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2009年02月05日

JohnBlue JB3 、小型スピーカーの探究2009

小型スピーカーの探究ふたたび

PCシステム用のスピーカーとしてはAudioengine 2で十分に満足していたのですが、これもやはりCardDeluxeの導入で音を突き詰めてもう少し行けるんではないかと感じ始めました。Audioengine 2はアクティブスピーカーとしてはかなりよく出来ているんですが、いかんせんアンプ一体型のアクティブスピーカーではやはり限界があります。
そこで高性能のNuForce Iconをアンプとして、パッシブスピーカーを探してみることにしました。小型スピーカーの探究2009と題しましたが、候補は2008年のラインナップを中心にしています。

Iconと組み合わせる小型のスピーカーというとS-1がすぐに思い浮かびますが、もう少し性能的に上を狙いたかったのでとりあえずS-1は置いておくことにしました。また思ったよりもS-1が大きかったので、このサイズを許容するならばもっと選択肢があるのではないかと思ったこともあります。B&WのM-1も当初考えたんですが、バナナがつかないという問題があります。あとは定番のEntry-Siなんかもありますが、こうしたあたりはスタンダードではあるけれどもそれゆえに少し食傷気味ではあります。

ひとつの候補としてはわたしは47研究所の4722とか、パストラルシンフォニーのCZ302ESのような大村氏ユニットが好きなので、大村氏自身が設立したAMMラボの新型ユニットを採用したAMM-105に興味があります。これは音がまだ未知数であるということ、また価格がやや高いのでこのクラスだと試聴してから買いたいものです。
このクラスだとPCスピーカーとしてはオーバースペックですが、今回のスピーカー選びについてはPCスピーカーの単なる代替というよりも、CardDeluxeの項で書いたようにサブシステム的なものを組みたいという気もあるので、このくらいのクラスのものも選択肢としては残しておきたいと思ってます。
これについてはまた別に検討ですね。

そうするとわたしとしてはやはり海外に目が向きます。しかしスピーカーを輸入するときの問題点は輸送費です。
スピーカーはけっこうかさばって重いので、価格が安くても送料が高くついてしまいます。前から気になっているのはいくつかあるんですが、小さくても重いので少し困っていました。

JohnBlue JB3

jb3a.jpg

そこで目を付けたのがこのJohnBlue JB3です。
これは台湾のメーカー製です。Nuforceも広い意味では台湾系ともいえるので、台湾製オーディオもなかなかレベルが高いものがあります。
型番の3は3番目のモデルではなく3インチ(約7.6cm)のユニットであることを意味します。JB3はこの名の通りに3インチのシングル一発を使ったフルレンジの小型スピーカーです。他には4インチのやや大きいJB4や8インチのフロア型、JB8もあります。4インチだと約10cmで、このくらいがふつうは小型フルレンジの代表的なものでもあるので、それよりも小型ということはかなりコンパクトなモデルといえます。
JB3はペアで$350と価格も安く、大きさもAudioengine2よりやや大きいくらいで、重量もさほどではないのであまり送料もかかりません。
デザインした人はけっこう有名な人らしく、技術コンサルタントにはリッツ線の発明者などもいるそうです。
前モデルであるJB4は真空管向けに作ったそうですが、JB3ははじめからコンピューターに使われることを想定して音がきつめにならないようにしたとのことです。

メーカーホームページはこちらです。
http://www.johnblue-audio.com/

もちろん価格が安く小型なだけではありません。
かなり音質的な評価が高く、特に6moonsで年間アワードを受けるほど性能に対する評価は高いといえます。6moonsは王道のStreophileとはまた違ったマニアックな視点で選ぶので、ちょっと興味を得ました。

6moonsのレビュー
http://www.6moons.com/audioreviews/johnblue/jb3.html

購入はAudioengine2と同様にALOのKenさんのところから買いました。もともとKenさんのリストから選んだわけではなくて、JB3を選んでからGoogleで検索して通販先を探したんですが、そこでALOでも扱っているのを見つけました。さすがけっこう注目されるものはチェックしてますね。
色はピアノ仕上げの黒でなかなか精悍で価格よりも高く見えます。他には赤と白もあります。

jb3c.jpg

Audioengineよりやや大きいけれども、重さはかえって軽く感じるくらいです。いずれにせよデスクトップスピーカーとかPCスピーカーといっても違和感ないくらいの大きさには収まっているという感じです。また、Audioengineと違ってサランネットがついてきます。
しかしAudioengine2が小型ながらツィーターとウーファーに分かれた2Wayだったのに対して、シングルユニットのJB3は一見ダウングレードにも見えてしまいます。はたしてそうでしょうか。

JB3とフルレンジ

jb3b.jpg

JB3はシングルのフルレンジユニットですが、写真からわかるように少し変わった二枚羽のコーン(内側は黒)とジェットエンジンのようなセンターキャップに目が惹かれます。二枚羽のコーンは一見して同軸ユニットにも見えますが、同軸2wayではなくWhizzerコーンというものです。これは別個のドライバーを持つのではなく、小さなコーンがメインのコーンと同じマグネットに直接ついているものです。利点としては高域再生に有効と言われています。日本ではダブルコーンやサブコーンと呼ばれていますが、DIY用のユニットなどでは特に珍しいものではありません。また新しいものでもなく60年代くらいのビンテージスピーカー時代からすでにある確立された技術です。センターコーンがジェットエンジンのノーズコーンのようなものは位相変化を抑えるためということです。
またコーン紙自体もかなり軽量なものを使用しているようです。

