フォリアが様々にアレンジされるのに似ているかもしれませんね)

Faun - ドイツ

まずこの傾向のバンドで代表格のひとつ、ドイツのFaunです。 これはPikonosvenieの最新コンピレーションにも入っていたので気になっていました。ダウンテンポ+ゴシック、というデレリウムとかSleepthiefのような音楽傾向に古楽器を加えるというパターンで、どちらかというと(新作では特に)Valravnよりデレリウム色が強く、さきに書いたようにより中世・ルネッサンス音楽よりです。
こちらのライブの動画を見ると演奏スタイルが良く分かると思います。曲は上のコンピにも入っているAndro(Licht収録)です。



ギターの代わりにリュートを使い、バグパイプをメインに使っています。それとステージ向かって右の女性が手で回しながら演奏してる楽器はあまりなじみがないと思いますが、ハーディーガーディーという楽器です。ちょうど先週のテレビ朝日の「題名のない音楽会」に絶滅危惧種の楽器として登場しました。ただこうやって使っている人は使っているというわけです。ヴァルラウンも来日では使っていました。リュート、ハーディーガーディーとバグパイプの取り合わせはとてもルネッサンス期らしいようですが、それに打ち込み電子音っていう組み合わせが特徴的なところです。

Totemはまだ日本のAmazonで買えます。わたしはLichtとRenessanceをホームページから注文しました。(確認メールが来てPayPalで払います)
返事はその日のうちに来ましたが、メールのドメインがミッドガルド(英訳で言うとミドルアース)というところが面白いです。
Faunのホームページはこちらです。
http://www.faune.de/web/index.html


Omnia - オランダ

次にオランダのOmniaを紹介したほうが良いかもしれません。このバンドはスタイルを評して"Pagan Fork"というジャンルで語られ、Pagan Forkというアルバムも出しています。(ここからジャンル名になったのかもしれません)
Paganというのは一般には異端とか異教徒みたいな意味ですが、狭い意味ではキリスト教・イスラム教の(一神教の)宗教から見た場合の、土地に根ざしたローカルな多神教宗教を意味しています。たとえばチュートン・北欧神話とかケルト神話みたいなものがキリスト教から見た場合のPaganとなります。
そのため、Pagan forkとは「異端的な変わったフォーク」というスタイル的な意味とともに、この場合は「ゲルマン系の土着音楽」という意味にも取れます。本来Paganというのは「原始的な」というような差別的なネガティブ表現ですが、この場合はつまり自分で言うわけですから、斜に構えてあえて使っているわけです。

Ominaは音楽的にやはり中世音楽をベースにしてますが、下のライブ動画を見ると分かるようにハイテンションでハイスピード、特徴ある演奏スタイルです。ケルト音楽系でのLAUとか、アイリッシュパンクの系にも通じるパワフルでスピード感がありますね。曲はBealtaine(Pagan Folk収録)です。



OmniaはPagan Forkが日本からもAmazon契約の米国ショップなどで買えるかもしれません。私はPagan Fork聴いて気に入ったので全部アルバムをバンドのホームページから通販で買いました。(CDの海外通販で困るのは送料が高くつくということですので、たいてい一気買いします)
Omniaは曲をリミックス風にしたり、最新アルバムではラップを取り入れたりといろんなことをやっています。
Omniaのホームページはこちらです。
http://www.worldofomnia.com/


Dunkelschoen - ドイツ

Dunkelschoen(oeはOウムラウトの代記)はやはりルネッサンス世俗音楽をベースにして、Omniaに比べると全体にメロディアスでヴォーカル主体曲も多くしっとりと美しい佳曲も多くあります。加えてエレキベースやドラムスなんかも含めてけっこうキャッチャーな美メロポップ風な曲もあります。
下記の動画はDunkelschoenらしい美しい小品、"Quiet land"(アルバムKathasia収録)です。



こちらはやはりアーティストのホームページから直接買いました。返事はやはりきわめて早く、「英語はうまくないんだけど。。」と海外からメールもらうのも新鮮です。ただしなぜかFaunよりも郵送に時間がかかりましたが、この辺の郵便事情もちょっと不明です。
Dunkelschoenの
ホームページはこちらです。
http://www.dunkelschoen-musik.de/


Wardruna - ノルウェー

北欧神話の国の音楽というと実のところWardrunaが一番あっているかもしれません。これはバイキングの戦いや踊りの音楽をイメージして、それを呪術的なビートでアンビエント風アレンジとなっています。妙に鬼気迫るヴォーカルスタイルとか、ダークなイメージはCold meatレーベルにいても良さそうな北欧インディーバンドっぽい感じがします。
出しているアルバムのタイトルは"Runaljod - gap var Ginnunga"「(北欧神話に出てくる)ギンヌンガの裂け目」、バンドのマークはルーン文字というまさに北欧神話の世界を体現しています。
下の動画はKanua(上記アルバム収録)です。



こちらWardrunaのホームページです。
http://wardruna.com/


Valravn - デンマーク

冒頭に書いたValraunです。Valravnはデンマークがベースのユニットですが、メンバー自体は各国からきているようです。ヴォーカルはもともと女優志望だったということで、なかなかステージも魅せてくれます。



ホームページのリンク先を見るとトラッド系と一緒にかなりインディー系の怪しい音のバンドがリストされているのが面白いところでバンドの音楽性を感じます。
Valravnは最新アルバムが日本では普通に買えます。その前のは入手困難のようです。
こちらValraunのホームページです。
http://www.valravn.net/


この辺から番外編に近くなりますが、やっぱりメタルでなきゃ、という人にはトラッドフォークとメタルの融合、スイスのEluveitieなんかも挙げておきます。下はInis Mona(Slania収録)です。



古楽器の素朴な音色とデス声のミスマッチ感がなんともいい味です。こちらでもハーディーガーディーが使われていますね。こんなに使われていてほんとに絶滅危惧種? Eluvetiは日本で普通に買えると思います。
あとついでではありますが、実はこの手のバンドでは日本で一番知られているかもしれない、リッチーのBlackmore's Nightの新作が出ています。これも日本で普通に買えます。
http://www.amazon.co.jp/Autumn-Sky-Blackmores-Night/dp/B003YUK8GO
動画は最新アルバムではありませんがヒットしたShadow of the Moonから御大のアコギ演奏を見ながら本記事を締めたいと思います。第一期パープルを知っているとこうした音楽性は意外ではないと思います。なおヴォーカルはリッチーの奥さんです。





まえに世界の個性的なレーベル紹介ということで、フランスのPikonosvenieとアメリカのProjektを取り上げたんですが、音楽で世界をめぐるというのもいろんな文化の発見があって面白いものです。

Pikonosvenieの記事
http://vaiopocket.seesaa.net/article/112958381.html

Projektの記事
http://vaiopocket.seesaa.net/article/30956262.html

posted by ささき at 23:17 | TrackBack(0) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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