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2009年08月16日

須山カスタムIEM FitEar Private 333 レビュー

カスタムイヤホンというと外国製品がほとんどですが、須山カスタム(FitEar)は国産のカスタムIEMとして知られています。

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これまでのラインナップはプロ用途を念頭に置いたものが多かったということですが、このPrivate 333はコンシューマー用に考えられた最新モデルです。
須山さんのカスタムイヤホンはモデル番号が数字で示されていますが、それぞれに意味があります。333とは3Way、3ユニット、3ドライバー(レシーバー)という意味です。これはたとえばWestone3のように3Wayであってもハイとミッドがひとつのユニット(TWFK)で兼ねられている場合もあるからです。つまりWestone3ならば須山さん流に言うと323、ES3Xは333となります。JH13は336ということになりますね。

使用感について

フィットはわたしがいままで試したUE11/ES3X/Freq show/Sleek customのすべての中でベストだと思います。
わたしはすべての耳型は須山さんのところで取っています。つまり個体は厳密には違いますが、ほとんど耳型自体はすべて同じようなものでした。それを考えると須山カスタムのレベルの高さは伺えます。

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333はぴったりと耳に吸い付くようにはまり、動いてもずれません。また、遮音性もきっちりしています。耳型を同じところで取っていても、シェルの製作に違いがあるのは興味深いと思います。シェル自体もJH13のように気泡がはいることなく、きれいなものです。
小さめのシェルはコンパクトで良く、取り外すときは耳下に親指の爪をかける切れ込みがあるという点もなかなか細かい工夫です。下の写真で指をかけているところです。

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また333の特徴は音の出るポートが3つ別にドライバーごとに分かれていることです。それも上の写真でよく分かると思います。
他のほとんどのカスタムは3Wayであってもポートは2つです。シェルの出来のよさとあわせてこの辺は須山カスタムの造形におけるアドバンテージがあります。

ケーブルに関してはちょっと取り回しに困り、わたしのものはメモリワイヤがないのも少し不便ですがこの辺はまだ改良されると思います。

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音質について

全体的な音の印象は忠実性というよりは演出感を重視して、あくまで正しく音楽をモニターするというよりは、楽しく音楽を聴くということを重視しているようです。
高い音を中心に繊細で音色がきれいな華やかさと、強調間のある低域を中心としたダイナミックなインパクトも兼備えてある、という感じです。きれいなシェル造形のように、音の透明感もなかなか高いと思います。

この他に333で感じるもうひとつの音の特徴としては重なり合う立体感
のある空間表現が特徴的だということです。音と音の重なりが絡み合う様が明確に分かり、音の混濁感がありません。
音場の横の広さはUE11ほど広くはないけれども、この独特の立体感で空間表現が豊かに聞こえます。
ここは3ポートの効果なのか、他の高性能機にはない独自の良さだと思います。複雑な音の波をうまくさばくのが得意という感じで、高性能なアンプと組み合わせると、複雑に絡み合う音の再現に感銘します。

基本的な性能面でもなかなかよく、解像感は上から下までかなり高く感じられます。ウッドベースのテストとなる前に書いたhandsでもベースの音は生々しく、楽器だけでなく背景のプレイヤーの息遣いも細かくうき彫りにします。
高域の繊細さはかなり高く、ベルの音のきれいに伸びた響きは鮮明です。きつさはP-51では気になりませんが、シャープさがあるので聴くほうの環境にもよるかもしれません。


前述したように低域は強調されていますが、これはコンシューマー向けとして意図的なものでしょうし、ロックなどのインパクトには寄与しています。たとえばJH13のように正確性優先なタイプだとロックポップでものたりないところは333では過不足なく感じられます。
強調されているといっても、ジャズトリオの軽快さを損なうようなこともありません。またインピーダンスの違いかJH13などに比べると特に低域で緩めに感じられるところはあります。
アンプについてはUE11ほど依存されるわけではありませんのでiPod単体でもわりと悪くはありませんが、P51のようなアンプをつけるとドラムの音の締まりが見違えるようによくなりリズムのきざむ小気味よさが大きく改善されます。

J-Popのような音学は得意で、今風の複雑なアレンジで音が複雑に絡んでいても、混じらずに整理して楽曲の構造が見えやすく、低域のパワフルさがあり音楽にノリよく没入できます。
全体にポップ、ロック向けに上手くチューニングされているが、いろんなジャンルにもあうようにバランスよく設計されているところもあります。全体的なレベルも他社の高性能機と比較できるようなものを持っています。
きれいな繊細さと技巧的な複雑さ、それにダイナミックさを兼ね備えています。特にP-51とSXCケーブルとの組み合わせでは華やかで演出的なきらびやかさを堪能できます。
アンプはやはり低インピーダンス傾向のようなのでUE11と似てP-51、ALO SXCとiModがわたしは好みです。ただUE11ほどはアンプ依存がないので、DAP直でも楽しめると思います。

333c.jpg

きれいなシェル造形、指かけや3つの独立ポートなど日本製らしい芸の細かさもありますし、音の傾向もPrivateというプロではなくコンシューマー向けとしてよく考えられています。
ちなみにFit-Earのページは最近リニューアルされて、こちらのアドレスです。
http://fitear.jp/music/
須山さんのカスタムはまだ正式発売という形を取っていませんので、興味のある方はこちらから問い合わせください。
posted by ささき at 21:32 | TrackBack(0) | __→ 須山カスタム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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