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2024年12月05日

nwmブランドの新世代新製品「nwm DOTS」、「nwm WIRED」レビュー


nwm(ヌーム)はNTTソノリティが販売するブランドで、オープンイヤー型ながら周囲に音漏れがしない技術「PSZ」を特徴としています。端的に説明すると「PSZ」は背圧を逆相の音として放射して周囲の漏れを打ち消すという仕組みです。
そのnwmブランドの新製品が先日発売されました。オープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤフォン「nwm DOTS(ヌーム・ドッツ)」(市場価格24,200円)と安価な有線イヤフォン「nwm WIRED(ヌーム・ワイヤード」(市場価格4,950円)です。NTTソノリティでは耳スピーカーと呼んでいます。

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nwm DOTS(左)、nwm WIRED

研究所のスピンオフ製品を思わせるように以前のnwm製品はいささか実験機的な性格がありました。以前のnwm製品についてはアスキーに書いた記事を参照ください。
音もれを打ち消す、ながら聴きイヤホンの新提案、NTTソノリティ「nwm MBE001」

それと比較すると、今回の製品は「nwm DOTS」、「nwm WIRED」共に同級の他社製品と比較してもイヤフォン製品として十分に完成度が高い本格的な製品群になっているのが特徴です。
デモ機を貸し出してもらったので、本稿ではインプレッションを中心に書いていきます。

* 「nwm DOTS」

オープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤフォン「nwm DOTS」はPSZ技術の他にもデザインとカラーリングの点でとても個性的なイヤフォンです。円を基調とした個性的なデザインは"DOTS"の名前とともに点と点が繋がるという意味合いを込めているということです。「nwm DOTS」は通話性能も高く、NTTのもう一つのコア技術である「Magic Focus Voice」を搭載して通話品質を向上させています。
ドライバーの口径は旧モデルと同様に12mmですが、新規開発により以前のモデルよりも音質・音圧を向上させている点がポイントです。特に一般に低音として知覚する100Hz付近のレスポンスを上げたということです。
またPSZの音漏れ低減効果も従来より改善されています。DSPを使って逆相音を出すイヤフォンとは違い、PSZは音響のみで逆相音を実現しているのがポイントですが、その分でPSZの性能向上は単にDSPの性能を上げれば済むというものでもありません。このことを開発元に聞いたところ次のコメントをいただきました。
「音響シミュレーションをデザイン時点から活用し、新規開発ドライバの実力を十分に引き出せるよう音響構造や逆相放射用の穴形状、位置などを工夫・改善しています。実際、nwm DOTSの逆相用の穴はデザインに合わせてかなり複雑な配置・形状になっています。nwm WIREDの逆相穴に関してもデザインに馴染むよう、旧モデル(nwm MWE001)よりもすっきりした印象になっていると思います」
確かに逆相穴は筐体の周囲に開いているのですが、違和感のあるものではありません。

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実機を見ると以前のものよりも普通のイヤフォンという感じです。むしろ円のデザインが印象的で、市販のカジュアルなイヤフォンという印象を受け、PSZのような特徴的な技術が隠されているようには見えません。充電機能付きのケースも前よりもコンパクトになっていて実用的です。
本体はとても軽量で装着感はほとんどありません。極めて快適でオープンイヤータイプの中でも装着感はかなり良いと思います。この装着性の秘密として、「nwm DOTS」ではイヤーフックが特徴的で、普通のイヤーピース(テールチップ)をはめ込んでクッション代わりにし、さらに大きさも調整できるという特徴を備えています。このイヤーピースを使ったクッションがとても良くできているわけです。
また「nwm DOTS」を使い始める時にまず悩むのはこのイヤーピースの大きさの選択と、前後の位置です。大きい方がクッション効果が高いと思うけれども、まず耳のサイズに合わせて選ぶのが基本だと思います。またクッションの大きさで耳への距離が多少変わるので音も少し変わります。小さい方がより音の広がりがよく感じられ、大きい方が普通のイヤフォンに近く密度感があるように感じられます。
またイヤフックの前後でのイヤピースの装着位置も変更できます。個人的にはイヤフックは耳たぶがしっかり円弧に収まるように装着した方が良く、イヤーピースは少し後ろ側に装着した方が良いと感じましたが、耳の形は千差万別なのでここは試行錯誤しながらベストポジションを決めていくのも楽しみの一つでしょう。

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音質についてもかなり優れています。同クラスの他のオープンイヤー型と比べても遜色ありません。独特の開放的な音の広がりが良く、クリアで解像力も高く感じられます。低音はオープンイヤー型らしく軽めですが、パンチがあり引き締まっています。中高音域は普通のイヤフォンと遜色ないくらいの高い音質があると思います。特にピアノの音色が美しく感じられます。弦楽器を聴いても音色が気持ち良く、基本的な音の解像感とか歪みの少なさなど音性能は高いと思う。ベルの音が美しく響くのは歪み感が少ないからでしょう。音色はニュートラルでヴォーカルもクリアでよく歌詞が明瞭に聴き取れます。ロックでも重低音中心でなければスピード感があり、パワフルな感じは十分に楽しめます。
また従来のイヤフォンに比べると、周りの音がそのまま入ってくると同時に、いままでにないような空間が開けていて開放的な音空間が楽しめます。まるで音楽が周囲に溶け込んでいるような感覚にも陥る。中高音域は音質もしっかりしているので、不思議なリアル感が味わえます。
それと高音域にきつい刺激的な音が少ないのも特徴です。これは耳を塞がないことによるもののように思います。

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独特の音の開放感とヴォーカルの聴き取りやすさと楽器音の美しさはこのイヤフォンの長所です。例えばエリックサティの音楽を聴きながら原稿を作成するなどの用途にはうってつけです。
最近発売されたIsabelle Lewis「Greetings」では個性的なヴォーカルと軽いビート感、深みのある落ち着いた曲調が心地よさを感じさせ、ファミレスで聴いていてもどこか別空間に誘われるような感覚を受けます。
作業に向いているApple Musicの「チル・ミックス」をしばらく聴いていたが、あまり低音が足りなくて不満になるケースはなかったですね。録音の優れた曲も多いのですが、音質もミドルクラスのワイヤレスイヤフォンとしては十分に満足できます。ただし曲にウッドベースが入るようなジャズヴォーカルでは少し物足りなさはあります。
アニソンではやはり重低音はありませんが、女性ヴォーカルがとてもクリアで声が聴き取りやすいので、イヤフォンで中高域を重視して選ぶ人には向いていると思う。

音漏れはファミレスであれば多少音量をあげていても隣のテーブルで聴こえることはまずないと思います。数十センチ離れるとかなり聞こえにくいので隣の席でもかなり聴き取りにくい程度にはなるでしょう。

また細かい点ですが、操作性が良くタッチの感度が良いのも特徴的です。ただし普通の完全ワイヤレスとはフェイスプレートの位置が違うので多少の慣れが必要です。

* 「nwm WIRED」

オープンイヤー型の有線イヤフォン「nwm WIRED」は価格が安く試しやすい点がポイントで、PSZイヤフォンのエントリーモデルとして捉えることができます。
有線なので低遅延が重要なゲームで使いたいというときにも使えるでしょう。またPCの3.5mm端子にも使えるので汎用性は高いのも特徴です。後で書きますが、エントリーモデルにしては音質が高いのも特徴といえます。

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Macbook Air(M2)の3.5mm端子で聴いてみました。装着感は良く、周りの音はやはり全て聞こえてきます。
低価格モデルという先入観から音は期待できないと初め思いましたが、予想外に音がよいと感じました。安価な製品にありがちな音の雑味が少なく、中高域中心ならオーディオが好きな人でも気持ちよく聴くことができます。
こちらも原稿執筆中にApple Musicの「チル・ミックス」を聴きながら試してみましたが、滑らかで広がりが感じられる音質で、自然な音場感が感じられます。また弦が擦れるような音までわかる十分高い解像力を持っています。高音域の音がとてもクリアで、ベルの音が心地よく響く。サックスなど楽器音はリアルに聴こえます。ピアノの音色がとても美しく感じられる。
音質に関しては先に書いた「nwm DOTS」との共通点が多いと思います。

オープンイヤー型とはどういうものか、PSZとはどういうものか興味を持っているが高価だと試しにくいと思っているユーザーが試してみるのにもよいでしょう。

* まとめ

nwmブランドのイヤフォンはヘッドフォン祭で初めて披露された時からチェックしていますが、今回の新製品は「nwm ONE」も含めてnwmブランドの第二世代という感じがします。
また発売は先になりますが、「nwm GO」というアウトドアの釣りとかジョギングに向いたモデルが用意されています。もともとビジネス用だったnwmブランドの適用範囲がさらに拡大して行くようです。先日NTT武蔵野研究所の見学をした際にも「nwm」製品が単に音楽を聴くだけではなく、インフラの一部としても機能するということがわかりました。様々な今後の展開にも要注目です。






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