一般的に書いていますので、製品ごとの違いは各記事を参照ください。
1. カスタムIEMとは
IEMはインナー・イヤー・モニター(あるいはイン・イヤー・モニター)の略でいわゆる耳にはいるイヤホンを総称的にいう言葉です。iPod付属のような普通のイヤホンを指すこともありますが、普通は耳の穴に挿入するカナルタイプのイヤホンを言います。ここでは以降IEMというとカナルタイプのイヤホンについて言います。
もともとカナルタイプはミュージシャンがステージ上でモニターとして使用するもので、それがコンシューマー向けに転用されてきました。カナルタイプはステージ上で目立たない、遮音性が高いという利点がありますが、耳の中に入れるため耳道(カナル)の形・大きさが人によって異なり、カナルタイプのフィット感はイヤチップやIEMの形状が合うかどうかという製品との相性に左右されてしまいます。
そこで個々人の耳の型を取って、それに合わせてIEMを作成するものを「カスタムIEM」と呼びます。これは量販店で購入するのではなく、メーカーや代理店に直接依頼して作成します。

Sleek Custom
UE Triple.fi 10 proやShure SE530など量販店の店頭で売っているものはカスタムIEMに対して一般に「ユニバーサルIEM」とも呼ばれます。これは特にそうした専門用語があるというわけではありませんが、ユニバーサル(Universal)は"一般的、自在・万能"というような意味です。たとえばユニバーサル・ジョイントなどの言葉が使われていると思います。だれにでも合うという意味です。
2. カスタムIEMの利点
カスタムIEMの利点としてはぴったりと耳に合うことによる装着感の高さと、遮音性が高くなるため音質が上がるということです。遮音性が上がるため、超低域はかなり改善されます。また細部の解像力も外部雑音からアイソレートされてないと発揮できません。
もともとはミュージシャンが現場で他人のものと区別するためのものですが、一部のモデルではパーソナルペイントをすることで独自性を持たせられます。また、一部のモデルでは音の傾向も多少カスタマイズができます。
3. カスタムIEMの注文について
3-1 インプレッション(耳型)の採取
インプレッションは補聴器関係のお店(audiologist)で採取できます。約5000円くらいだと思います。わたしはIEMのノウハウに通じている須山補聴器(link)でやってもらいました。
関東近辺でない人は近くで探さねばなりませんが、採取方法は補聴器とは少し違うようので注意が必要です。
耳型を取る方法についてはこちらにUEの例が詳述されていますので、お店とよく相談のうえ採取した方が良いと思います。
http://www.ultimateears.com/_ultimateears/products/custom/audiologist_instructions.php?we_editDocument_ID=400
FreQ, LiveWires, Sleekなど各メーカーとも、基本的にはUEの方式で問題ないようです。

インプレッション
またメーカーによっては耳型を自分で取れるキットを提供しているところもありますが、リスクがあるので避けた方が無難です。
3-2 注文
ここでは国外に個人発注することを前提にしています。
(国内ではUE/Westone/Sensaphonicsなどの各代理店さんや須山補聴器さんのオリジナル品などが入手できます)
はじめてカスタムIEMを頼む時はなにをどの順番でやるのかがわからないと思いますが、整理すると大きくは次のようになると思います。
インプレッションの採取 -> 注文 -> 支払 -> インプレッションの送付
インプレッションの採取に関しては予約で時間がかかることもあるので、はじめにやっておいた方が良いと思います。そこでまずカスタムIEMがほしいと思ったら、耳型の採取予約をして、耳型を取ってもらったら耳型の送付用の箱を用意します。
そしてその夜にでも希望メーカーのホームページで注文をします。(ここは各機種の記事をご覧ください)
また同時に支払いも済ませ、その注文確認シート(それと支払確認シート)がメールされると思いますので、それをパソコンでプリントして耳型の送付用の箱に同封します。ここは要求されていないところも多いのですが、そうした方がよいと思います。
ホームページなどでインプレッションの送付先を調べます。UEのようにカスタム窓口が総合とは違う場合もあるので、セールス担当の人に送り先をあらかじめ聞いておくのがベストです。
そして郵便局に行ってEMSで送付します。EMSは専用の依頼シートがあります。アメリカ宛てで約1200円くらいだと思います。
(ここは各自の都合でDHLなどにしてもよいと思います)
メーカーにもよりますが、あまり混んでいなければ2-3週間で製作して戻ってくると思います。耳型が到着したことや発送したことの知らせは出すところと出さないところとまちまちです。
連絡などで英語力が必要な場面もありますが、決まり切ったものを買うときは読めればよいという場合も多いと思います。ただしなにかトラブルがあった場合には書く方のコミュニケーションが必要になるかもしれませんので、考慮しておくことは必要です。
4. カスタムIEMのテストについて
カスタムIEMに関してはできあがったときに、それが正しく出来ているかということがひとつポイントだと思います。よく言われていることは、装着したときに一か所に集中した不自然な圧力がかからないか、ということです。また耳型が正しく出来ていても、完全に装着できていないということもあります。
そこで感覚的だとわかりにくいので、次のようにトーンを使って調べる方法があります。
http://www.sensaphonics.com/test/index.html
これはゼンザフォニックスのホームページに書かれている方法ですが、シーリングが悪いと低音が漏れるので、それを利用しています。50Hzと500Hzのトーンが交互に聴こえるMP3(WAV)データを聴いて、50Hzと500Hが等しい音圧で聴こえればOKというものです。
アンプとかIEM自体の特性、個人差もあるのですが少なくとも50Hzが小さく聞こえると正しくない可能性があります。