昨年発刊されてPCオーディオの専門誌として話題を呼んだ共同通信の「PCオーディオfan」の第2号が発売されました。
前号のPCオーディオfanは雑誌にしては異例なくらいの売れ方だったようで入手難を起したようですが、今回はお早めにどうぞ。
今回は良録音で知られるM.A.レーベルの凄腕エンジニア、タッドガーフィンケル氏によるハイリゾリューション音源がDVDとして付いています。いまうちのPCで聴いていますが、録音の質の高さとともに音楽的にも素晴らしいものばかりで、これだけでもゆうに価格分があると思います。
記事もまさにみっちりと高密度で詰った感じで、初心者からマニアまで読み応えあると思います。前号からもグレードアップされてますね。
わたしも長い記事を1つと短い記事を6つほど書かせてもらいました。
短いのはオーディオテクニカWS70とBT02、フォステクスHP-A7、B&WのP5、VinnieさんのIsabellina HPA、そしてhiFaceです。
そして長いのは「まずはPCオーディオを始めてみよう」です。
コンセプト的には入門記事ということなのですが、一口にそういっても範囲は広いものです。実際に書いてみるといろいろと反省点もありました。はじめは教科書的なものを書けばいいのかなあと考えてたんですが、検討してるうちにそもそもPCオーディオの入門ってどういうもの?という疑問にぶつかってしまいます。
日本で言う「PCオーディオ」という言葉はアメリカでは"computer audio"と言うようです。これはPCというと特にパソコン先進国のアメリカではWindows系マシン(つまりIBM-PC AT系の末裔)のみを指す意味あいが強いので一般化しているからでしょう。わたしもHeadfiで書くときはPCオーディオと書きたいときはcomputer audioと言い換えていますが、コンピューターを使うオーディオという意味では言葉的に同じことですね。
いまPCオーディオがブームといっても、知識のある自作PC派の人たちが静音シャーシにプレクスターとかLynxとか組み合わせ、OSをチューニングして音楽に特化したパソコンを作るって言うマニアックな行為はずいぶん前から行われてきたと思います。
ただこうしてあまりパソコンに詳しくない層とオーディオの世界とを巻き込んで大きなうねりになるというのは、たしかにここ最近と言えると思います。そこが実際はいまの「PCオーディオ」のポイントではないかと思います。
そうしたなかで、たぶん多くの人が迷うのはたとえて言えば、はじめて海外旅行に出た人が勝手がわからなくて戸惑うという感覚に近いのかもしれません。普通にご飯を食べたり、単に買い物するのにもどかしいという感覚です。
いままでCDという手でつかめる円盤をプレーヤーにセットすれば簡単に音楽が聴けたのに、ただ音楽を聴くだけでも、そこに手を伸ばすのがもどかしいという感覚でしょうか。
オーディオの世界から見ると幕末の黒船襲来的に異文化のなんかすごいのがやってきたという見方もできるかもしれません。
ただ外から見ると畏怖する黒船も、龍馬のように咸臨丸に自分で乗ってみれば、それがまったく異質のものではないというのが分かるでしょう。
そういう意味ではまず触れるという観点で書いてみました。
そして悩み多き幕末の後の日本が和と洋を折衷して世界に伸びて言ったように、PCオーディオって言うものをパソコンという文化とオーディオという文化の融合と位置づけるならば、異なる文化の融合がいままでにないものを作り出す可能性があります。
例えば単に楽曲ファイルを再生するだけではなく、Pure Vinylのように従来イコライザというハードで行っていたことをパソコンのソフトウエアで組み替えるというような発想もありますし、もっと考え付かなかったような可能性もたくさん秘めています。それが二つの異文化が融合するメリットでもあります。
もしかするとパソコン苦手意識の強い人はコンピューターというものに抵抗感をもって冷たいものと考えているかもしれません。
しかしそれはいささか心外ではあります。ひとつは前にこの記事で書いたようにデジタルというのは冷たいものではありません。人間もいわばデジタルデータから作られます。またアナログというのは日本語で言うと「相似」のことで、デジタルは「数値表現」のことですから、よく言われるような「断続と連続」のように相反する概念ではありません。デジタルとかアナログというのは単に表現方式、ものの見方に過ぎません。
もうひとつとして、わたしが最近よくiPhoneとかiPadがらみで昔のアップルとかダイナブックとか60-70年代あたりのコンピューターの理想を書いているのはコンピューター文化というものが熱くて情熱にみちた人間くさいものだからです。
その同じ時代はオーディオにとっても熱くて情熱に満ちた黄金期だったと思います。しかしそのころはこの二つの文化が大きく交わることはありませんでした。
しかし、いまそれが可能になったわけです。
そうしたオーディオやパソコンの青年期は熱く面白かった時代だったのでしょう。しかし、それらが融合できるといういまは、実はもっとエキサイティングな時代なのではないでしょうか?
そうしてPCオーディオを楽しいものと考えてもらえるのが一番の入門かな、とも思います。
Music TO GO!
2010年04月22日
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