今年2024年は残念ながら世界的には紛争の時代が続きグローバル経済が崩壊していく混迷の時代が続きました。さてオーディオ業界といえばということで今回も2024年を振り返る記事をまとめてみたいと思います。
2023年の振り返り記事はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/501925194.html
・MEMSスピーカー技術の拡大と多様化に注目
MEMSスピーカーは昨年本格的に製品展開されましたが、今年はさらに多様化が進んでいます。これらは製品としては来年くらいから投入されていくでしょう。
xMEMSでは完全ワイヤレスでMEMSフルレンジでANC搭載を目指した高能率タイプを、超音波変調を用いた「Cypress」で開発しています。
https://www.phileweb.com/review/article/202403/13/5517.html
MEMSスピーカーをヘッドフォンでも使用する試みが行われています。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504129692.html
xMEMS社のイヤホン向け最新ドライバー「Muir」とヘッドホン向け「Presidio」を先行試聴した記事です。
https://www.phileweb.com/review/article/202407/03/5659.html
さらにxMEMSは小型ラウドスピーカーにも応用できるニアフィールドタイプのMEMSスピーカー「Sycamore」を発表しました
http://vaiopocket.seesaa.net/article/505735957.html
さらにxMEMSはMEMS技術をCPU空冷ファンに応用しています
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504455112.html
これまではxMEMS社のみの紹介でしたが、もう一方の雄であるUSound社もMEMSスピーカーの市場投入の用意をしています
https://www.phileweb.com/sp/review/column/202412/05/2485.html
この記事にはさらに続きがあり、USoundの戦略的MEMS新製品「Greip」の紹介に続きます。(近日公開予定)
・Auracastの本格運用開始に注目
今年はLE Audioを用いたブロードキャスト技術であるAuracastの展開にも注目しました。
はじめにAuracastの基礎知識として下記記事をご覧ください。
AuracastレシーバーAuracastトランスミッター・Auracastアシスタントの役割分担、特にAuracastアシスタントがポイントです。
https://ascii.jp/elem/000/004/197/4197105/
そしてJBLがAuracast対応のTour Pro 3を発表しますが、この液晶付きケースがAuracastアシスタントになる可能性に着目しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504463384.html
そこでJBLのTour Pro3の液晶ケースを用いて、東芝情報システムさんの翻訳システムと組み合わせて試用することを思いつき、Bluetooth SIGの協力のもとで実施します。
つまりJBLのイヤホンを東芝情報システムの送信機と組み合わせて実施したわけです。ここで実際に近いシナリオのデモを用いてAuracastを試してみました。
https://www.phileweb.com/sp/review/column/202410/28/2457.html
そしてBluetooth東京セミナー2024ではセミナー会場と展示ルームでAuracastを試してみます。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/505467983.html
さらにのちに書くNTTの武蔵野研究所の展示の一つでも意外にもAuracastを試すことができました。
Auracast初の実用製品も登場しています。大規模施設での応用も想定したAuriです。
https://ascii.jp/elem/000/004/183/4183952/
またBluetoothでは今年登場した6.0でのオーディオとの関係性も探っています。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504735358.html
・インタビューと発表会
インタビュー・訪問にも力を入れましたが、面白かったのはNTT武蔵野研究所の内覧会です。
NTTの基礎技術からオープンイヤーでのANC技術など、なかなか面白い話が聞けました。
ここではnwm ONEが主役として使われていたのもポイントです。
https://www.phileweb.com/news/audio/202412/10/25996.html
ちなみにこのオープンでのANC技術は、AirPods 4はどのようにイヤチップなしでANCをしているかにも関係しているかも。レイテンシーがキーです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504918755.html
FIIOの開発者インタビューもなかなか熱が入って中身の濃いものとなりました。
https://www.phileweb.com/review/article/202404/23/5557.html
コルグのLive Extremeを用いた世界初のAuro-3D配信ではプレスビューイングイベントに参加し、「GENELECエクスペリエンス・センター TOKYO」においてサラウンド環境で視聴しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/187/4187317/
坂本龍一氏の所有していたピアノの展示会ですが、特徴的なのは自動演奏が行われたということです。
