Music TO GO!

2010年06月14日

Halide Bridge シンプルかつ高性能なUSB-SPDIF コンバーター

Halide Bridgeは非常にシンプルで扱いやすく、かつ高音質のUSB-SPDIFコンバーター(USB DDC)です。
以前Devilsound DACというシンプルでかつ音もよいUSBケーブル、DAC、アナログケーブルが一体型になったものを紹介しましたが、 BridgeはそのDevilsound社が改名してHalide(ハロイド)となり、そこが開発したUSB-SPDIFコンバーターです。いうなれば、Devilsound DACのUSB DDC版です。

2383.jpg     2386.jpg

これも見て機能がわかりやすく、片側にUSB端子、もう片方にSPDIF端子(RCAまたはBNC)があり、SPDIF端子側に本体があります。本体もコンパクトでほとんどDACと一体化できます。Bridge(架け橋)という名前がふさわしいですね。

こちらにホームページがあります。
http://www.halidedesign.com/bridge/
BNCとRCAタイプがあり、私のはRCAです。

実はこれ、しばらく前に頼んでいたんですが出荷が遅れていて、待っていました。そうこうしている間にミックスウェーブさんが国内扱いするということが決まりました。下記のリンクです。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20100528_370232.html
約5万円というとhiFaceに比べて高いと思われるかもしれませんが、hiFaceよりもかなり高性能です。
下記のように特徴をまとめました。

2389.jpg

*特徴

1. 非常にコンパクトかつシンプル

hiFaceはいまやこの分野のスタンダードになりましたが、hiFaceの特徴はまずシンプルなことです。hiFaceではUSB端子が既についていてUSBケーブルが不要で直にPCにさせます。
このBridgeではその逆で、SPDIF端子側にケーブルがありません。SPDIF同軸デジタルケーブル不要です。

つまりPCと一体化できたhiFaceに比べて、BridgeではDACと一体化できるということです。
hiFaceでは少し硬いデジタルケーブルをつけると、軽いMac Airなんかではバランスが悪くなりましたが、BridgeではPC側の端子が軽くケーブルがやわらかいので、Mac Airなんかの薄いノートとも相性は抜群です。
標準ドライバーなのでインストールも不要で、使用に悩むところがありません。

2. シンプルでも高性能

Devil DACもシンプルと言うだけではなく、その性能がとても高く、価格もそれなりにするというものでしたが、Bridgeも似たところがあります。シンプルだからといって性能はそれなりではなく、シンプルだからこそシグナルパスも短く高性能にできる、というようなポジティブな点を追求しています。
みかけはシンプルですが、かなり詰まった中身を持っています。

  2-1 「Gordonのコード」Asyncronous方式の採用

Protonのところで書いた、Ayre QB-9も採用しているWavelengthのアシンクロナス転送方式"Streamlength"を採用しています。これはQB-9と同様にWavelengthのGordonさんから正式にライセンスを受けているということです。
そのためやはりTAS1020Bを採用しています。Wavelengthのアシンクロナス転送方式については下記のProtonの項をご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/7334189-1.html
ちなみにGordonさんは自分でもUSB DDCを製作するといっていますが、まだ完成していません。少しいろいろな理由が思い当たるので、少し待ってこのコードを改良しているようにも思います。

  2-2 高精度クロック

アシンクロナス転送方式を採用しているというのは高精度な固定クロックを使えるということです。
たとえばジッター値ですが、既存のUSB-SPDIF コンバーターではだいたい200ps - 400psくらいのようですが、このBridgeはなんと一桁も低い10ps (RMS)という高精度を実現しています。

  2-3 電源のクリーン化

もちろんBridgeはバスパワーで動きます。
そのため、バスパワーのPC由来ノイズの除去にかなり気を使っていて、デジタル回路とクロックへの電源供給の分離とか、高周波フィルターと新開発の低周波付近のレギュレーターを使って整流しているとのこと。

  2-4 クライオ処理

これ全体をクライオ処理しているようです。「そろそろ来ないの?」ってメールしたら、クライオプールに浸かってるところとメールが来ました。あるいはUSBケーブルをやっているCryo Cablesともなにか関係があるのかもしれません。
USBケーブルを交換できるようにしてあるとまたよかったようにも思えますが、このクライオ処理をしてあるというのもポイントではあります。


