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2009年01月24日

Practical Devices XM5 レビュー

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XM5はアメリカのPractical Devicesが製作しているポータブルヘッドホンアンプです。以前XM4というアンプをだしていたのですが、それはどちらかというとエントリークラスのものでした。XM5はなみいるトップクラスのアンプと四つに組むような本格的なものに仕上がっています。

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To Headfiers: English version here

シャーシはいわゆるハモンドケースで標準的なサイズです。電源は9Vの電池が一個入っているだけなので重量もそれほど重くありません。
ケースはRSAのように豪華なカスタムメイドではありませんが、全体に丁寧に作られていてこの種のアンプにありがちな手作り感はそれほどありません。Xinのアンプに比べると細部も丁寧です。

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付属品としてミニミニケーブルが付属してきます。それとマニュアルがついていますが、XM5は機能が豊富でスイッチを押す回数に意味があったりするので、マニュアルは読んだ方がよいでしょう。マニュアルはわたしが日本語版を作成してPractical Devicesに提供しました。こちらにアップされています。
http://www.practicaldevices.com/downloads.htm
ただしこれはあくまでガイド的なもので、正式なマニュアルとしては英語版であるということを記しておきます。

XM5は標準価格が$245でいくつかのオプションを加えていくという構成になっています。
またバッファもカスタマイズすることができます。わたしがここで書いているのはBUF634を追加したタイプです。オペアンプとバッファはソケット式でユーザー交換が可能です。標準のオペアンプはOPA134です。Headfiあたりには627に載せ換えたコメントが載っていたと思います。
また標準的な販売オプションとしてAD8397を使用することができます。AD8397はデュアルなのでアダプタが必要ですが、Practical Devicesのサイトでオプション設定するとアダプタは8397についてくるようです。
ケースは簡単に開け閉めができるような設計です。またオペアンプ交換などのためのケースの開封用に六角レンチも付属しています。このためインチ・ミリで悩む必要がありません。

基本的にパッケージは整っていて、すぐにいろいろと楽しむことができるようになっています。
ただしiPodの人はラインアウトドックは用意した方が良いでしょう。

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1. XM5の特徴

XM5の大きな特徴の一つは機能が豊富なことです。カタログにもこんなに機能が詰まっているものは他にない、と書いているようにバッテリーチェッカーなど細かいものも含めるとかなり機能豊富です。

1.1
Xinのアンプでもおなじみですが、パネル前の上部にずらっと横一列にボタンが並んでいます。XM5は細かいところによく神経が届いていますが、XinのようにI'tsABCと覚えるのではなく、きちんとラベルが付いて分かりやすくなっています。
ボタンは左から「クロスフィード」「ベースブースト」「トレブルブースト」「ゲイン切り替え」「75Ω付加」と並んでいます


クロスフィードは左右の音を適当に混ぜて頭内定位などヘッドホンの不自然な音鳴りを緩和するというおなじみのものです。XM5ではアクティブクロスフィードと呼んでいます。また背面に可変ボリュームがついていて効きを調製することができます。
XM5はクロスフィードボタンをオフにすることでクロスフィード回路を完全に切り離すことができるということです。

「ベースブースト」は低域を100Hzで+6dB持ち上げることができるというものです。対して「トレブルブースト」は高域を1KHzで+3dBできます。
XM5の標準のゲインは12dBです。これはゲイン切り替えがあるアンプではだいたいMIDゲインに相当します。そこからさらに「ゲイン切り替え」で8dB加えて約20dBのハイゲイン相当にすることができます。家で使いたいときにHD650とかインピーダンスの高いヘッドホンでは有効でしょう。
ちなみにマニュアルには+10dBと書いていて、スペックからは+8dBすることに読み取れますが、これはマニュアルの方は単に+10dBとした方が分かりやすいから、ということです。
「75Ω付加」はER-4PにアダプタをつけてER-4S相当にするのに似ています。あまりにインピーダンスが低いIEM(イヤホン)などのときに加えて音をタイトにすることができるでしょう。