このイベントでは坂本龍一氏が実際に使用していたピアノを使用し、坂本龍一氏の演奏を実際に記録したデータを用いて自動演奏をするわけです。
上のAuro-3Dの記事でも書きましたが、わたし自動ピアノにとても興味があるのです。
https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza/event/detail?id=5054
ヤマハが開発した、ライブ演奏を擬似再現するライブビューイングシステム「Distance Viewing」の延長で開発された「GPAP」にも注目です。
https://ascii.jp/elem/000/004/182/4182798/
Softearsの開発者インタビューは技術と革新に重点を置いた社風がわかり、パッシブドライバーの開発などユニークな点にも注目です。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/505678014.html
Noble Audio初のヘッドホン「FoKus Apollo」のインタビューを“Wizardの兄”に聞いたのも面白かったですね。
https://www.phileweb.com/interview/article/202405/11/981.html
・立体音響
本当は今年は空間オーディオを少し真面目にやろうとしてMPEG-Hの勉強に着手しようとしていたんですが、
昨年CEarのパヴェを試してから、むしろ「立体音響」の分野に興味をもってきました。
その点ではやはり鹿島建設の立体音響技術「OPSODIS」のインタビューをしたことが面白かったですね。
小さなサウンドバー上のスピーカーから後ろに回り込むような音が聞こえてくるのは圧巻です。
https://www.phileweb.com/review/article/202408/02/5689.html
一方でもっとシンプルなアプローチを目指すAudiisionラボにもインタビューを行いました。(記事は公開準備中)
・MQAの動向
今年はMQAの動向にも着目しました。
MQAは衝撃の経営破綻から買収、再スタートへ向かいます
https://ascii.jp/elem/000/004/178/4178415/
しかしTIDALがMQA配信から撤退、すべてFLACに移行します。
https://ascii.jp/elem/000/004/205/4205711/
一方でHDTracksがMQA技術を使ったストリーミング配信開始を予告します。
https://ascii.jp/elem/000/004/205/4205712/
そしてMQAに動きが出ます。「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」という技術を発表。
https://ascii.jp/elem/000/004/203/4203236/
MQA LabsがQRONOを市場投入し,Bluesoundの新製品に搭載します。これでMQAがまた市場に戻ってきました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/505971015.html
そのMQAのQRONO d2a技術とは何かについて技術白書からの考察もしました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/505988869.html
・LC3plus、ついに市場に
フラウンフォーファーのインタビューで書いたハイレゾコーデックLC3plusが市場に出てきました
まずLC3/LC3plusコーデック対応のドングルとして登場します
https://ascii.jp/elem/000/004/178/4178406/
これはAKGの新しいN5、N9として真価を発揮します。
またFIIOからLDAC対応ドングルが登場したこともiPhoneユーザーには福音となるでしょう。
・機材レビュー関連
今年もたくさん機材レビューを書いています。
まずイヤフォン、ヘッドフォンから、
Campfire Audioの「Fathom」はこの10年のひとつの集大成といえるでしょう。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504264775.html
Campfire Audioがデュアルプラナードライバーの新IEM「Astorolith」を発売開始、
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504264472.html
Astorolithについてはヘッドフォンブック2024にレビューを2ページ記事で執筆しています。
さらなる新型、Campfire Audio ClaraのレビューをAV Watchに執筆しました。
ケンさんに聞いた開発経緯から、その特徴、そして音の印象まで6500字で詳細に書いていますので興味ある方は是非ご覧ください。
https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/1650394.html
もとゼンハイザー、アクセル・グレル氏の新たな挑戦「Grell OAE1」のレビューというか考察も書きました。
OAE1の特徴はアクセル・グレル氏が取り組んでいる「ヘッドフォンの外形デザインと音質」というテーマを文字通り形にしたことです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504194146.html
Softearsのフラッグシップモデル「Softears Enigma」も個性ある音と技術がユニークです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504061833.html
nwm ONEの発表会で早速開発者のプロダクトグループマネージャーに聞いた記事も面白いと思いますよ。
https://ascii.jp/elem/000/004/211/4211068/
nwmブランドでは「nwm DOTS」と「nwm WIRED」のレビューもしました。特に「nwm DOTS」はなかなか良いと思いますが、WIREDもコスパが高いです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/505957553.html
エイプリルフール企画が現実になったような、2大カスタムIEMブランドコラボの「SUPERIOR EX」の記事です。
https://www.phileweb.com/review/article/202404/26/5565.html
イヤフォンでは分厚くダイナミックな音の個性派イヤフォン「iBasso 3T-154 」もなかなか面白いです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504011065.html
耳をふさがないイヤホンで高音質を追究したい人にはCleer Audioがおすすめ。
https://ascii.jp/elem/000/004/192/4192844/
NUARLのMEMS搭載完全ワイヤレス「Inovatör」もMEMS搭載でAudiodoのパーソナライズ機能もあり注目株です。
https://ascii.jp/elem/000/004/209/4209876/
Noble Audioの「XM-1」はMEMSスピーカー採用イヤホン第2弾、有線接続ならではの高音質です
https://ascii.jp/elem/000/004/188/4188543/
ビクターのHA-FX550Tではなぜウッドからシルクにしたのかということを突っ込んでみました。
https://ascii.jp/elem/000/004/207/4207126/
DAPではやはりAstell & Kernが追求するアナログサウンドの完成系とも言える真空管搭載のフラッグシップ「A&Ultima SP3000T」が白眉であったように思います。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/503595135.html
ハイパワーにして真のラインアウトを備えたKANN Ultraも使い込むごとに役に立つ感じがするDAPです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/501943049.html
個性的というと独特の音色再現のトランスポータブルDAP「ONIX Mystic XP1」も良い選択となるでしょう。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/503758608.html
L&Pの新たなフラッグシップシリーズ「E7 4497」も完成度が高いと思います。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504045155.html
新機軸を投入したiBassoの高性能DAP「DX260」はそのSN比の高さに舌を巻くほどです。Android的な面も着目しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504563607.html
スティック型DACの進化もすごい。まずロームDAC搭載でステップアッテネーター採用というiBasso Audio「DC-Elite」
https://www.phileweb.com/review/article/202406/15/5621.html
ヘッドフォンもマルチBAも鳴らすスティックDAC「L&P W2Ultra」レビュー
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504874510.html
K2HDサウンドのiFi audio「Go bar 剣聖」
https://ascii.jp/elem/000/004/195/4195164/
ディスクリートDACと汎用DACの音質の違いをFIIOのUSB-DAC/ヘッドホンアンプ「K11」を徹底比較しました
https://www.phileweb.com/review/article/202412/03/5784.html
250万円の「冨嶽」もレビューしました
https://www.phileweb.com/news/d-av/202404/27/60284.html
LUXMANから二台結合可能のバランスヘッドフォンアンプ「P-100 CENTENNIAL」が登場しましたが、
これはバランスアンプとしていわば先祖帰りの手法です。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504987411.html
水月雨がオーディオファン向けスマホ「MIAD01」を開発したのもユニークです。
https://ascii.jp/elem/000/004/199/4199344/
インド発の密閉型/静電式ヘッドホン「INOX」、
https://ascii.jp/elem/000/004/212/4212349/
ちなみにこれ、2025年には日本で見れます。
・中国のトレンドがレトロ回帰と最新トレンドの融合へ
FiiOが、カセットプレーヤーを敢えて新開発、CESで登場した「CP13」
https://ascii.jp/elem/000/004/180/4180461/
FIIOのカセットプレーヤー「CP13」はレビューもしました
https://www.phileweb.com/review/article/202404/11/5551.html
可愛くて本格はのCDプレーヤー。Shanling「EC Smart」
https://www.phileweb.com/review/article/202411/11/5783.html
DAP時代のCD再生機Shanling 「CR60」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/505678308.html
おもしろいのは中国のトレンドが、日本から見るとレトロであると思える反面で最新のトレンドとも融合しようとしていることです。
・生成AIの音楽への応用が続く
Metaは自然言語のプロンプトを使用して、生成したい効果音や音声の種類を記述できる「Audiobox」を発表
https://ascii.jp/elem/000/004/185/4185978/
グーグルは音楽家やプロデューサーなど、プロの音楽家をターゲットにした「Music AI Sandbox」を開発
https://ascii.jp/elem/000/004/200/4200615/
Amazon Musicも生成AIを使ったプレイリスト作成機能提供、あいまいな指示に応えます。
https://ascii.jp/elem/000/004/196/4196354/
自然な文章でプレイスリスト作成をうながせる、Spotifyの新機能もAI応用
https://ascii.jp/elem/000/004/194/4194015/
Stable Audio 2.0では生成AIの進化速度の速さに驚きました。
https://ascii.jp/elem/000/004/192/4192845/
・オーディオイベント
ヘッドフォン祭2024秋レポート
ここではCEOダニー氏が来日、注目の新モデル「KA1」についていろいろ詳しく聞いています。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/505543257.html
ヘッドフォン祭mini
「D8000 DC」と「D8000 DC Pro」のサプライズ発表がありました。
https://ascii.jp/elem/000/004/212/4212406/
「ポタフェス 2024 冬 秋葉原」レポート
ミックスウェーブのCampfire Audioブースでは待望のミュージシャンコラボモデルである「Clara」を展示。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/507042349.html
ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
ハイエンドのみの面白い試みです。
https://ascii.jp/elem/000/004/187/4187318/
「REB fes」は機材を借りて自分の席でじっくり試聴できる新しいイベント
https://ascii.jp/elem/000/004/201/4201914/
日本とは異なる趣を持つ、ドイツのヘッドホンイベント“The World of Headphones”にも注目
https://ascii.jp/elem/000/004/189/4189592/
CanJam SoCal 2024での注目機種も海外ならではの機種を紹介しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/505094513.html
・PCオーディオ関係
Apple Music Classicalだけじゃない、クラシック再生に特化した「Idagio」の記事です。
https://ascii.jp/elem/000/004/182/4182795/
Roonがハーマンに買収された影響がさっそく現れたように思われます。
https://ascii.jp/elem/000/004/203/4203237/
マイクロソフトがARM向けにネイティブのASIOドライバーを開発
http://vaiopocket.seesaa.net/article/505370090.html
Spotify HIFIも再燃しています。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504138738.html
スマホから動画ストリーミングする、AmazonのMatter Casting機能
https://ascii.jp/elem/000/004/179/4179328/
Wi-Fi 7とヘッドホンの関係性にも着目
https://ascii.jp/elem/000/004/179/4179327/
XPAN技術やWi-Fi 7、UWBなどをAIで統合した、クアルコムのFastConnect 7900も紹介
https://ascii.jp/elem/000/004/191/4191651/
・アップル関連
AppleがAirPodsを刷新、AirPods Pro2にOTC補聴器モードを搭載
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504780392.html
欧州委員会がアップルに制裁金
https://ascii.jp/elem/000/004/189/4189591/
将来のAirPodsへの採用も期待できそうな具体性を持つ、アップルのイヤーピース新特許
イヤーピース装着方式に磁石を採用 イヤーピースビジネスにもインパクトがあるでしょう。
https://ascii.jp/elem/000/004/188/4188542/
来年はAirPods Pro3の発表が噂されていますが、さて。
AirPodsで使用者の動きからBPMを認識、それを何かに応用できる特許もユニーク。
運動とはウォーキング、ジョギング、ランニングなどの単純なものから、ダンスや体操、掃除などです。
https://ascii.jp/elem/000/004/208/4208511/
・来年の展望
こうみてくるとHDTracksのストリーミングサービスなど今年始まっていないように見えるものもあり、これらの展開が気になります。
MEMSでは、xMEMSのさまざまな技術が製品化されていくとともに、USoundのモジュールが市場展開できるかがキーとなります。
来年は今年登場しなかったXPAN関係のチップも注目したいですね。
さて来年はどうなるのか。。
Music TO GO!
