Music TO GO!

2010年03月03日

フェーズテックのAsync方式USB DAC HD-7A試聴しました

本日はまたオーディオ評論家の角田郁雄さん宅の試聴室にお邪魔して、興味ある新製品の試聴をしてきました。
それは発売されたばかりのフェーズテックの新型USB DAC、HD-7Aです。ホームページはこちらです。
http://www.phase-tech.com/digital/productspage_HD-7A.html

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*HD-7Aについて

HD-7Aは最近わたしも良く書いているAsync転送方式を採用した新世代のUSB DACです。フェーズテックでは「USB Async データフローエンジン」と呼んでいます。
DACのI/V変換には独自のプッシュプル・カレントミラー方式PPCMC(特許出願中)を採用しているとのこと。DAチップは電流出力ですが、オーディオ機器は電圧変化を信号として必要とします。その変換を行うのがI/V変換です。違う形に変換をするわけですからその変換精度がDACのアナログ的な音のよさと密接に関連します。

DACはデジタル機器であると同時にアナログ機器でもあり、Async方式とこのPPCMCで、その両方のポイントを抑えているというわけですね。またデジタル・アナログのアイソレーション(分離)をきっちりと行っているとのことです。
DACチップはPCM1794のデュアルで、ビクターの開発したK2を使ってビット幅の拡張も行っています。これはフロントパネルのスイッチで簡単に切り替えて効果を確認できます。

また外部クロック入力(外部10MHz専用)があり、外付けのルビジウムなどの高精度クロックも接続できますので、ハイエンドの機器にも容易に対応ができます。
HD-7Aのもうひとつの面白い点は外部クロック入力だけでなく、ワードクロックジェネレーター機能内蔵しているのでクロックの出力もあるということです(SPDIF入力時のみ)。
これはどう使うかというと、HD-7A自体を外付けクロックに見立てて、外部クロック入力のあるCDトランスポートにクロックを供給することで、CDトランスポートとマスタースレーブの関係になることができます。DACとCDトランスポートでクロックを共有できることでDA変換をより高精度で行えるわけです。
例えば下の例ではChordのCodaからSPDIFデジタルを入力して、同時にCodaにクロックを供給しています。またこのときにも外付けの外部クロックからさらに高い精度のクロックを得ることができます。

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(HD-7Aの背面パネル)

つまりUSBを使ったPCオーディオでも、普通にCDプレーヤー(CDトランスポート)を使ったオーディオでも両方とも高品質な対応ができるということですね。

シャーシもメカニカルアースを使用していたりと、細かいところはかなり盛りだくさんで練り込まれた特徴を備えています。

*試聴に使ったのはアンバランスモデルですが、バランスモデルもあるとのことです。ただしこちらはコネクタのみバランス(XLR)です。
これはDAC-プリ間などの短い接続では、回路をアンバランスで作った方がアンプの段数を減らせて鮮度を高められると言う点によるとのことです。

*試聴記

IMG_1210.jpg

角田さん試聴室のフォーカルのスピーカー、アキュフェーズのアンプにわたしの持参したMacbook Airに搭載したAmarra miniで再生しました。
上の写真では左からMac Air、Chord Codaとフォーカル、HD-7Aです。
基本的にはMacからUSBで鳴らして、少し参考に上のマスタースレイブ方式で接続したCodaをCDで聴きます。

いろいろとソースを変えて試聴しましたが、このようなハイエンドシステムの性能を存分に引き出し、録音の差を忠実に再現する高い再現性能がありながら、音はなめらかできつさを感じるところがありません。分析的と言えるほどのシャープで細かな表現力をもちながら、リスナーを没入させる音楽性を併せ持つと言う感じでしょうか。
この辺はAsync転送とか凝ったIV変換などの新技術を、リスナーに優しく使用していると言う感じで好感が持てます。

オーケストラのトラックではスケール感と奥行きの深さに圧倒され、器楽曲では楽器の持つ細やかな質感表現が見事です。
破綻がなく、難しい録音もあっさりとこなしてしまう優等生的な点も感じられました。

機能的にはK2をライセンス利用した4倍アップサンプリングと20 bit拡張機能をワンタッチでフロントパネルから切り替えができ、効果もすぐ分かります。厚みや豊かさが実感できますね。

CDでの再現力も高く、Chordの精緻で自然な音を驚くほど引き出してくれます。ソース機材の個性もよくわかると言う感じです。CDでも良い音がなるので、良いオーディオを持っているけどPCオーディオにも手を出したいと言う人にも良さそうですね。

*Async方式対決

実は比較用にWavelengthのProtonも持って行きました。Async方式と言うことで比較してみようと言うわけです。
Proton単体で聴くと値段の割に満足感が高いと思うけれども、HD-7Aと比べるとやはり値段なりの差があるか、とうならされました。Protonも良いけどHD-7Aと比べるとスケール感がなく痩せて聞こえます。
やはりHD-7Aの方がひと回りかふたまわり音が良いですね。

ただ感じたのは共通する個性もあって、全体にどちらも滑らかさ、暖かみという共通の言葉があるように思います。これがAsync転送的な滑らかさだなとちょっと思いました。
デジタルが硬い、とくにUSBなんか、と思う人はちょっと試してみて欲しいところです。

Async転送のUSB DACとしてのAyreやWavelengthとの大きな違いは、それらがUSBレシーバーとしてTIの1020Bを使用しているのに対して、HD-7Aは日本のメーカーであるルネサス・テクノロジーの新しいチップであるM30245を使っていることです。1020Bが出たのは2002年頃と古くてバッファも小さく扱いにくいところもあるそうですが、これは最新型のチップを使っているわけです。
またAsync転送のUSBで外からクロックを入れられるのはこれが初となります。


なかなか音もよく機能も豊富で注目に値するUSB DACと言えるのではないでしょうか。値段も良い線ですね。
3/6開催のPCオーディオ展には出展すると思いますので、こられる方はぜひ聴いてみてください。
posted by ささき at 23:20 | TrackBack(0) | __→ USB DAC全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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