Music TO GO!

2008年12月29日

Canto Ostinato - Simeon Ten Holt

Canto Ostinatoはオランダの現代音楽の作曲家であるSimeon Ten holtの代表的な作品で四台のピアノのために書かれています。わたしが買ったのはより簡素化された二台のために書かれたバージョンですが、それでもCDまるまる75分使います。

この曲は二台のピアノがひとつの主題を103ものパートで少しずつ変化させながら延々と演奏します。そして長い時間演奏してきたというのに、最後は現代音楽の多くがそうであるように、ドラマ性を否定したかのように唐突に終わります。
しかし曲は難解なものではなく、耳を傾けるとただ美しい音楽がときには激しく早く、ときには穏やかに心地よく、流れていきます。

You Tubeで二台バージョンの演奏を見ることができます。
(抜粋です)



オスティナートというのは反復を意味する音楽用語で、これからも類推できるようにこの曲はいわゆるミニマルの形態をとったピアノ曲と紹介されます。
ただミニマルというのが目的としているのは反復というよりも音楽を最小単位に分解するということで、それゆえミニマルアートになぞらえてミニマルミュージックと呼んでいると思います。
オステイナートという言葉は古くからあるもので、伊福部昭もオスティナートとタイトルの付いた作品を書いています。
Simeon Ten Holtも伊福部昭もライヒとかグラスのようなミニマル作家よりは一世代前ということで、そういう意味ではこの作品をミニマルと呼んでよいかということは議論の余地があるのかもしれません。

しかしそうした随想を離れて音楽を聴くと、音の波はまるで浜辺に押し寄せる波が同じように見えても少しずつ異なり同じものがないことに似ています。そうして海岸で飽くことなく、押し寄せる波を見ているように音楽にただ身を任せることができます。作曲法がどうあれ、音楽の一つの目的というのはそうしたところにあるのかもしれません。
あわただしかった日々も終わり、年を迎えるのを待っているこの冬の夜に、こうした音楽にゆったりと身を任せるのも良いものです。

下に上げたAmazonのリンクはやや古いのですが、いまだとエムプラスというところが輸入した盤が安く買えると思います(KTC 1367)。
これに興味をもちましたらミニマルピアノ曲の名作というとなんといっても、ライヒの傑作と賞されるSix Pianosをおすすめします。これもYoutubeで探すと曲を聴くことが出来ると思います(演奏ではないのでここにリンクは張りませんでした)。
またやはり有名なミニマル作曲家であるJohn AdamsのHallelujah Junction(Road Movie収録曲)もおすすめです。

          

posted by ささき at 19:14 | TrackBack(0) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック