またMQAに動きがありました。
まずここまでの流れを整理すると、2023年の9月にMQAはカナダのLenbrookグループに買収されます。レンブルックグループは傘下にBluesoundやNAD、PSB Speakersなどのオーディオブランドを擁しています。
アスキー記事: カナダのLendbrookがMQAを買収
その後に今年のCES2024直前の1月、再スタートすることをリリースで宣言しています。
アスキー記事: MQAのその後、衝撃の経営破綻から買収、再スタートへ
このリリースでは"監督"するに"oversee "というニュアンスを使ったことから、MQAの独立性に考慮してMQAには組織としての独立性には介入しないが戦略に関しては口を出すというようなスタンスでいると考えられます。MQAの業界スタンダードのポジションを考慮したと考えられます。
そして今年(2024年)の6月にはMQAの中核技術が「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」という3つの技術であることをリリースで表明しています。
アスキー記事: MQAに新動向、MQA技術の先にある「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」とは?
「AIRIA」はワイヤレスを考慮したMQAの延長線であるSCL6のリブランドであると考えられます。ただし残りの「FOQUS」と「QRONO」についてはあまり情報はなく、「FOQUS」はアナログ/デジタル変換における革新的なアプローチ、「QRONO」は再生機器内で様々なオーディオ処理を強化するものであるとだけアナウンスがありました。
ただし名称から推測すると、FOQUSは焦点が定まったという意味のFocus、QRONOは時間を意味するChronoに由来する造語と考えられます。つまりFOQUSはなんらかの解像度を上げる処理、QRONOはMQAのフィルタリングがそうであるような時間領域に関する処理であると推測できます。
そして12月5日、MQA Labは「QRONO」についての詳細を発表しました。
MQAニュースリリース: QRONO by MQA Labs Hits the Market (MQA LabsがQRONOを市場投入)
それによると「QRONO」ラインナップの中の「QRONO d2a」と「QRONO dsd」という二つの技術を発表しています。これらは(レンブルック傘下である)Bluesoundの新しいストリーマー(ネットワークプレーヤー)である「NODE ICON」に搭載されます。
端的にいうと、QRONO d2aはDACのフィルターと交換できる(DACハードに応じた)カスタムのデジタルフィルター、QRONO DSDは軽量なDSD/PCMコンバーターです。
MQA Labsのエンジニアリング・ディレクターであるAl Wood氏は次のように語っています。
「QRONO はハードウェアパートナーおよびライセンシーにソリューションを提供するプラットフォームです。我々は基本的な信号処理技術の緻密な適用に重点を置いています。これらには各DACチップから最高の性能を引き出すため、デジタル・アナログ変換の全体的なインパルス・レスポンスと透明性を向上させるフィルターやノイズ・シェイパーが含まれます。DSD変換は可能な限り軽く処理され、録音における重要な時間要素の細部までをすべて保持します。そしてBluesoundのNODE ICONにQRONOを統合した音質に満足しています」
MQA Labsのビジネス開発ディレクターであるAndy Dowell氏は次のように付け加えています。
「人間の聴覚は特に細かいディテールを聴くときにこれまで理解されていたよりもはるかに正確です。MQA Labsチームの専門知識をオーディオ再生の改善に応用することで、技術がユーザーの体験を向上させ続けるHiFi業界の繁栄というレンブルックのビジョンをさらに推し進めることができます」
このコメントはMQAのボブスチュアートがたびたび語っていたMQAの時間的処理の重要性と同じです。
BluesoundのNODE ICONはEversolo DMP-A8やA6に似た大きな液晶画面を搭載したネットワークプレーヤーです。ES9039Q2M DACをデュアル搭載し、ヘッドフォンアンプにTHX AAAを採用しています。
現在はプリオーダーとなっていますが、価格はUSD1399とあります。Bluesoundとしては新しいフラッグシップとなります。現行のNODEモデルはDSD対応がないようですが、その対応として今回の「QRONO dsd」の搭載に至ると考えられます。
https://www.bluesound.com/zz/node-icon?srsltid=AfmBOoqW2xl14dqoSZPZ7Hp8zz-u4mdLpBDgWACvBG4Kt07dBgETXMBe
MQA LabsではQRONO技術は、(デジタルでありながら)最高のアナログ・システムをさえ超える時間的性能を可能にするとしています。MQA LabsはCES、NAMMおよびISEに出展するとのことです。