わたしもUSB 192kHz対応への旅をすべく、新たな機材を購入しました。Audiophilleo1です。
今年の春頃にリリースされた製品ですが、hiFaceやHalide BridgeのようなUSB DDCです($895)。大きなOLEDディスプレイがあるのが特徴ですが、いくつか機能とディスプレイを削った廉価版のAudiophilleo2もあります($495)。
ホームページはこちらです。
http://www.audiophilleo.com/
ゴードンさんのWavelinkを買うという手もありましたが - というかはじめはそう考えてましたが - Bridgeを買ったばかりなのでゴードンものが続いても新味がないという理由で前からちょっと気になっていたAudiophilleoを試してみることにしました。
実は買ったのは少し前で、しばらく開発のPhillipさんとメールのやりとりをしていたんですが、以下はその情報も入っています。
* 特徴
たくさんの付属品がついてきます。ACアダプターがついてくる理由はまた別に説明します。(なにしろ機能が多い)。
Audiophilleoはバスパワーで動くのでこれ自体は電源は不要です。
Audiophilleoの特徴は以下のようなものです。
1. USB 192kHz対応です。AudiophilleoはUSBの標準ドライバーで192/24まで再生可能になります。
ただしそれはMacOSXの話で、Windowsはカスタムドライバーが必要です。
特徴的なのはMacOSXは10.5でも大丈夫とのことです。ゴードンさんのWavelinkは10.6.4が必要とありました。ただしAudiophilleoでも10.6が望ましいようではあります。
Windows7は192/24はカスタムドライバーで対応。ないときは96/24までになります。この、MacはOKでWin7はだめというのはWavelengthと同じですが、ゴードンさんとは関係なく独自のファームウエアと独自のUSBコントローラを使用しています。
2. USB標準ドライバーで使え、Async転送をサポートしている。
いまはやりのUSBのAsync転送を採用しています。カスタムドライバーのインストールは不要です(ただしWinodws7で176と192を使うときは必要です)。
Audiophilleoがサポートしているのは基本的にはWindowsはVistaと7のみです。ただし標準ドライバーなのでXPもつかえると思います(試していません)。
3. 8ps (RMS)という非常に低いジッター値に抑えている。
Asyncモードの恩恵のひとつでしょうが、Bridgeの20psよりさらに低い一桁ピコセコンド台に到達しています。
4. 同軸デジタル側はダイレクトアダプター(付属)で直にDACにつけられます。Bridgeほどではありませんが、ほとんどDACの一部というかオプションキットといっても良い一体感があります。本体はBNCコネクターですが、アダプターはBNC->RCAオス(DACのRCAにダイレクトにさすため)、BNC->RCAメス(RCAケーブルで伸ばすため)、BNC->BNC(DACのBNCとダイレクトにさすため)の3つが付属してきます。パーツ自体は特注ではなく市販品だと思います。
下記はBenchmark DAC1に取り付けたところです。
両端を普通にケーブルでつなぐこともアダプタの差し替えで可能です。
USBケーブルは差し替えが可能で、あのアコリバ分離ケーブルが使えます。聞き込むとBridgeは若干音が荒くきついところがあり、ケーブルの部分が安いせいではないかと思うこともこれを買った理由です。
5. ビットパーフェクトチェッカーやジッターシミュレーターなど、コンピューターオーディオ用テスターと言っても良いような面白さがあります。(Audiophilleo1のみ)
実に多機能ですが、面白そうなのは下記のものです。
*ビットパーフェクトチェッカー
テストファイルを元にビットパーフェクトのテストを行う。
*ジッターシミュレーター
内部のリクロック回路をON/OFFしてその効果を確認できる。
*ケーブルシミュレーター
これは説明が必要かもしれませんが、ケーブルの端末反射と跳ね返りの影響のシミュレートと思います。
*位相反転
OLEDの左下の+/-が位相を示しています。+が正相です。
これらの機能はメニューとジョイスティックで操作して選択します。
以上の機能はAudiophilleo1のみです。ただしAudiophilleo2でもLEDでOK/NG程度はビットパーフェクトチェッカーは使えるようです。Audiophilleo1はOLEDディスプレイがあるので、詳細に何%パケットがオリジナルのテストファイルのデータから改変されているかということまで出力します。Foobarでボリュームを変えた瞬間にパケットが改変を始めるのがリアルタイムで分かるのが興味深いです。
左はビットパーフェクトの状態/右は意図的にエラーを起こしたもの
この辺のネタは小分けして書く予定です。Audiophilleo1と2の違いはこことLEDくらいなので、ビットパーフェクトの確認などどうでもよいので単に良い音質で買いたい人はAudiophilleo2がお得だと思います。
6. ファームウエアのアップグレードが可能
さらにユニークなのはAudiophilleoではファームウエアをアップデートできるのですが、これがなんとWAV形式で提供されていることです。
普通はexeなどのバイナリかbinなどのイメージファイルですが、これだとファイルとして転送するためにデバイスとマウントしなければならないことになります。これは転送先をファイルシステムとして認識する必要があるからです。これだとUSBデバイスはストレージクラスでなければなりません。(DAPなどでUSB DACとUSB Dataの二つUSB端子があるものはこのためです)
Audiophilleoではオーディオクラスのまま、ファームアップデートはWAVファイルを再生することによって行います。この用途にはWMPがよいとのことです。foobarなどの場合はDSP/resamplerなどをすべて外さねばなりません(試してみましたが失敗しました)。
え? ビットパーフェクトでないとファームウエアの転送ができないんじゃないかって? 良い質問です。が、これについては理由があって回答保留とさせていただきます。(一応マニュアルにはビットパーフェクトでなくても可能と書いてあります)
Audiophilleo1ではメニューからいつでもアップデートモードに入れられて進行もスクリーンで分かりますが、Audiophilleo2はアップデートモードになるタイミングがありますので、マニュアルを読んでください。
7. 大きなスクリーン (Audiophilleo1のみ)
大きなOLEDスクリーンに情報がたっぷりと表示されます。(LEDはスリープ時間の設定が可能です)
現在受けている信号もサンプリングレートとレゾリューション(ビット幅)を表示します。
また、Audiophilleo1は高精度の64bitボリュームを内蔵しているのでその表示も出ます。これはダイレクト(バイパス)ももちろん可能です。
Audiophilleoは基本的に24bitで受けますが、16bitデータを送っているときはスクリーンにはbit幅が16と表示されることがあります。つまり44/16のデータをfoobarでx2アップサンプリングして送出するとAudiophilleoには88/16と表示されます。
これは24bitで送られていても、下位ビットがすべてゼロのときは16bitデータと判断して16と表示するそうです。24bitで16bitデータを送出したときに正しくゼロをつめてないとここは正しく表示されず、送っているプレーヤーも怪しいとのこと。
ヘルプも大きな画面で使い方がわかります。
再生中はこのように出力をグラフィカルに表示できますが、スリープタイマーでオフにもできます。
* 音質
システムはAudiophilleo1 から Benchmark DAC1とHeadroom desktopの内蔵DACとHD800とかLCD2で試しました。あとで角田さんのところでヘーゲルD10を組み合わせて、ハイエンド機器でも試しています。
わたしのDAC1はUSBがついていないときのものなので、まさにこういうUSB DDCに好適です。
Win7(64)では共有モードプロパティでは192が見えますが、選択して音を出すとエラーになります。これはカスタムドライバーをいれる必要があります。(わたしは思うところあってまだインストールしていません)
MacAir (OSX 10.6.4)ではAudiomidiのオーディオ画面で192と176が選択できるようになり、実際に音が出ますし、ロックされます。
わたしはAmarra miniなので192のテストにはPure Music Playerを使用しましたが、角田さんのところのAmarra(full)でも試しましたので大丈夫です。ただしAmarraと192のときははじめなんらかの関係でノイズが出ることがありましたが、少し経つと問題なくなります。バッファの関係か、コントローラの問題かよくわかりません。
MacOSX 10.5では試していませんが、開発者のPhilipさんは大丈夫といっています。
音の印象ですが、なんとなく低ジッターというと尖ったイメージがありますが、Audiophilleo1をはじめて聞いたときの感覚はとても自然ということでした。しかし聞き込んでみると音の世界はかなり精緻でしっかりとしています。細かいディテールはかなり再現されています。透明感もすばらしいものがあります。
角田さん宅でヘーゲルH10を借りてAudiophilleoで聴いてみましたが、15万円のヘーゲルからハイエンドDACかいっていうくらいの精緻で整った音再現が出てきました。レンジも広く、低域レスポンスもかなり優れています。もちろんちゃんと入力させればよい音が出るヘーゲルもすごいわけではありますが、素性の良いDAC+高性能USB DDCというのもお勧めのコンピューターオーディオ・システムのひとつです。
そういう意味でもUSB DDCはBridgeのところでも書いたように、なるべくDACと一体感のあるデザインが好ましいと思います。
Bridgeでも性能的にはけっこう満足していたんですが、高域がややきつめに出るところが聴いているとけっこう気になってきます。Audiophilleo1ではどんなケーブルでもきつさ・荒さはありません。ケーブルの差が出ないように設計しているということですが、実際には差はあります。ただし付属のケーブルでも悪くなく、フルテックのGT2と付け替えてみるとその差はあまり大きくありません。多少GT2の方が洗練されて聞こえるくらいです。ただアコリバケーブルだと空間表現などで違いは分かりやすく出てきます。
音的にはかなりすばらしいもので、少なくもいままで聴いたUSB DDCの中ではベストだと思います。
標準ドライバの192kHz対応でAsyncサポートといういまどきコンピューターオーディオの最先端を行くもので、機能も豊富となかなか興味深いものといえます。
Music TO GO!
2010年09月14日
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