フルレンジというと上下のレンジがせまく、性能的にはいまひとつと考えられがちです。
しかしその一方で複数のユニットがないので位相差による悪影響がなく、点音源的なので理想的なピンポイントの定位が得やすいという特徴があります。またクロスオーバーもないので電気的にもシンプルで余分な抵抗要素がありません。
フルレンジの問題点は技術的なものよりも「フルレンジ=シングルユニット=廉価品」という商業的なイメージがあるせいだとおもいます。フルレンジのもつ定位のよさとか、クロスオーバーという付加物がないことの利点を積極的に生かす姿勢があればよいデザインを得ることができると思います。そしてJB3はそのよい例になっています。


JB3の音

システムの接続はCardDeluxeのアナログアウトからKimberのHEROでNuForce IconのRCAに接続します。Iconからは付属のCAT5ケーブルでつなぎバナナプラグをJB3の端子に接続します。いうまでもありませんがJB3はシングルポストです。JB3は耳から数十センチの位置に置きます。

実際に音出しをしてちょっと驚きます。
まずこれ音の立体感がただものではありません。audioengine2もかなり音像がピンポイントですけど、JB3に比べると奥行きに欠けています。JB3はかなり三次元的に前後の奥行きを感じます。空間のこの場所から音が聞こえるのが指差せるように思えます。
ニアフィールドで聞くとかなり気持ち悪く、まったくサラウンドの仕組みがないのにサラウンドみたいに聞こえるという不気味さを感じます(笑)。
当然Iconの性能もあると思うけれどもちょっと驚きます。以前47研究所の4722の改造モデルを聞いたときもさすがにシングルのフルレンジと思ったけれども、これも安い価格でよく、と思いますがかえって低価格ゆえのシンプルさでまじめに作ればこういうものが作れるのかもしれません。

次に気がつくのは小さい音がよく聞こえるということで、システムとしての明瞭度が高くSN感が高いと感じます。小さな音が漆黒の背景から少しずつ浮き上がってくるさまがリアルです。このように弱音と強音のレンジの差がとても明確で、音楽のダイナミズムを感じさせます。
小さい音でも音痩せもなく、夜間でもBGMでよく働いてくれるでしょう。
またここまで聞いてきた範囲においては高い方も低い方もかなりよく伸びてレンジの狭さというのはあまり感じられません。特に低音はかなり出るのには驚きますね。
実際に20hzとか25hzの音を出しても、もちろんレベルは下がりますがそれなりに聞こえるのに驚きます。

またJB3は厚みがある豊かな音でオーディオ的な鳴りを楽しめます。Audioengine2はJB3に比べると少しモニター的ですが、もともとAudioengine2は前に書いたようにスタジオモニターをベースにしているのでそれは意図したことです。
Iconをまったくデジタルと感じさせずに良い面だけ引き出している感じがして、音色も美しく感じられます。
Icon+JB3だとまぎれもないオーディオシステムという感じがしますね。


JB3とNuForce Icon

ここでこのシステムの要にもなっているIconの話が少し必要かもしれません。
JB3はスピーカーとしては能率は87dBと現代スピーカーとしては標準的ですが、インピーダンスが6Ωとあわせてややアンプを選ぶタイプといえるでしょう。小さいから鳴らしやすいということはないので、小さくても鳴らしきるためにはやはりきちんとした駆動力が必要です。駆動力というとやや抽象的ですが、アンプの力は出力だけではないのでやはり抽象的な表現になってしまいます。

一般にアンプの低域のコントロールをはかる目安は出力インピーダンスですが、Dクラスアンプの場合はもうひとつ考慮点があります。
通常Dクラスアンプでは増幅後にローパスフィルターを入れてからスピーカー出力につなげる必要があります。これは通常Dクラスアンプで使われるノコギリ波によるPWM変換にともなう高周波の副作用をとるため(ローパスというのはハイをカットするということです)ですが、ローパスフィルターがここにあるとスピーカーの逆起電力などでローパスフィルターの効率が影響をうけてしまうという難点があるそうです。
Nuforceのスイッチングアンプは特許を売り物にしていますが、その特許請求項の利点としてそもそもPWM変換するときにノコギリ波を使わないのでこのローパスフィルター自体も不要になるということです。そのため、Nuforceのスイッチングアンプは特にインピーダンス変動の大きい低域で強みを発揮するというのが隠れた特徴です。IconもNuForce特許の利点を享受しているということなのでやはり同じように低域方向で特に強みを発揮するでしょう。

ちなみにIconの強化電源はかなり効果的です。音がよりびしっと締まり、気持ち悪い立体感がよりいっそう気持ち悪くなります(笑)
これこそニアフィールドリスニングの醍醐味と言えるでしょう。ニアフィールドならではの世界がここにはあります。
posted by ささき at 21:41 | TrackBack(0) | __→ Audioengine 2, JB3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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