Music TO GO!

2006年01月07日

ハリーズゲームのテーマ - クラナド

レクサスGS430がハイウェイを走る姿を俯瞰するCMで流れる女性ヴォーカルとコーラスが印象的な曲、これはエンヤが在籍したことでも知られるクラナドの「ハリーズゲームのテーマ(Theme From Harry's Game)」です。曲のもつ重厚なイメージをレクサスの高級なブランドイメージとオーバーラップさせるというのは以前に書いたゼロクラウンで使われたジョン・ハールの"How should I my true love know"にも通じるとも思います。
とはいえ、この曲はアイルランドの紛争をテーマにしたBBCのTV番組で使われた曲ですので多少場違いとはいえます。レクサスのCMに使われたのはレクサスがトヨタの逆輸入ブランドであり、北米市場で以前GMだったかがやはり「ハリーズゲームのテーマ」をCMに用いて成功したという事例を参考にしていると思います。そしてその「ハリーズゲームのテーマ」のCMがクラナドを世に知らしめたともいえます。

アマゾンのサイトで試聴できます(二曲目です)

クラナドはアイルランド出身のアイリッシュトラッド系バンドですが、伝統的なトラッドよりもむしろロックやジャズを取り入れた現代的解釈で演奏をします。スティーライスパンなど電子的アレンジを取り入れた初期の試みに比べてもトラッドバンドとしてはより先鋭的な方であるといえます。クラナドはリード女性ヴォーカルのモイア・ブレナンを中心として活動していました。
昨年末にリマスター盤がレコミンツにかなり出ていたので、持ってなかったアルバムを何枚も一気に買い込んでメジャーデビュー以降のものはだいたい揃えました。こうしていくつものアルバムを通して聞くとクラナドの傾向がロックにむいたりトラッドにもどったりジャズっぽさを取り入れたりと変遷はありますが、ゲール語(アイルランドの古語)のこだわりは一貫していることにあらためて気が付きます。

クラナドというグループ名自体がゲール語で「家族」を表すということで、実際に家族・親族で構成されたバンドです。
そしてその家族のひとりにエンヤ(エンヤ・ブレナン)がいました。エンヤはクラナドのヴォーカルのモイア・ブレナンの実妹です。実際にエンヤはクラナドの一枚(一説には二枚)のアルバムに参加しています。またエンヤもデビュー当時のアルバムにはゲール語で歌う曲がいくつかあります。
ブレナン一家の生まれたアイルランドのグヴィドーは"ゲールタハト"と呼ばれるゲール語を第一言語とする地域でそうした中でクラナドのスタイルは形成されました。

ベスト版の表題曲の"In a life time"ではU2のボーノがデュエットでも参加しています。良く知られるエピソードとしてボーノが交通事故で入院しているときにこのゲール語で歌われる「ハリーズゲームのテーマ」を聞いて気力を回復したといいます。
ハリーズゲームのテーマはさきに書いたようにBBCの番組の音楽でした。もともとTV局は別の曲を使う予定でしたが、それはスコットランドの曲なので使いたくないとわざわざ書き下ろしたものといいます。
またハリーズゲームのテーマは映画「パトリオットゲーム」でも使われています。これはテーマ的にはよくわかります。映画というと「ラスト・オブ・モヒカン」のエンディングテーマでもクラナドの"I will find you"が使われています。この中ではチェロキーやモヒカンなどネイティブアメリカン(インディアン)の言葉も使われています。これは監督がクラナドのファンであったということから使われたらしいですが、ゲール語で歌ってくれという監督の要請はふさわしくないと断ったといわれます。その時代にはアメリカ大陸にまだアイルランド人が移民していなかったからです。
クラナドはロビンフッドを扱ったTVの曲も書きましたが、そのときもゲール語は使いませんでした。なぜならロビンフッドはイングランドの話だからです。

このゲール語への特別なこだわりとともに、この辺の事情には日本人がふつう単に「イギリス」と呼んでいる国のことを知らねばなりません。この前わたしのいる部門にイギリスから出張者が来ましたが、かれは自分の国のことを呼ぶときは「UK」と呼んでいました。
UK(United Kingdom)はイングランドとスコットランドとウェールズと北アイルランドから構成される連合国家です。これは日本人が考える州や県のようなものよりも独立心が強くて、有名な北アイルランドだけでなくスコットランドでも独立運動というのはあります。以前みたイギリスの映画でもスコットランドの若者がアメリカに行くのですが、そこでアメリカ人が"Are you English?"と聞くと、"I am Scotish"と言い返すというシーンがありました。
しかし実際はイングランドを中心とする政府が力をもって"英国文化"にアイルランドも統合しようとしているわけですが、クラナドのメンバーはゲール語を自分の生まれた土地の象徴として歌っているわけです。そのせいかクラナドはグリーンピースとも接近するなど思想性が強い側面があります。(アルバムのひとつ"シリウス"はグリーンピースの船名でもある)
そうした思想性が薄くポップ志向でメジャー適合性に優れているエンヤは一躍世界的な地位につきましたが、ある意味融通の利かないところのあるクラナドは音楽活動で疲弊してしまい現在では活動を休止してしまっているようなのが残念です。

ちなみにクラナドがメジャーデビューする前のアルバムはLINNレコードから出ているというのも付け加えておきます。またモイアブレナンはソロでもいくつかアルバムをだしていて、こちらもお勧めです。



posted by ささき at 00:36| Comment(3) | TrackBack(0) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私、ケルト系の音楽聴きだしたのは最近なので全然詳しく無いですが、Theme From Harry's Gameは持ってます。エンヤのイメージに近いですね。
でも、私がケルト音楽に興味を持ったのはリバーダンスのDVD見てからなので、今のところはリバーダンスのCDが一番のお気に入りです。少しづつ集めていくつもりです。
アイルランドの音楽を、メイド・イン・アイルランドのヘッドフォンで聴くのはけっこういいかもってことで(笑)、HD25の方に小さな報告をさせていただきました。
Posted by ひっちょ at 2006年01月07日 19:37
リバーダンスというとビル・ウィーレンでしたね。わたしはリバーダンスは持っていませんが、彼の音楽は他にいろいろと持っています。
またそのうちにそちらの方も紹介いたします。
Posted by ささき at 2006年01月07日 20:14
ぜひお願いします。
情報が少ないものですから。
Posted by ひっちょ at 2006年01月08日 21:51
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