3. USB標準ドライバーで使えます

ここがhiFaceとは違います。Bridgeではカスタムドライバーは不要ですが、その分で96/24までの対応となります。
そのため多様なOSに対応しています。ためしたところXP、MacOS 10.6はもちろん、Netwalker Linux(Ubuntu 9.04)のALSAドライバーもOKでした。

ただし標準ドライバーですが、iPadでは使えません。予想されたことですが、試してみましたらやはりだめでした。
これはProtonが使えないのと同じで、"Gordonのコード"を使っているので同じ問題も持っているということです。これについてはだいたい分かってきたのでまた別の記事で触れます。


*使用と音質

ケーブルはやや長く6feetというので約2mです。USBケーブルは柔軟で簡単に取り扱えます。本体も軽く、BridgeをDACのSPDIF入力プラグにつけても張り出しは少ないですし、実際硬くて太いデジタルケーブルと比べると実際上の違いは大きくあるようには思えません。ほとんどDACと一体化します。
下記写真はHeadroom Desktop Balancedヘッドホンアンプのデジタル入力プラグにBridgeとWireworldの定番品Gold Starlight5をつけたところです。
左がBridgeで、右がGold Starlightです。

2393.jpg     2394.jpg

インストールは簡単で標準ドライバーなので挿すだけです。
hiFaceのようにKernel streaming対応うんぬんはないので、XPなら普通に(?)ASIO4ALLでよいと思います。
とりあえずXPからHeadroom Desktop balancedアンプにお気に入りの平面駆動ヘッドホンAudeze LCD-2をシングルエンドで使います。(HE5LEはデモ機のため返しました)
Headroom Desktop balancedはわりと高性能のDACを内蔵していて、いままではDAL CardDeluxeを使って、SPDIFからDesktop balancedのDACに入力させていました。上の写真の右の構成ですね。
それを左のBridgeをつけたものと比較します。


これ、端的に言って音質的にはだれもが驚くと思います。シンプルな外観からは想像できません。
高音質で定評のあるスタジオ用サウンドカードのCardDeluxeと比べた場合、hiFaceだとやはりCardDeluxeには及ばないか、という感じでしたが、Bridgeは箱から出した状態で軽くCardDeluxeを圧倒します。はっきり言って驚きました。
まず静粛感とそこから浮き出るような細かい音の解像力に圧倒され、ウッドベースなどの切れの良さ、ぴしっというシャープさに驚かされます。ピアノを力強く打鍵する音の鮮明さとリアルさはちょっとはっとしました。何回も聞いた曲なのに、です。
見通しのよさ、透明感も高く、空間表現もCardDeluxeより分かりやすく向上します。
端的に言って同じ曲を聴きなおしてもリマスターしたみたいに新鮮に感じられます。いまいろいろ聴きなおしてますが、エージングを重ねてさらによくなるかも。

これがGordonのコードと10psジッターの力なんでしょう。
ちなみに比較はXP上のFoobar2kでCardDeluxeはASIOドライバー、BridgeはASIO4ALLを使用しています。

Mac AirからUSB経由で出した音はまた驚きます。USBというと軽くて薄い音ではないかと思われるかもしれませんが、実際見かけも薄いMacbook AirからUSB経由でこんな密度のある音が出てくるとは思えないほどです。

いままでUSB DDCというとUSB入力が96/24使えないときとか、そもそもUSBがないときの便利グッズ的な印象もありましたが、これは互角以上にどんなオーディオインターフェースとも渡り合って主役を主張できるでしょう。

たぶんこれの音の良さは見ても信じられないし、触っても信じられないと思います。それで5万近くを出すのはなかなか勇気がいるかもしれません。(わたしは前にDevilsound DACを試してたので、これも良いのではないかと思いました)
DACportも似たようなものですが、DACportに5万出しても納得できる人は、これもきっと納得するでしょう。

hiFaceをUSB DDC入門機と考えたとき、さらなる上を試したいときに前に紹介したDiverterとともに一クラス上のUSB DDCの選択となりうるグループが形成されつつあるのはよいことです。このくらいならかなりのレベルのオーディオ機器と組み合わせられるように思います。記憶にあるDiverterとは音傾向がちがうようにも思えたので、こういう多様な選択という点でもよいものです。

いままでオーディオを本格的にやっていて、PCオーディオをはじめたいが、まず手持ちのDACなど機器を流用したい、という方にもぴったりです。どんな手持ちのパソコンに、USB対応ではない手元のDACをつなぐこともできますし、ドライバーのインストール不要で操作もむずかしいところはありません。
慣れたらASIO4ALLなど導入すれば、よりよい音が楽しめます。ステップアップも自然です。