それとこれはマニュアルの項を読んでほしいのですが、電源スイッチの押し方でオートパワーオフを何時間行うかが決まり、バッテリーが何ボルトあるかということを示すことができます。単に一回ぽちっと押すと一時間で自動的に切れるので注意してください。
また二つのLEDを同時点灯させて簡易フラッシュライトのようにつかえます。iPhoneでもこうしたアプリがよくありますが、アンプではめずらしいことです。

こうした多機能を制御するため、XM5ではアンプをトータルにマイクロプロセッサで管理しています。

1.2
XM5の二番目の特徴は回路が「モノブロック」をうたっていることです。これは電源系を含めて左右のシグナルパスが完全に分離しているということをいいますが、XM5ではシングルのオペアンプとバッファに加えて、回路設計や電源の左右分離なども優秀なようです。
これはあとで音のコメントで書きますが、XM5はチャンネルセパレーションが良く、たしかにモノブロック構成は効いていると思います。


1.3
そしてこれも特徴の一つですが、なかなか優秀なUSB DACを搭載しています。専用のDACチップではなくUSBレシーバー兼用タイプですが、昨年の夏くらいにこのスペックが変わりより優秀なTIのPCM2702になりました。
これも意外といっては失礼ですが、USB DACを使用したときの性能はけっこう高くて、ちょっと驚かされました

2. オーダーとオプション

さきに書いたようにXM5は基本の価格が$245で、それにオプションを加えていくというオーダー方式です。
まずバッファを選択できます。バッファは電流を加えて出力を高めるもので、音の性能を向上できます。
バッファの項で標準になっているCopper Busbarとはいわゆるバッファをバイパスするジャンパー線のようなもので、バッファなしということです。
BUF634はおなじみの高性能バッファで+$45となります。AD8397オプションはオペアンプとバッファの両方を兼ねられます(AD8397がバッファも兼用できるくらい出力が高いため)。

ホームページはこちらです。
http://www.practicaldevices.com/


XM5は基本的に6Pタイプの9V積層電池ですが、オプションでリチウムバッテリーと充電器のセットを加えることができます。
またマニュアルに充電式ではないリチウム電池について記載がありますが、聞いてみたところ日本ではこちらのサイトの一番下のものを使えるということです。
http://www.ultralifebatteries.com/japanese.php
カラーは青とシルバー(本記事の構成)とブラックを選択できます。

おすすめのオプション構成は「リチウム電池+チャージャー付きで+$25、BUF634付きで+$45」のトータルで$315です。
レビューはこの構成で行っています。また後に書きますが、性能は高いのでこの価格でもコストパフォーマンスは高いと思います。
またあとで書きますが、8397を加えると音の性格を変えることができますので、8397も買っておくと「ひと粒で二度おいしく」楽しめると思います。

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3. 音質について

ここではiMod5.5GとESW10JPNを組み合わせて聴きます。
ケーブルはいろいろ試してみたところALO SuperCottonがXM5の空間表現と切れの良さをよく生かしているように思います。またSuperCottonは銀線にしては柔らかいので、きつさがあったときに緩和できます。
XM5では細かいところに気が配られていますが、気に入った点の一つはアンプ側の入力プラグがパネルの真ん中ではなく、オフセットして少し下に付けられている点です。これはiMod/iPodと組み合わせてケーブルでU字を作るときにかなり楽な配置です。
多くのアンプはあまりこうした点に配慮がなく、U字をつくりにくいものもありますのでこうした点は評価できます。

xm5g.jpg

3.1
まず、ぱっと聴いて印象的なのは立体的な空間表現と一つの音を明瞭に描き出す音像の再現性です。

音の広がりが印象的で、平面的な広がりはSR71Aに少し及ばないくらいですが、XinのSM4のように包み込むような空間的、立体的な表現があるのには驚きます。
これはかなり特徴的で銀系の空間表現が良いケーブルとあわせると特に印象的です。このためクラシックのスケール感もよく表現します。
この辺はモノブロック設計が効いていると言えます。

次に、ひとつの音を明瞭に描き出す力も高く、楽器の鳴りはかなりリアルです。定位もあいまいさがなく、輪郭を明瞭に描きます。音のインパクトもあり、かつタイトでドラムの連打もインパクトがあり気持ち良く聞こえます。性能的には十分にハイカレントであることを感じ取れます。このためなるべくオプションのBUF634はつけるようにおすすめします。


音調はニュートラルでサミュエルズさんアンプのような特徴的なウォーム感で個性を主張する方ではありません。といっても無機的なわけではなく、硬質ではありますが適度に聴きやすい音です。
そのせいか、ケーブルについてもこれ、という決定的な組み合わせがあるというよりも、銀をあわせればかちっとして、銅をあわせれば音楽性に振れるという柔軟性はあると思います。ただ先に書いたように銀ベースのほどよく柔らかいケーブルの方がXM5の空間表現力と音の歯切れの良さを生かせると思います。
わたしのシステムではそうは感じませんが、むこうのレビューではよく高域がきつめとも言われるのでこの辺は少し考える必要があるかもしれません。またケーブルをいろいろと工夫する楽しみがあるアンプとも言えます。
初心者の人は無難に柔らかめのケーブルを選んだほうが良いですし、手慣れた人はきつくないぎりぎりのシャープさを追求するのも面白いでしょう。
それと高域と低域の特性がかなりフラットで全体のバランスが良いということも特筆ものです。ただ少し腰高気味に感じる人もいるかもしれません。これは標準のOPA134での話で、8397ではまた異なります(後述)。

標準の状態で音は十分完成していると思います。
このため、ベースブーストやトレブルブーストのような「香辛料」的な機能スイッチは必要な時に使った方が良いでしょう。ただし逆に言うと標準ではフラットでニュートラルなので機能スイッチも効果的と言えます。
そのため曲や好みによってベースブーストとトレブルブーストの使い分けがきいてくるでしょう。標準ではいわゆるジャズ・クラシック向けと言えますが、ロックやヒップホップなどはこの辺で味付けを変えるといいかもしれません。また低域が出にくい耳かけ式のイヤホンなどにもベースブーストは効いてきます。わたしの手持ちだと後述のYUIN G1とかゼンハイザーのWX M1などで有効です。

他の機種にたとえていうと、音の傾向はMOVEとXinを混ぜた感じです。
MOVEあたりは価格帯も似ているので比較になるかもしれませんが、XM5はMOVEよりも明瞭でシャープ、かつ音の立体的な広がりで優れています。(*わたしのMOVEは初代のもので、XM5はBUF634付き)
この音の切れの良さと明瞭感はなかなかのものです。

3.2 クロスフィード

クロスフィードは標準状態ではMOVEのマイヤークロスフィードの方が良いと思います、これは好みでもありますがマイヤーのものはさすがに盗用騒ぎがあったくらいで、さすがに優れていると思います。
ただしXM5の方は可変できるので、いろいろ試してみるとまた異なってくるかもしれません。

3.3 XM5とIEM

ノイズフロアに関してはUE11で試してみると、MOVEの方が良いと思います。
ボリュームの移動余地も少なく、全体にXM5は少しゲインが高めに感じます。とくにIEMとあわせたときにXM5は少しゲインが高すぎるので3dBくらいのローゲインモードがほしいところです。
こうした点からXM5はどちらかというとIEMよりヘッドホン向けと思います。
ただハイインピーダンスのIEMとはとても合います。ちょっとすごい組み合わせはYUIN G1とXM5で、クリップタイプとはいえ、このイヤホンとはとても思えない音の広がりはだれしも驚くことでしょう。Bass BoostとGain boostが効いてきます。

