Music TO GO!

2010年07月19日

USBオーディオ、新世代へ

いまAntelopeのZodiac+を試聴用に借りています。
これはスタジオで使われるクロックで有名なAntelope社製のヘッドホンアンプ付きDACです。こちらPCオーディオ展のときの写真ですが、真ん中の黒いのがZodiacです。

IMG_5203.jpg

音は素晴らしく良いですが、機材自体のレビューはここでは書きません。ここで書くのはZodiac+をいじっているうちに面白い発見をしたことです。
それはUSBの標準ドライバーでMac もWindows7も192/24までいけるということです!
Macはさらにいけるかもしれません。

いままでUSBの標準ドライバー(カスタムドライバーをインストールしないで済むタイプ)では96/24が限界だと思われていましたが、最近Wavelengthのゴードンさんがどうも現行ドライバーで192までいけるような発言をしていたので臭いと思ってたんですが、Zodiac+で確かめられました。(Zodiacも+バージョンが必要です)

それはUSB標準ドライバーのUSB High Speed modeのサポートが、WindowsとMacではすでになされているということです。(Class 2サポートと言うのかもしれません)
ただしMac OSXはスノーレパード(10.6)のみ、Windowsは7のみと思われます。(現時点での情報からの推測です)


*USB標準ドライバーとその96k限界

前にも書いたようにUSBにはクラスドライバーというOSにあらかじめ入ってる規定された標準ドライバーがあり、ハードディスクなどのマスストレージ・クラスドライバーのようにそのおかげでハードディスクをさすだけでデバイスドライバーのインストール不要で便利に使えます。

ただしUSBオーディオクラスの場合、その規定は古くて標準ドライバーの多くはずいぶん前に制定されたUSB1.1(つまりFull Speed)に基づく帯域幅で設計されていて、これでは96/24が限界です。つまりハードディスク(マスストレージクラス)はUSB2.0(High Speed)に基づく高速転送ができるのにオーディオクラスはUSB1.1(Full Speed)のまま取り残されていたという状況でした。
ただしデバイス側のUSBコントローラーもPCM270x系とかTAS1020のようにUSB1.1対応のみの古いものがいまだに多数使われているので、実質あまり影響ないということです。
パソコン(OS)側のドライバーも、デバイス側のコントローラーも古い同志ということですね。実質96kより上のハイサンプリングソースもあまりありませんし、なんとなくこれで良いと思われていたという状況です。

これを打開して192kを達成するための策として、いわばこの標準ドライバーを無視して独自のカスタムドライバーを使うのがHifaceやMusilandのようなカスタムドライバー方式です。これには主にCypress EZ-USBなどのバルク転送を行うコントローラを使用しているようです。バルク転送はハードディスクで行われている転送方式です(これに対して普通のUSBオーディオはアイソクロナス転送)。これなら2.0のHighspeedの帯域幅で転送できます。
ただしカスタムドライバーなのでインストールが必要という不便な点もあるし、サポートされるOSも限定されてしまいます。Win7でいうところの「理想的な」ドライバーという保証もありません。またHifaceを取り付けるとWindowsの安全な取り外しオプションが出たりします。つまりOSからはオーディオデバイスとして認識してもらっていないということになります。
そのため、できればOSの標準ドライバーでのサポートが望ましいわけです。

ただこれも書いたんですが、昨年5月ころにそのUSBオーディオクラス規格に改訂がはいったようです。そこで、さきのゴードンさんの言動と合わせてちょっと動向をうかがっていた所、Zodiac+を使って自分で確かめることができたというわけです。

*標準ドライバーの96k越えの実際

さきに書いたようにZodiacもZodiac+でなければ192をサポートしません。Zodiac+ではUSBのHigh speed modeをサポートするためのUH1というモードが用意されています。UH1モードに入れるためにはいったん電源を切って、モード切替の儀式をやる必要があります(マニュアルに書いてあります、なおマニュアルは英語マニュアルをご覧ください)。
このほかにUF1というモードがあり、UF1(Full Speed USB1.1対応)では普通の標準ドライバーを使うものと同じ96/24までです。これはデバイスのファームウエア側も対応が必要なので、互換性維持のために残しているのだとおもいます。

まずWindows 7で試してみました。もちろんなんのドライバーも入れていませんし、Windows7ではMacOSXやUbuntuのようにシステムを改変する作業では必ず確認ダイアログが出るので勝手にはいりません。
まず共有モードのサンプリングレート選択メニューで192/24が出て来ます。176が出ないのは88が出ないのと同じ理由でWindows7のバグでしょう。

zodiac.png     icon_hdp.png

左がZodiac+、右は比較用のIcon HDPのデバイス画面です。
Zodiacで16bitの選択がないのはZodiacが24bit native(16bitでも24bitに詰める)転送を要求しているせいと思われます。

これで192を選択するとWin7のオーディオエンジンでリサンプリングされてから標準ドライバー経由でZodiac+に送られる訳です。もちろんZodiac+側でもきちんと192でロックされています!
音的にも精細感が上がったように思えますしこれは良いですね。これはオーディオエンジンでリサンプリングするのでどんなサンプリングレートの楽曲でも同じです。

次にfoobar2000の排他モードWASAPIでPCオーディオファン2付録の88.2と176.4で収録されている同じ曲(El Choclo)をかけてみると、ちゃんとどちらも指定のレートでZodiac側でロックします。もちろん共有モードの指定も無視していますし、まさに期待どおりの動作をしています。

次にMacで試してみました。MacOSXではAudioMidiの設定パネルがWindow7の共有モード設定みたいなものですが、そこでもやはり192の選択が出てきます!しかもWin7と違ってちゃんと88.2系列も出てきます。

zodiac_mac.png     bridge_mac.png

左がZodiac+、右は比較用のHalide Bridgeです。
ここで192を選択してiTunesやPlayで出してみるとたしかにzodiac+側でもロックして192と表示されます。
おそらくMac OSXのCore AudioでのWin7のCore Audioの排他モードみたいなもの(ややこしい?)は外から見えない設定になっていると思いますが、おそらく「Win7の排他モードみたいなもの」対応と思われるAmarraは私のはminiで96までなので残念ながらそれを試せません。それで上のWindows7でのFoobar2000のテストのようなことはMacではできません。

*USB標準ドライバーの新時代

Antelopeの次のZodiac GoldではUH2というモードを搭載してMac(10.6)ならば384kまで対応できるようです。Wavelengthの次の製品であるUSB DDCのWavelinkも192対応してくるということですが、おそらく標準ドライバーで使えるでしょう。(こちらはMacのみかもしれません) Wavelengthのコードが変わるということは、、つまりそういうことかもしれません。
次は標準ドライバーで192対応の時代が来ると思うし、そうなるとカスタムドライバーを使っていたところはまた別の対応が必要になるかもしれません。
ただしデバイス側のコントローラの対応も必要ですので、普及というのはわかりません。
ちなみにここに書いたことは私の現時点での推測・考察という事を念のために書いておきます。

時代は変わるし、手法も変わる。それをうまく使って行きたいものです。
posted by ささき at 18:03 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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