もし興味をもったら、ミックスウェーブさんで国内販売しますし、そのうち試聴機も出ると思うので、ぜひ試してみてください。
これはお勧めですし、これまではなんだったんだ、といろいろと考えさせてくれます。


*Bridgeから想うPCオーディオのありかた

今回、Bridgeを使い聴いたことで少しPCオーディオの通念を考え直してしまいました。
思ったのは次の二点です。

ひとつはCardDeluxeももう古いとはいえ、かなり一流のサウンドカードだと思います。ところがBridgeを使うとPCのカバーを開けて設置しドライバーのバージョンなどに頭を悩ます内蔵サウンドカードって本当にいるのか、とさえ思えます。それほどこの分野の進歩が早いということでしょうか。
Lynxなど他の高性能スタジオ用カードと比べたわけではないので結論をつけるつもりはありませんが、ちょっとまじめにそう考えてしまいました。もちろんアナログ出力はできないので、PCトランスポートとして捉えた場合ということです。
実際のところわたしもUSBをいろいろ勉強する傍ら、USBではまだまだのところもあるので、XP PCではCardDeuxeをまだ使うという面も多々ありました。ただBridgeはかなりそこを変えてくれそうです。もともとBridgeはMac Airと組み合わせるために買ったんですが、タワーPCでも主力になるかもしれません。そこが自分でも驚いた点です。

もうひとつはDACとUSBインターフェースの関係です。
これはたとえばこういうことです。最近ヘーゲルHD10を少しいじらせてもらって考えたんですが、こんなにDACとしては素性がいいのに急ごしらえのような48/16のUSBの口がついているのはちょっと不釣合いにも思えました。
Wavelengthのように自慢のUSB技術があるところはそれを組み込んだProtonのようなUSB DACを作るのはより効率的かもしれません。ただ、そうでないメーカーがPCオーディオに対応したいというときは、間に合わせのような48/16の入力をおまけのようにつけるよりは、こうした高性能で便利なUSB DDCをつけて、経験が長く自信のあるSPDIF入力をどうどうとメインに使ったほうがよいと思います。それをシステムとして提案すればよいのではないでしょうか。バンドルしてもよいと思います。BridgeのようなUSB-DDCならDACと一体化したように扱えます。

そこで分業することで従来のオーディオも本来の伝統のわざと技術の蓄積を生かせるわけですし、なんでもかんでもDAC側にUSB入力をつければよいというものでもないと思います。コンピューターの世界と、オーディオの世界をしっかり切り離して分業させることでお互いの強みを発揮させることができると思います。
デジタル部分はこのBridgeのように短期間でこんなに進歩します。一方でDACはデジタルを受けるとはいえやはりアナログ機器ですし、音の個性の形成と作りこみには多年の経験や物量を必要とすると思います。その異なる二者を切り離すのは意味のあることに思えます。

もちろんProtonみたいにインターフェースとDA部分が一体型のほうがロスや接点も少ないし、USB DDCとDACの組み合わせタイプよりクリーンな信号経路が取れます。そこはもちろん生物界と同じくオーディオ界も多様性の良さであって、どちらがよいではなく、選択の豊かさです。
問題になるのはDACにUSBの口がないからPCオーディオに対応できない、つまり時代遅れの機材とレッテルを貼るということです。そうではなく、むしろそうしたシステムを提案できないことが問題になるのではないか、ということだと思います。これはひとえにメーカーだけの問題ではないように思えます。

わたしはコンピューター技術の人ですが、コンピューター業界というものをより理解すれば、システムインテグレーションというキーワードが出てくると思います。すべてのコンピューターを使う人がコンピューターを理解するのは理想ですがむずかしいことです。また、それをやっていると本業がおろそかになり、主客転倒になるでしょう。そこでそれを変わってやってくれるのがシステムインテグレーターです。
PCオーディオもコンピューター応用の一例である以上はこの考えが適用できそうに思います。つまりユーザーとメーカーの間に立ってそれを提案してくれる人ですね。パソコンの設定なんかも広く捕らえるとそうかもしれません。
もしPCオーディオというものが、オーディオとコンピューターのあり方を考え直させるものであるのなら、こうしたいろいろと組み合わせてユーザーのニーズに合わせて提案するという、システムインテグレーション的な側面も必要なのではないかと思います。
posted by ささき at 22:32 | TrackBack(0) | __→ USB DDC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック