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2025年04月24日

トゥルー・ダイヤモンド振動板、final A10000発表会レポートおよび音のインプレ

final A10000はfinalの最新のフラッグシップモデルのイヤフォンで、ダイヤモンド振動板を採用している点が特徴です。
先週発表会があり、実際に音を聴いてきました。

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final A10000

A10000は4月24日(木)より予約開始、2025年6月予定です。また初回限定パッケージとして、本体色はゴールドカラーを採用、特別な桐箱に収めた全世界300台限定生産の「A10000 Collector’s Edition」も用意されています。
価格はfinal公式ストア発売価格が、A10000は398,000円(税込)、A10000 Collector’s Editionは428,000円(税込)です。

final公式ストアはこちらです。
https://final-inc.com/products/a10000-jp

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プレゼンする森氏と細尾社長

特徴

ポイントはダイヤモンド振動板といっても、コーティングやADLC(ダイアモンドライクカーボン)の類ではなく、B&Wのダイアモンドツィーターと同様に人工ダイヤモンドを使用した振動板です。A8000がベリリウムコーティングではなく、「トゥルー・ベリリウム」振動版であるとすれば、A10000は「トゥルー・ダイヤモンド」振動板といえるでしょう。開発は挫折と立ち直りの紆余曲折の歴史があったとのこと。

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上の写真が実際の振動板で、振動板は10mm相当です。息をかけると飛ぶくらい軽い。厚み自体は30ミクロンとベリリウムのものよりも厚めです。振動板の整形が難しく2-3割は壊れるそうです。
右が振動板のみ、中が分子間結合でポリウレタン系のエッジをつけたもの、左がボイスコイル付きで自社で線を巻いて空中配線になっています。

A10000の重要な要素は「エッジ」にあります。重たい振動板を駆動しても最低共振周波数(f0)が上がりすぎないようにするため、かつてJBLが使用していたポリウレタン製のエッジを採用したとのことです。ただすぐボロボロになるので、改良して加水分解しないものを見つけたとのこと。このエッジ技術はDX6000にも生かされています。

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A10000の歪み特性(赤はほとんど寝ています)

振動版のポイントは低歪みと、それにより超低域の再現力です。従来モデルと比べて100分の1以下とのことで、A8000でも2-3%あった低域の歪みが、A10000では0.02%程度になります。これにより音質低下なく超低域の音圧を上げることができるようになったと言うことです。
これはfinalの開発ポリシーを再考させるようなものであり、A8000 の上だけれども、さらに突き抜けたので10000 というより特別なナンバリングを冠したと言うことです。

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ケーブルは線材にシルバーコートOFC線を、絶縁被膜には従来のPFA(フッ素ポリマー)よりもさらに低い誘電率を誇るePTFE(発泡テフロン)を採用。基本的にはA8000のときの潤工社と開発したものをさらにアップグレードして新規開発、よりスーパーコンピューターの線に近いものだそうです。端子は4.4mmです。
端子はMMCXですが、基本はユーザーは交換できずに抜けません。MMCXアシストでも抜けずに特殊工具が必要とのこと。断線の際には交換可能な専用線と考えた方が良いと思います。

またイヤーピースはFusionGですが、Lサイズを標準に付けているとのこと。これはA8000の時に漏れによって真の性能が発揮できないことがあったからとのこと。
ハウジングの表面処理はA8000の磨きに対して、A10000では機械時計の裏と同じような切削加工とのこと。

インプレッション

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実際のハウジングを手に取るとベントが二つあるのがわかります。ただし聞いてみるとあまり積極的には使っていないとのこと。この辺はちょっとわかりません。

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左 A10000、右 A8000

試聴にはA8000を持参してA&K KANN Ultraで聴きました。ただし標準ケーブルでの比較を優先したのでA8000は3.5mm、A10000は4.4mmなので、正確な音の比較ではありません。

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A10000とKANN Ultra

端的に言うと、解像力的にはA8000を上回る基本性能で、音傾向的にはA8000とは大きく異なり、腰高だったA8000の印象に対してよりどっしりと腰が低いピラミッドバランスのサウンドがA10000だと思います。一聴すると音の厚み表現がだいぶ異なります。高音域はよくコントロールされていて、きつさは抑えられているように思う。

細かいところでは例えばよく試聴にも使われるTiffanyの「五木の子守歌/サマータイム」では聴き比べるとA8000では聴こえないような細かな音がA10000では聴こえてきます。
またパイプオルガンの重低音チェックの音源を使うと、A8000よりも低い音が鳴っているのが分かります。A8000も低音は出るのですが、やや上でなっている感じです。A10000ではさらにその下の超低音の沈み、重みがだいぶ違います。
オーケストラの「青少年の管弦楽入門」では冒頭の強奏部の迫力がA10000とA8000ではだいぶ違います。これも超低域の豊かさからきていると思います。

低域が出るからヴォーカルにかぶるかと言うとそうではなく、Shantiを聴くと声もA10000の方がA8000よりも明瞭に聴こえ、歌声の掠れ加減がA8000よりもA10000の方がより細かく階調再現が高いと感じられます。

音の切れ味はと言うと、ヘルゲリエントリオの「take five」のドラムスを聴いてみると、音が鋭いというよりはより正確になっているように感じられます。A8000よりもA10000の方が聴きやすく厚みがある音で、正確でかつ細かいと言う印象です。

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上がA10000、下がA8000

まとめ

A10000は、技術的な革新と実直な音作りが結実したfinalの技術開発の結晶です。A8000の先にある「透明感」と「重厚さ」の共存は、まさに次世代のフラッグシップと呼ぶにふさわしい完成度だと感じました。上の特徴部分とインプレ部分を合わせて読んでもらうと、A10000はfinalらしく技術研究の成果がそのまま音に表れているといえるでしょう。
ある意味で、A10000は原音忠実というか、音源忠実であり、音の情報がそのまま聴こえてくると言う印象です。それが進化した「トランスペアレントな音」なのかもしれません。
posted by ささき at 18:16 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする