そこで、ためしにHEROをメインシステムのCDPのIKEMIとプリのKAIRNの間に使ってみると、これもなかなか良い感じです。ただHEROでは少し粗さが残るので、メインのシステムにはもの足りません。そこでこの機会にKIMBERを試してみようということで、KIMBERでいうと上の下、というくらいの格のOFC系としてSelect KS-1010と銀線では有名なKCAGを中古で探してみました。
双方ともプレミアクラスなので立派なボックスに入っています。
KIMBER Select KS-1010 (RCA)

KIMBERのケーブルは大きく分けて銅のみを使ったもの、銀のみを使ったもの、銅と銀をミックス(GNDと信号線で分ける)したものに大別できます。KS-1010はSelectと呼ばれるプレミアムクラスで銅のみをベースにしたものです。
こちらは工具箱のようなケースに入っています。セレクトシリーズはケーブルを木製のタグ(スタビライザー?)でつないでますが、この裏に方向指示があります。
ちなみにケーブルの中古を買うと方向性に迷うことがあります。方向指示の矢印があればよいのですが、矢印がない場合はケーブルに印刷されているロゴ文字の印刷方向を見て、文字列の頭が来る方が一般に上琉だそうです。
これも分からないときは両方聴いてみて高域が伸びる方が正しい方向だそうですが、この辺になるとよく分かりません。バランスの場合はオスメスがプラグで決まっているので迷う必要はありません。
KS-1010はCDPのIKEMIとプリのKAIRNの間に使いました。ちなみにプリとパワーの間はAudioQuestのAnacondaです。
KS-1010はわりと高価な方のケーブルにしてはかなり味系のところがあって、こうしたケーブルはソースとプリの間で力を発揮すると思います。
HEROに比べると音の豊かさという点で、少しやせていたHEROよりも艶やかで芳醇に聞こえます。HEROよりもややウォーム調でより響きを際立たせるところがあり、美音調です。リファレンス的ではなく味付けをするタイプですが、これがよくLINNに合います。
また独特の音の広がりの豊かさがあり、SP25のスケール感や低域の深さもよく引き出します。フロアタイプもいいかなと思っていたけど、これならブックシェルフでも十分という気がしますね。
このシステムではたゆたうような、音楽に酔わせてくれる、柔らかく音楽的な表現というのがしっくりきます。
聴き手の心をつかむのがうまい歌手が抑揚をつけて情念を込めて歌うようにLINNとSP25は歌います。
Dynaudioというと正確系というイメージもあったりしますが、このSP25はちょっと別で、十分な性能とともに暖かみのある甘さを兼ね備えていて、LINNとあうという点はそのへんです。
前にうちのプリのKARINのレビューを見るために古いオーディオ誌を見ていたところ、真空管で有名な上杉氏がKAIRNに高評価を与えていたのをみて妙に納得した覚えがあります。
KS-1010はよくこのシステムのシナジーを引き出してくれると思います。
こうなってくるとあんまり分析的な言葉を弄してもかえって正確ではないという気がします。客観的にどうこうというよりも、同じ曲を聴きなおしてまた感動したというのが率直なところですね。
KIMBER KCAG (XLR)

KCAGは純銀製ケーブルの代名詞的な存在で、ながらくStereophile誌などの純銀線のリファレンスのひとつといわれていたケーブルです。
みるからにジュエリーボックスのようなスエード調の箱に入っています。
このバランスバージョンのKCAGはDACのPS AudioのDLIIIとSTAXの007tAの間に使いました。
銀らしい透明感と解像感を味わえるという反面でややきつめというレビューもよくみますが、しかし実際に使ってみるとそう痛いわけではありません。
たしかに曲やレコーディングによってはブライトさを感じることがありますが、そういつも感じるわけではないと思います。
この辺は真空管ハイブリッドの007tAを使っている関係にもよるかもしれません。特にOmega2とあわせて流して聴いていると以外と普通に聞ける感じです。ただし404と717などを組み合わせていると、ちょっとどうでしょうか。
そうした懸念をふっきれば、まさに抜けるような透明感があじわえます。
低域が出ないわけではなく、かえって前のオーディオクエストのケーブルよりも低い方まで出ます。
ただ強調感がないという感じですね。おとなしめかというと、そうではなく十分なダイナミックさがあります。
STAXではOmega2、旧STAXのLamda Nove Signature、Sigma Proで比較してみました。
このKCAGはそれぞれの個性の違いを大きく際立たせます。Lamdaのタイトさとシャープさ、Sigmaの独特の音場感、そしてOmegaIIの持つ音楽表現力の豊かさです。
一番銀線らしさが際だつのはLamdaで、Lamdaらしい音のタイトさとシャープさはいっそう際立ちます。Lamdaだと器楽曲はすばらしくシャープでスピード感があります。
OmegaIIが一番普通に銀線と意識しません。Omega2のもつ音楽的な豊かさと包容感をよく引き出します。
Sigma Proも少し銀線らしさはやや控えめになりますが、抜けていく透明な空間表現は前方に配置されたユニットを持ったSigmaならではです。
音の柔らかさと解像力・タイトさを両立させる手として、石のアンプと銅線を組み合わせるという方法と、真空管と銀線を合わせるという両方がありますが、組み合わせの妙というのをなかなか考えさせられます。