3.4 USB DAC

わたしのMOVEはUSB DACの性能があまりよくない初代のものですが、いずれにせよXM5のUSB DACを使ってPCとつないだときの音性能はかなり高く、この初代MOVEとは比較になりません。MOVEは試しで一回使っただけで使う気になりませんでしたが、XM5は使ってみたい気になります。
家ではきちんとしたオーディオセットがあるので、たとえば会社で音楽を聴いて良い人ならば会社のPCなどで使うのにも適しているかもしれません。

4. オペアンプの交換について

XM5はソケット式のオペアンプなので、交換が簡単にできます。わたしにも出来たくらいなのでだれにでもできるでしょう。
ただ内部はかなりつまっているので、マニュアル等を参照してコードの処理やボリューム基部のはめ込みなど細かいところに注意してください。

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ここではオプションのAD8397について書きます。8397はデュアルタイプですが、XM5はシングル用のソケットなので、アダプターが必要です。
Practical Device経由だと写真のようにアダプタ付きで提供してくれるようです。この際にソケット部分に1と記されているピンがケース側面に向かって左上に来るように装着します。

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AD8397は十分な電流出力を持っているので、基本的にはバッファはなくてもかまいません。ただしその場合にはバッファソケットにバイパスの結線が必要になります。ただしいまついているBUF634をそのままつけていても大丈夫ということなので、私の場合はBUF634をつけたまま、AD8397を取り付けました。右が8397を取り付けた写真です。

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交換してからAD8397でも聞いてみました。ケーブルなどシステムは3項と同じです。
基本的な音場の広がりやシャープな音傾向は同じですが、8397らしい少し前に出てくるタイプのパンチのある音再現が加わります。低域もよく出て全体にOPA134のときに比べると重心が下がったように感じられます。
また8397にすることで先鋭さがやや薄れ、全体にウォーム感というか少し柔らかさが出てきます。また広がりは良いのですが音像にややあいまいさがあるようにも思います。
ロックや打ち込み系などにはこちらが向いているように思います。また標準だと音がきつめに出る人にもよいでしょう。

反面で標準の134が二つの方が音場の広がりにおいてチャンネルセパレーションがよりよく、音がよりシャープで歯切れがよいように思えます。
ジャズ・トリオなどにはこちらの方が良いように思います。
8397だと普通によい感じではありますが、XM5らしい個性は少し薄れるようにも思いますので、好みにもよると思います。


5. まとめ

簡単にまとめるとXM5は多機能と合わせて性能も高く、コストパフォーマンスに優れたアンプという感じです。独特の立体感もよく音はシャープで個性的な面もあります。

XM5に関しては「モノブロック」という言葉が気になって興味はあったんですが、実際に買うまでにはいたりませんでした。
ひとつはやはり手作り感のあるハモンドケースものはSpiritsなんかでもそうですが、特徴的な音の個性はほめられても、やはり全体的にみた場合にいまひとつトップクラスには並べない、そうであれば結局は使わなくなる、という予断があったということは否めません。

ところがバーンイン方々とりあえずは少し聴いてみようかと聴き始めたところ、なかなか気に入ってしまい、レビュー用のコメントのメモ取りが終わっても、しばらくはXM5をメインアンプとして使っていました。
SR71とかiQubeを越えるとはいいませんが、同列に語るに恥じないくらいの性能の高さと完成度を持っています。
ケースや外装にこだわるよりも中身の良い、質実剛健なポータブルアンプがほしいという人にはお勧めです。
特にUSB DACもなかなか良いので、とりあえず一台買ってPCや電車などいろいろなシーンで使いたいという人にもお勧めです。


そうそう、フラッシュライトモードについてふれるのを忘れてました。
え?そんなのがポータブルオーディオで役に立つかって?
こちらをご覧ください。
http://slashdot.jp/article.pl?sid=09/01/05/1530208
posted by ささき at 00:49 | TrackBack(0) | __→ Practical Devices XM5 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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