Music TO GO!

2008年10月01日

Audioengine 2 レビュー

週末に家にいる時などはゆっくりと朝食を取りながらアンプが十分に暖まるのを待ち、ゆったりとLINNとDynaudioで音楽を楽しみます。
平日は仕事を終えて帰宅してからはヘッドホンリスニングをしたりしますが、いまではPC仕事をしながらAudioengine 2で数十センチくらいの距離でニアフィールド・リスニングをするという楽しみ方が増えました。単にPCにアクティブスピーカーをつけて聴くということが、ちょっとした可能性をもたらしてくれるというのは驚きます。

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オーディオファイルのためのPCスピーカー、というよりもオーディオファイルのための汎用アクティブスピーカーと言った方が良いかもしれません。
Audioengine 2(A2)について使用感です。A2についての解説は前の記事をご覧ください
購入したサイトはALOですが、新アドレスで提示しておきます。
http://www.aloaudio.com/store/index.php?main_page=index&cPath=1_3

1. パッケージング

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Audioengine 2の外箱(化粧箱)はそのまま持ち運び用のケースとして使用ができます。
アクセサリーは一通り必要なものはそろっています。ミニミニケーブルはiPodなどのための短いものと、PCなどとつなぐための長いものが二つ入っています。ただしRCA(ピン)ケーブルは入っていないので、RCAプラグから取る時は用意しておく必要があります。
スピーカーケーブルは端末処理なしのものが一対入っています(L-Rの接続のため)。
電源は外付けで100V対応のユニバーサルモデルです。ただメガネプラグなので電源ケーブルは自由に変えられません。

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特徴的なのはすべてのアクセサリーとスピーカー本体までポーチに入っていることです。外箱と含めて外出するための工夫がみられます。さすがに手持ちで運ぶにはきついですが、車のトランクになら楽に入るでしょう。

ちょっと困るのはグリルがないことです。このへんはなぜかプロモニター風ですが、使わないときにほこりを防ぐための工夫は必要かもしれません。
または付属のポーチをかぶせておくと良いのですが、いったん結線してしまうとすっぽりとはかぶせられなくなります。


2. 設置と取扱い

取り扱いについてはあまり注意すべきことはなく、普通のPCスピーカーのように使えます。入力はミニプラグとRCAの二系統用意されています。アンプ内蔵なので、サウンドカードまたはiPodや他のソースから直接接続ができます。

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ただちょっとボリュームが軽いのが難ではあります。また、背面にボリュームがあるので演奏中にボリュームを変えづらいという欠点はあります。
またあとで書きますが、スピーカーケーブルを変えるときに少しポストが小さすぎるという問題も起こります。
電源投入時はプロテクションが働くのでポップノイズはありませんが、少し無音になるのでこのときにボリュームを上げすぎないことに気をつけた方が良いと思います。

設置に関しては少し考慮するところがあると思います。
特徴的な底面のバスレフポート(スリット)がデスクトップと干渉するのか、少しキャビネット自体を斜め上に持ち上げるように底面になにか小さなスタンド様のものかスペーサーがあった方が良いかもしれません。表面はグロス加工ですが、底面には滑り止めのウレタンが張り付けてあります。実際はスタンドのようなもので浮かすとよいと思います。
またツィーターの指向性が少しあるので、その点を考慮して耳の位置にツィーターの延長線がくるようにするとよいと思います。内振りでいろいろ変化するのは普通のスピーカーと同じです。
それと本当にバスレフからの吹き出しのエアはたしかにすごい量です。ちょっと大きな音を出していると本当に扇風機くらいでることに驚かされます。

3. 音

まず驚かされるのはこの小さなキャビネットから出てくるとは思えない堂々たるスケール感です。小さいながらも朗々となる感じです。かといって大味な音に陥ることなく、細かいところもよく描写します。低域も豊かで十分な量感がありますが、それだけではなく適度にタイトな制動と解像力があります。
かなり本格的な音、という感じです。PCスピーカーにあるようなトイピアノのような鳴りではありません。このくらいの高い音質があれば、ふつうのオーディオ用の小型(パッシブ)スピーカーを聴くように真面目にコメントをする気にさせます。実際にそうした数万程度の小型スピーカーと比しても譲らないのではないかとも思います。しかも、A2はアクティブスピーカーでアンプ内蔵という形態です。

ぱっと聴いたときの音の性格は明るく明瞭な感じです。音場も広く若干平面的なけらいはありますが、定位もかなり良く音もスピーカーからではなく空間から聞こえます。アンプのSNも良く、背景が黒く音の形やひとつひとつの楽器をかっちりと明快に描き分けます。
高域もよく伸び、ヴォーカルも透明感を感じさせ歯切れ良く聞こえます。端正な音の伸びが楽器とともに人の声も美しく聴かせます。この辺はゲームなどと合わせても音声・ナレーション・効果音が明瞭に聞こえるという利点があると思います。
リズムの刻みもよい感じで音楽のダイナミックさもよく伝えます。がっしりしたMDFのエンクロージャが利いているのか、音色は響きがつきすぎず適度な正確さがありますが、無機的な感じには陥りません。プロ用のパワードモニターをベースにしているといっても、あまりドライにならない程度に聴きやすいところはあります。サウンドカードやソース機材の良い面をうまく引き出すのではないでしょうか。
音を聞いているとこのサイズや価格が$200程度ということは忘れてしまいます。

