Music TO GO!
2009年07月09日
Hisound audio AMP3 - オーディオファイルのためのDAP
ポータブルアンプもだんだんと珍しいものではなくなりつつありますが、やはり外付けでアンプを足すよりもDAPだけでコンパクトに済ませたいと思う人も多いでしょう。
多勢を占めるiPodも単体での音質的にはいまひとつとはいえ、巷にそれなりに音がよいと広告するDAPはあっても結局は似たようなものでオーディオ好きな人が買うにはまだ物足りない、というのは悩みかもしれません。それらは多少クリアであったり、多少広がりがあったりしますが、ポータブルアンプに比べれば根本的なオーディオ機器としての音楽表現には欠けています。
高音質DAPであるHead-DirectのHiFiManはDAPというよりもコンパクトなトラポ/DAC/アンプの一体型で最高性能を目指したものですが、96/24対応とかモジュール構造とか野心的なところも多く、若干手間取っているようです。
もう少し安くて、それなりにコンパクトな音質優先のDAPがほしいという人にはなかなか面白い選択が増えました。
それは中国のHisound audioというメーカーのAMP3です。
ホームページはこちらです。
http://www.hisoundaudio.com/
HeadFiやJabenのフォーラムでも少し前から話題になっているものです。DAP単体で音質がよいということでは海外ではCowen D2が定評があります。ですのでこういうときはD2と比べてどうか、ということになりますが、D2とくらべても頭抜けているという感じのコメントにちょっと興味を持ちました。価格はhisoundによると$210定価のようですが、わたしはWilsonさんのJabenから初期価格ということで送料込み$178で購入しました。サイトには出ていませんが、Wilsonさんにメールするとpaypalで注文できます。
こちらにサイトとメールアドレスがあります。
http://www.jaben.net/
しかしこれDAPなのにアンプか、とか、AMP1とかAMP2はどこに行った、と思ってしまいますが、AMP3は「アンプスリー」ではなくAudiophile MP3 (player)と読みます。オーディオファイルのためのMP3プレーヤーということになります。
AはAudiophile、Amplifier、All-purpose(いろいろつかえる)、Accurate reproduction(忠実再生)、Afordable price(お求めやすい価格)のAをかけているようです。そしてLine-inを持っていてポータブルアンプとしても使えます。
名のとおり対応フォーマットはシンプルにMP3がメインであとはWMA、WAVだけです。とりあえずロスレスはWAVを使えます。
また容量は本体が2Gバイトで拡張にはMicroSDが使えます。これは8GBまで可能なようでわたしはトランセンドのMicroSDHCの8GBを使用できました。
Hisoundのサイトを見るとRockやMasterなどいくつかのタイプがありますが、確認すると現在はひとつのタイプしかありません。はじめからウオッチしていた人はStudioというのがあったのを覚えているかもしれませんが、それがこのAMP3です。わたしをはじめ何人も同じことを聞いたらしく、いまサイトは訂正されています。
ほかは反応を見ながら作っていくそうです。
*Hands on
パッケージには電源アダプタやイヤホンがついてきます。電源アダプタは日本では使えませんがiPod用のアダプタがつかえます。
イヤホンは安価に見えますが音は悪くありません。
実物は思ったよりも作りはしっかりしていて、ちょっと手作り感はありますが、全体に悪くありません。がっしりしていますし、ヘアライン仕上げもきれいです。
上から見るとコンパクトですが、厚みは結構あります。これはサイズに比してかなり大きなバッテリーのためのようです。
プラグは上面にイヤホン出力とライン入力があります。ライン入力にプラグを入れるとポータブルアンプモードになります。底面にはUSB端子とMicroSDスロットがあります。USBでファイルの転送と充電を行います。
マニュアルはホームページのものをダウンロードします。
*音楽ファイル
USBをつなぐとPCからはストレージとなり、音楽ファイルを普通に転送できます。MicroSDは追加ドライブとなります。
音楽ファイルはAMP3を立ち上げたときに自動的にデータベースの更新が行われ、追加されたファイルのID3タグをなめてデータベースの更新をするようです。このとき追加ファイルはフォルダーをつくってそれに入れてもかまいません。ただしそのフォルダーでは階層をたどることはできません。あくまでタグベースになります。
ジャンル、アーチスト、アルバムで階層がつけられ、データがないとUnknownになります。また、歌詞ファイルを使用することもでき、歌詞を表示できます。
*機能
AMP3は音楽再生のほかにFMやE-bookの再生ができます。録音機能もマニュアルにはかかれていますが、これは今のモデルにはついてないようです。FMは86-108ということで、日本の76-108に足りませんが、頼めばカスタマイズ可能ということです。
音楽再生はランダム、リピート、全曲リピートがついています。曲の選択はさきに書いたようにメニューから階層で選びます。ただし表示の液晶が小さいので(長い曲はスクロールしますが)、ちょっと選びにくいとはいえます。
またサブフォルダを使ってなかにファイルをいれて整理することはできますが、Rockboxのようなディレクトリを意識した階層の移動はできません。基本的にMP3タグがないと選曲はちょっと不便になりますので、WAVを使いたいときは主にシャッフル(random)モードで使っています。
ここに書ききれない機能も多く、小さい割には結構多機能です。操作キーは十字のみで最小ですが、多くの意味をもたせています。たとえば中央の再生キーはクリックするとプレイ/ポーズ、長く押しつづけると電源オン/オフ、その中間でメニューの表示、という感じです。この中間の長さで押すというのがはじめはわかりづらいかもしれません。しかし、慣れると問題なく使え、反応もわりと遅くありません。
基本的にはルートメニューにMusicやFM、設定などがあるので曲が表示されている状態(電源投入後の初期状態)でクリックよりちょっと長めに再生キーを押すとルートメニューに移行します。そこでタグによる階層をたどるときはMusicメニューを左右キーで選択し、ジャンル、アーティスト、アルバムでたどっていけます。リピートやランダムを設定するには設定メニューです。
なんと日本語対応もして、曲もMP3タグに書かれていれば日本語で表示が可能で、メニューも漢字やカタカナで日本語表示ができます。ただフォントはちょっと中国風です。
ちなみにLCDに見えているNaturalというのはイコライザではなく、以前Studioといっていたこのモデルのことのようです。イコライザはついていません。
*音質
肝心の音質ですが、たしかにぱっと聞いてかなりアンプっぽいきりっと締まって贅肉のない、活力のある音です。しっかりした芯がありDAPで聞く音とは一味違います。
解像力があり、シャープで音が明瞭に聞こえます。音の広がりもよく、パンチもあります。そしてAMP3のよいところは鮮度感があり音が生き生きとしています。これが市販のDAPとは差を分けるかもしれません。わたしはMP3って最近は忘れるくらい使ってませんでしたが、AMP3で聞くとMP3もなかなかいいかな、と思わせてくれます。(320k推奨です)
下記のような相性の良いヘッドホンやIEMだときりっとしてしっかりした芯のあるシャープさとダイナミックさを聴かせてくれます。前はStudioといってただけあって、全体的にかなりフラットです。
左:付属イヤホン 右:ESW10JPN
ただ問題はUE11やES3xだとヒスがやや大きめなところです。HD25とかESW9/10あたりだといいかなというところで、YUIN PK1/OK1だと本当にすばらしい音質がこんな小さいDAPから出るとは思えないくらいです。付属のイヤホンもなかなか悪くありません。
またHeadfiにも追加で書いたんですが、最近記事を書いたzinoとあわせると相性がかなり良いです。zinoのちょっと低めの能率とくっきりとした明瞭感がよくAMP3とマッチします。シャープでかつダイナッミクです。
左:zino 右:Quattro
それとJabenの新型IEMのQuattroにも良く合います。Quattroはまたそのうち別に書きますが、ベースポートで低音の加減ができるIEMです。タイプ3だとかなりシャープに再現できます。低域は3では軽めになりますが、深くは出ています。低域が足りないときはベースポートで調整できます。カナルタイプだと前に書いたRE1もいいですけど、AMP3の細かさ表現にいまひとつ足りません。Quattroはなかなかこの点でもいい感じです。おそらくER4Sにもよく合うと思いますが、まだ聴いてません。
またLine-inにつないでiModにポータブルアンプとして使ってみると、AMP3単体よりさらによい音が出るので驚きます。アンプ部分はなかなかの性能のようです。DAPにDAPを重ねるという図もかつてなかったですね。
ラインインにケーブルを差すだけでポータブルアンプモードに自動的に移行します。
*オーディオファイル向けDAP
いろいろ課題もありますが、このパッケージでこの音はたしかに魅力的です。キーは相性の良いヘッドホンを見つけることで、相性の良いヘッドホンとAMP3のコンパクトな組み合わせは驚くほどの音を聴かせてくれます。
某大型量販店の店頭で同じIEMを使って、大小メーカーの最新の市販DAP群と比べてみましたが、異なる音源で店頭試聴とはいえ差はあきらかでそれらとはひとレベル異なり、多少差はあれAMP3に比べればそれらは音がゆるくあいまいに感じられます。
AMP3は厚さを犠牲にしても小さなボディーにあえて1800mahという大きな電池を積んでいるというのも好感がもてます。これは再生時間のためもありますが、オーディオの基本はやはり電源です。ポータブルアンプを外付けでつける利点の一つもDAPとは独立したしっかりした電源を供給できるということです。HifiManもきちんとした電圧の高い電池を搭載して電源を考慮しています。
これにたいして市販のDAPの多くは売れるためのスタイルとコンパクトさのためにちっちゃな電池を積んでさらに長時間再生をうたってますから、それでナントカ回路を搭載したから音質優先ですといわれても、、という感じです。
そういう意味ではAMP3は単に音質優先というよりもオーディオファイル向けのオーディオ機器らしいDAPといえるでしょう。
大きさがHP-140位でもよく価格も高くてもよいから最高の性能と96/24サポートを得たい人はHifiMan、もっと手ごろで小さいものを望む人はAMP3という切り分けもできます。
HifiManとあわせて今年は高音質DAPの年となりそうです。ポータブルオーディオもまだまだ発展の余地がありそうですね。
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