昨日のフジヤさんのブログに出ていましたが、エレクトリさんでドイツのSPL社のPhonitorという新型ヘッドホンアンプを発売しました。
こちらにページがあります。
http://www.electori.co.jp/spl/products/phonitor.html
そこで店頭でもデモできるということでさっそく行ってみました。
しばらく格闘したのですが、これ、ぽんと出されてすぐに理解できるというアンプではありません。
まず前面にびっしりと配置されたダイヤル等ですが、よくあるトーンコントロールや意味のないスイッチなどで数を増やしてメカ感をあげるというのではなく、ヘッドホンで適切なモニタリングするというテーマのもとにまるで戦闘機のコクピットのようにひとつひとつが意味をもったものです。
しかも中心になるのは聞きなれない概念です。
PhonitorというのはHeadphoneとMonitorの造語で文字通りヘッドホンでモニタリングをするということに焦点を当てたアンプです。
ヘッドホンで音楽をモニターするということはルームアコースティックに左右されないという利点がある反面で、スピーカーのように自然な音場が形成しにくいというデメリットもあります。
いままでもそれを改善するためにクロスフィードというものがありましたが、Phonitorではそれがかなり突き詰められています。
まず左の二つのつまみがPhonitorの中心になる「クロスフィード」と「スピーカーアングル」の調整つまみです。スピーカーアングルは文字通り、スピーカーの内振りで定位を調整するというような意味合いのようです。この二つは一体になっていて同じON/OFFスイッチで稼動させます。
Phonitorではクロスフィードが耳間(interaural)レベル差をコントロールし、スピーカーアングルは耳間時間差をコントロールするという概念で、このふたつを相関的に調整しながらステレオイメージを調整します。
そして右にあるつまみが「センターレベル」コントロールというもので、これで左右に広がる拡散度合いの中央への集中密度を調整するというような意味合いです。-2(左)に近づけるほど中央に音が寄ってきます。上記二つの調整でずれていくイメージをこれでまた適正化するというような使い方をするようです。「センターレベル」は独立したON/OFFスイッチを持ちます。
この3つが中核の考えで、これでステレオイメージをモニターに最適なように調整していく、というもののようです。他にはL/Rの独立モニタリングとか、モノラル化、位相反転などがあります。この辺もスタジオ向けといえます。
また右にあるDIMというのは-20dBのアッテネーターのスイッチで、Phonitorがスタジオ向けの600オームを標準として設計されているので、低インピーダンスのヘッドホンを使うときにボリュームを取りやすくするためのものです。しかしゲインとは少し意味合いが違います。
こちらにSPLのページがあります。
http://www.soundperformancelab.com/
SPL(Sound Performance Lab)というのはいかにも技術者集団という感じですが、このPhonitorのタイトルにある120V ヘッドホン・モニタリングアンプというのはアメリカ家庭電圧のAC120Vで動くという意味ではなく、通常のアンプの回路が+/-15Vで動作するところをなんと+/-60Vで動作するということを意味しているようです。
SPLではこれを120Vテクノロジーと呼んでいます。
ちなみに入力はバランス(2番ホット)のみです。
実際にはじめEdition9で聴いていましたが、少し力が強すぎるのでHD650で聴きました。
ヘッドホンアンプとしてはニュートラルかつフラットですが、重みや厚みがあり無機的なわけではありません。そのため、スタジオ用途だけではなく、音楽鑑賞でも使えると思います。解像力もあるのでヴォーカルの肉質感などもよく再現されます。
ピアノトリオなんかだと上の調整が効いていくのが分かり易いですが、ちょっと試してみても組み合わせが多岐で複雑なので音が変わるのをどうまとめて行くかというのは少しマニュアルをにらみながら取り組まないといけないでしょう。
ヘッドホンでスピーカーのようなシミュレーションをするといっても、DSPでバーチャルな立体音場を作るというのとはちょっと違います。
なかなかタフなヘッドホンアンプですが、まじめにヘッドホンで聞く、という意味を考えたいという人向けと言えるでしょうか。
Music TO GO!
2008年08月22日
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