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このくらいの力があるならば、いささか本気になってケーブルなどをおごってみたくなってきます。また、おまけのケーブルでは真の力をみせてくれないでしょう。これはRCAインターコネクトでも、スピーカーケーブルでも言えます。
SE200PCI Ltdに付属のRCAケーブル(上の写真)からLINNのブラックに換えたものについては前の記事で書きました。LINNのブラックでもかなり満足できるのですが、LINNのブラックではやや低域のコントロールが不足して膨らみがちであるということと、全体にもう少しいけそうなので、少し先を見たくなります。
そこでRCAケーブルを、コストパフォーマンスが高いと評判で気になっていたKIMBERのHEROを中古で入手してみました。

LINNブラックでもかなり良いと思っていましたが、実際にHEROでは全体がより洗練されて美しさも加わる感覚があります。低域はよりタイトになり、上も伸びます。HEROは高域が弱いということも言われますが、あまりそうしたことは感じられません。全体にとてもバランスがより洗練され、スケール感も加わり、シャープさも増します。
ここまでするとかなりレベルは高くなりますが、さすがにHEROでは価格バランスがオーバーしてしまうのでLINNのブラックでも十分という感じではあります。ただ価格バランス的に見るとそうですが、性能的にはA2はHEROクラスをつけても十分に見あうものがあります。

また、スピーカーケーブルを変えてもかなり音質は向上します。アクティブスピーカーはL->Rの線だけなので、片側だけ変えてもバランスが崩れるのではないかとも思いましたが、そうはならないようです。この辺についてはALOのSXCスピーカーケーブルを含めてまた別に書きます。


低域に関してもう少し書くと、スペックは-2dBで65Hzというこのクラスとしてはかなり欲張ったものになっています(あとで出てくる6010は-2.5dBで73Hzです)。
テストトーンを出すと80Hzくらいは余裕で聞こえますが、それ以降は下がり始め50Hzを下回ると急に落ち込みますので、だいたいスペックどおりに思います。しかし20Hzや25Hzもかすかですが一応可聴できるくらいは出ているのはちょっと驚きます。
実際にコントラバスデュオのSoNAISHでは弦のうなりもよく聞こえ、かなり低い方までよく再現できます。ただし、本当に低い方はさすがにそれほどではありませんが、これはさすがに無理とは言えます。

低域性能が高い反面、テーブル直においてバスレフが面に干渉したり、ケーブルが適度にフラットでないと低域を膨らませることになりますので注意が必要です。Audioengine 2の使いこなしのキーはいかに低域を処理するかということになるでしょう。
このHeadroomのデスクトップシステムのようなスピーカーがあると理想的に思えます。
http://www.headphone.com/products/audiophile-desktop/headroom-speaker-stand-pair.php
キャビネットを上下さかさまにするという手もあるかもしれませんが、さすがに試したくはありません。また意図的にバスレフをデスクトップなどと干渉させて低域の迫力を増すという手もあるかもしれません。

夜間に小音量で聴いていてもきっちりと低い音が出ますし、ツィーターも芯がしっかりあるのでやせた感じではありません。
ヘッドホンで聴いていると集中して疲れてしまうようなときは、こうしてスピーカーを小音量で聞き流しながら楽しむのも一興です。

ここに至るとオーディオシステムとしてもかなり評価できるようになります。実際のところあまり欠点は見つかりません。ただしいくらなんでもこのサイズと価格で限界はありますので、念のため。ただし価格を忘れることは間違いないでしょう。


相対評価をしたいところですが、比較対象がむずかしいところです。プロ用パワードモニターでいうと最近出たGENELEC 6010Aがほぼ同じくらいの小型さとアンバランス入力が使えるので比較になるかもしれません。構成的には6010はアンプが左右モノでバイアンプという点で強みがあります。ただし価格は6010AはA2の2〜3倍くらいします。
GENELEC 6010は店頭で聴いたことしかないので音の直接的な比較はできませんが、明るく明瞭で音の輪郭がくっきりと浮かび上がるタイプという点では似ているかもしれません。音の細かいところは直接比較しないと分かりませんが、帯域バランスはA2の方が低域よりが充実しているように思います。6010は別売りの専用サブウーファー込みで考えているパッケージングなのに比べるとA2の方は単体でも成り立つような作りと言うべきでしょうか。

iPhoneとあわせてもその音は驚くばかりです。これが携帯からアクティブスピーカーで聴く音とは、ちっょと思えないでしょう。秋にはまた撮影旅行に行くので、これを車のトランクに入れて持っていこうかと考えています。
こうして柔軟に楽しみ方が増えるというところがこうしたアクティブスピーカーでシステムを組む利点かもしれません。しかし、A2は単に手軽さというところだけでなく、まじめに取り組むという面白みを加えてくれます。
posted by ささき at 22:07 | TrackBack(0) | __→ Audioengine 2, JB3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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