Music TO GO!

2010年04月15日

オーディオファイル向けミュージックプレーヤー(6)  - Pure VinylとPure Music

Macはプラットフォームとしての音のよさの素質はあると思うけれども、プレーヤーの選択肢がWindowsにくらべて少ないのが難点です。特にこのコーナーで紹介してきたcPlayとかXXHiendのようなマニアックな高音質プレーヤーは、MacではAmarraの独壇場かと思ってたんですが、さらなる選択肢も生まれつつあります。
それがこのPure VinylとPure Musicです。

更なる選択肢と書きましたが、Pure Vinylのほうはそんなに新しいものではないようです。そこでまずPure Vinylの方から説明が必要でしょう。また、こちらはPCオーディオが単に楽曲ファイルを再生するものだけではないという興味深い側面をみせてくれます。

1. Pure Vinyl

まずはじめの疑問にお答えしますと、Vinyl(ビニール)とはLPなどアナログレコードのことです。うちでよく書くトッドさんのところ、TTVJのVもVinylのことです。いうならばVinyl Junkieはレコード キチ●イみたいな意味になりますね。
これから推察されるようにPure Vinylはデジタル化された楽曲ファイルを単に再生するミュージックプレーヤーというわけではありません。簡単に言うとPure VinylはLPレコードを使用したアナログ再生のオーディオシステムにおいて、従来ハードで行っていたイコライザの機能をソフトウエアで行うものです。
ホームページはこちらです。
http://www.channld.com/pure-vinyl.html

アナログレコードでは諸特性の問題からいったん録音時にはRIAAカーブという特性をもとに高域強調、低域減衰でイコライジングをして録音し、それを再生時に逆にイコライジングして戻すということをします。しかしハードでそれをやるかぎり歪みやノイズなどの電気的な問題から逃れられません。
そのRIAAイコライジングをソフトウエアで実現するのがPure Vinylです。
そのためRIAAイコライジングをしない前段をパソコンに組み込んで、パソコンの中のPure VinylのRIAAイコライザーソフトウエアで処理するのです。そのあとで普通にアンプに流します(ここがプレーヤー部分になるわけです)。
具体的にはこのSetaプリアンプなどのようにイコライジングしないで出力する機能のある前段機器と組み合わせます。
http://www.channld.com/seta.html

このアイデア自体はPure Vinyl独自のものというわけではなく、Griffin iMicとか類例はあるようです。国内でも探してみると同様なソフトがあるようです。(PureDigital RIAA)
http://www.megaegg.ne.jp/~pure-digital/PD_RIAA.html

またオーディオ以外でもこうしたハードをソフトで置き換えるという例はあります。
たとえばradikoなんかで再びラジオが見直されていますが、古いラジオ技術にも新しい波があります。それはソフトウエアラジオ、SDR(Software Defined Radio)です。これはパソコンをラジオ技術に応用したものですが、インターネットラジオやradikoとはまったく異なります。
SDRは普通のラジオのようにまず電波を受信します。そしてその後段で一定の帯域の電波をごそっとAD変換してからそのデジタル化されたデータをソフトウエアで処理します。これにより隣接局の混信などをハードでやるより効果的に取り除くというものです。従来ハードで行っていたラジオの機能をソフトウエアで行うことにより、柔軟により精密に行えます。またデータをファイルに保管しておいて後で処理することも可能ですので完全なオンデマンド再生ができます。
いままでハードでやっていた部分をソフトウエアで処理することで、根本的な技術革新ができます。

オーディオの話に戻ると、プレーヤーソフトの再サンプリングなんかもそうですが、ハードでできることはソフトでもかなりのところ実現できます。(また逆も真ではあります)
パソコンが高性能になるほどこうした応用が増えてくるでしょうね。いわばアナログにおけるPCオーディオの応用例みたいなものです。PCオーディオって言うのは単にデジタル化した楽曲ファイルを再生するだけのものではないことを教えてくれます。

そのPCオーディオで言うところのRIPを行うような部分がeditorというのですが、この部分のプレーヤーとしての再生機能の音質がとてもよいので、これをミュージックプレーヤーとして使うことができます。
先に書いたように同様なソフトも他にあるので、比較的高価なPure Vinylでは特に音質面に力を入れたんでしょう。

pure_vy3.gif

プレーヤーとしてのポイントはiTunesとの連携機能があり、iTunesで選択した楽曲をamarraのようにPure Vynilのeditorに転送することができます。するとPure Vinyl上でレコードをカッティングするようなアニメーションが現れます。(おそらく楽曲ファイルをメモリー上に展開しているのではないかと思われます)

pure_vy2.gif     pure_vy1.gif

それから再生が始まります。おもしろいのはタグに書かれた曲名やアーチスト名がレコードのラベルに印刷されたように表示され、再生が始まるとクルクルと回転することです。
曲をスキップすることもできますが、音はいいといってもプレーヤーとしての使いかっては今ふたつです。iTunesと連携できるといってもAmarraに比べると原始的なデータの受け渡し程度です。
そこで、、

2. Pure Music

そこでこの音楽再生機能のみを独立させたものが、Pure Music Playerです。有料ソフトですが、Amarraよりはお得です。
リンクはこちらです。デモ版もあります。
http://www.channld.com/pure-music1.html

Pure Vinylに比べるとiTuneとの親和性も増して、Amarraのようにサイドバーとしてitunesの横に張り付きます。ただわたしのつかってるバージョンでは漢字で文字化けする場合があります。
単体ミュージックプレーヤーとしての機能は格段に向上しています。ただしPure Music playerだといったんPureにコントロールが行くと、iTunesに戻すのはプレーヤーをいったん落とす必要があるので、iTunesとの親和性はまだAmarraには及ばずと思えます。

pure_music1.gif     pure_music2.gif

Amarraを意識しているのか、機能の対比表がこちらにあります。Player "A"はAmarraのことでしょうね。
http://www.channld.com/pure-music3.html
再生のための機能設定はかなり詳細で細かく設定できます。なおボリューム位置は上画像の位置が0dBです。一番上はプラスdBになりますので注意ください。

音をAmarraと比較してみると、音質のレベル的にはかなりAmarraに近いと思いますが、一方で個性の違いもあると思います。
Pure musicはAmarraより骨太でアナログライクな方向を感じます。Amarraは比較するとですが良い意味でデジタルっぽいというか、やや冷たさを感じますが上品で洗練された感じがします。

また面白いのは、上記のようにPure MusicはPure Vinylから切り出しただけのように思えますが、Pure MusicとPure Vinylでも音の違いがあるように思えます。
音質的にはPure Vinylの方がPure musicよりもより余裕を感じ、空間表現に勝ります。またソリッドでもっとタイトですがシャープなせいか少しきつめにも感じることがあります。ただPure MusicはPure Vinylよりも少し豊かさに欠けるように思えます。
基本的にはサンプルレートコンバーターやディザリング、メモリー上の再生など両者に違いはないはずなんですが、もしかするともとの成り立ちがPure Vinylの場合はイコライザー込みを想定してるのですこし違うのかもしれません。

上の記事は3月くらいの情報ですが、まだまだ進化しそうなソフトではあります。
Macのプレーヤーソフトもこれからまた増えてくるとこの分野もいっそう楽しみなことになりますね。
posted by ささき at 23:21 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ・ソフト編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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