ちょっと最近忙しくて書けなかったんですが、少し前にWhiplashのバランス対応ケーブルが届きました。
買ったのは最新のTWagではなく、一つ前の旧作SCSCagです。TWagは高いのでもっと安いのはないかと聞いてこれを教えてくれました。この時点では実はわたしはポータブルでやるバランスアンプというのに懐疑的で、それほど期待はしていませんでした。けれど、目新しいのでまあどんなものか試しに買ってみるかという感じでした。だから安いのを選んで買ったのです。ブリッジ接続っていうとスピーカーの世界でもアンプの電源に厳しいので、ポータブルで持つのかとい感じでした。
でもいまは後悔してます。こんなにProtectorとJH13の組み合わせが良いんなら良いものを買っておけばよかったと。
このケーブルとTwagは線材はほとんど同じだそうですが、大きな違いはこちらはソリッドコアなので曲げにくく、曲がりはしますが「針金」っぽい感はあります。
セットアップはiPod5.5G+ALO SXC+RSA Protector+Whiplash SCSCag+JH13です。もともとProtectorの発案はJH13をバランスで使いたいということがあったと思います。HeadfiでもJH13が発売されていらいのひとつの評判はHD800に負けないというものでした。その真偽はともかく家で聞くヘッドホンにも負けないということで、据え置きのバランスアンプで聞くというのはよく行われてました。Protectorの開発はその流れの中にあります。
Protector自体はハイエンドヘッドホンでも鳴らせると思いますが、やはりポータブルで便利なカスタムで使いたいわけです。
バランスコネクターはなかなかしっかりと接続されがっちりと固定されます。
バランスコネクターを接続した状態ではProtectorのシングルエンド(通常のミニ)プラグは隠されるようになっているので、同時にはつなげないように配慮されています。
まず一聴してみてこの圧倒的な音世界に魅了されます。
2005年に始めて初代SR71を買ってからずっとポータブルオーディオにどっぷりと浸ってますが、こんな感覚は初めてですね。単にケーブルが4線になって音場が広いというだけではなくひとつひとつの音の表現と存在感が違います。
シングルエンドで聴いたときには前に書いたように悪くないけどSR71Aなんかに比べると今ひとつぱっとしない感がありましたが、バランスで聞くと完全に別物です。
音場は左右に広いというのはもちろんとして、際立つのは奥行き方向です。例えていうといままでの音像の表現は紙人形の芝居のようなものでしたが、バランスでは自然なボリューム感を持った彫像のようです。普通は奥行きのある立体感というのは、室内楽ならヴァイオリンとチェロの重なり表現のような視点で言うと思いますが、Protectorではヴァイオリンやチェロの音自体に奥行きがあります。これはいわゆる膨らんだ音とは別次元の新鮮な感覚です。
もうひとつ立体感という以上に音の重みに大きな違いをかんじます。Protectorのバランスの音は重みがあり、しっかりとした強さがあります。音の芯がよりしっかりと強固になっている感じもあります。前にも書いたかもしれませんが、ライト級のボクサーのパンチと、ヘビー級のボクサーのパンチの違いのようなものです。
前にも書いたかもしれないというのは、思い起こすとこの感覚ははじめてGS-XでバランスHD650を聞いて、そのシングルエンドとの差というものを一生懸命考えたときのものに似ています。ちょっとデジャブ感がありますね。つまりProtectorではしっかりとバランスの効果が感じられるということです。
Protectorではポータブルでのバランス駆動の世界がはっきりと開けたのが実感できます。
サミュエルズさんは幾多のポータブルアンプの分野ではもちろん、据え置きのバランス駆動アンプでもApacheやB52を製作して、ポータブルとバランスの両分野に多大な経験があります。それがこのポータブルのバランスという分野でもProtectorのような成功作を作れるゆえんでしょう。
もちろんケーブルもストック(標準品)から変えたので、ケーブルの差も大きいと思います。
このWhiplashのケーブルも極めて良いです。シャープだけどきつさがないのがいいですね。音色もきれいでJH13に適度な低域の強さを加えます。音のシャープさを追求したケーブルは得てしてきつく、高域によりがちですが、Whiplashはそういうこともなくバランスがよいようです。
ケーブルも気に入ったのでHM801用にシングルエンドのものも買おうと思ってます。そのときにはもっとケーブルとアンプの違いを切り離して確認できるでしょう。
JH13をいかに変えるかという点で言うと、DNAが変わるというよりは弱点がカバーされている感じがします。低域はUE11みたいにぼこっと量感が増えるわけではないけど、より低域が力強くパンチを感じるのでいままで弱いと思っていたロックやポップにも気持ちよさが出てきます。いままでよかったピアノトリオなんかはさらに良く、リアルさの向上が感じられます。
JH13はどちらかというとUE18などより弱いと思っていた空間表現がこのセットアップで改良されるのも魅力です。音色のニュートラルさなどはかわりません。
Hifiman801がハイエンドのPCM1704をもちいて、ポータブルオーディオのソース部で変革をみせたように、Protectorはアンプの部分でもまだまだ変革が可能だということを教えてくれますね。
Music TO GO!
2010年04月13日
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