ディスクユニオンにて例のごとくごそごそと中古あさりをしていたところ、いままで探していたこの一枚を見つけました。アルバムのタイトルは「センスオブワンダー」ですが、紹介したいのはそのうちの一曲「地球の緑の丘」です。
難波弘之は全体に軽いフュージョンかポップな感覚が持ち味のキーボードプレーヤーで、この後はアルバムタイトルのセンスオブワンダーのグループ名で活躍しています。実はあんまり私の好みではないのですが(爆)これに一曲だけどうしてもほしい曲がはいっているのです。
タイトルの"センス・オブ・ワンダー"とはSFの魅力を一言で表したことばです。かくいう私も最近はさすがに夢がなくなったのかあまり読みませんが、子供や学生の頃はよくSFを読んでいました。
このアルバム自体の曲を見ても「アルジャーノンに花束を」や「夏への扉」などなど、SFの名作のオマージュ的な作品になっています。そしてこれを探していたのは、その中の一曲で以前ちょっとだけ聞いたことのある「地球の緑の丘」がよかったからです。
「地球の緑の丘」はロバート・A・ハインラインの古典的短編です。ハインラインの作品は統一された宇宙開拓の年代記を持っていて、これもそれの一部になっています。
- はるかな未来、年老いた盲目の詩人ライスリングが宇宙船にもぐりこみました。彼は最後の航海のつもりでした。目的地は遠い故郷の地球です。
しかしその宇宙船の機関室で事故がおきてしまいます。元は宇宙船の機関士だったライスリングは危険をおかして自己犠牲的に機関を直しますが、致死量の放射線をあびてしまいます。
そして瀕死で修理を進めながら、この最後の詩を船内放送に向かってうたいます。
わが生をうけし地球に
いまひとたび立たせたまえ
わが目をして、青空に浮く雲に
涼しき地球の緑の丘に、安らわせたまえ
このアルバムではこの詩をカントリーフォークのメロディーにのせて歌い上げます。これがうまいアレンジだと思います。
これを聴いたわたしはまた別のSF作品を思い出していました。
古典的なSF映画で「サイレントランニング」という映画です。これは地球上からすべての森や緑が消えてしまった近未来の話です。そして宇宙ステーションのドームに残された最後のわずか一握りの緑も破壊するように命令が下されます。しかし主人公はその緑を守るために命令を無視して地球を離れます。
映画では随所にジョーンバエズの歌う60年代フォークソングが流れ、大地の緑を守ることの尊さを切々と歌い上げます。
これらの作品ではSFとか未来とか言うシチュエーションですがオーケストラや電子音を使わずに、ギターとヴォーカルのみのフォークで歌うというのが心に響きました。
人はもはやSFという視点で遠く離れないと目の前の地上の緑というあまりにも当たり前のものに気が付くことはないのかもしれません。
CDと文庫の方は入手が難しいかもしれませんが、映画の方はDVDでレンタルできると思います。名作ですのでぜひどうぞ。
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*文中の詩は早川文庫版で(故)矢野徹氏の訳です。
Music TO GO!
2005年12月12日
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