2024年12月31日
2024年12月26日
AV WatchにCampfire Audio Claraのレビューを執筆
AV WatchにCampfire Audio Claraのレビューを執筆しました。
ケンさんに聞いた開発経緯から、その特徴、そして音の印象まで6500字で詳細に書いていますので興味ある方は是非ご覧ください。
https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/1650394.html
ケンさんに聞いた開発経緯から、その特徴、そして音の印象まで6500字で詳細に書いていますので興味ある方は是非ご覧ください。
https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/1650394.html
2024年12月20日
「ポタフェス 2024 冬 秋葉原」レポート
12月14日、15日に恒例の「ポタフェス 2024 冬 秋葉原」が秋葉原で開催されました。
以下目を引いたものをあげていきます。
ミックスウェーブのCampfire Audioブースでは待望のミュージシャンコラボモデルである「Clara」を展示。
音はロック・エレクトロに適合した低音の重みがあるサウンドながらヴォーカルもクリアによく聴こえるのが印象的。これについては詳しいレビユー記事を書いています。
エミライブースではFokusシリーズの新作「Rex5」と有線イヤフォン「Knight」が展示されていました。
Rex5はFokusシリーズですが、ANCが内蔵されAudiodoのパーソナライズ機能が追加されたのがポイント。平面型ドライバーもツィーターとして搭載しています。
音は高域は自然で中低域に厚みのある音ですが、パーソナライズ前提なので音はよくわかりません。
Knightは全世界限定生産でUS$285。BA、10mmダイナミック、ピエゾのハイブリッド。価格に対して音がとても良い感じ。中高音域はNobleらしくソリッドでシャープ、かつ画像生成の歯切れが良い。低域は控えめだが量感は十分ある絶妙な感じ。
ムジンブースでは新しいスティック型DAC「ヌンチャク(仮)」を展示。一見してDC Eliteのように見えますが、中に真空管が入っている真空管アンプです。DACもDC Eliteとは異なるとのこと。真空管はレイセオンのサブミニ管のデュアル構成でおそらく JAN6418だと思う。JAN6418のデュアル構成だとバランス対応だと思う。音はやはり心地よく、独特の艶っぽさがある感じ。あまり暖かすぎず、リスニング系の音です。
またSHANLINGのデスクトップコンパクト仕様、DAC内蔵ヘッドフォンアンプ「EH1」とR2R対応の「EH2」にバスとトレブルの独立したつまみがあったことが面白い。昔の日本のミニコンポとかラジカセはバスとトレブルの独立調整がよくあったと思うけど、現代の中国のちょっとレトロ志向が伺えて面白い。ラウドネスボタンがあればさらに完璧。
NuralのInovatorは生産に近いバージョンを展示。音はハーマンカーブに近いフラット基調で、ドンシャリのコンシューマーサウンドとは一味違ったHiFi調でハイエンドユーザーに良さそうです。
また今回ポタフェスではQobuzがブースを持って展示していました。iPadにFIIO K9 AKMやFIIO R9にQobuzアプリを入れてデモをしていましたが、個人的にはQobuzが輝くのはAudirvanaとかRoonみたいな音楽再生ソフトとの統合だと思うので、そういう展示もあった方がいいかもとちょっと思いました。
また、今回のポタフェスと同時開催イベントとしてfinalが近隣のUDXプラザでハイエンドヘッドフォン試聴会を開催。
他のメーカーとのタイアップしながら予約制で開放型をゆっくり聴くと言うコンセプトのようです。
私はWeiss DAC502でQobuz音源を試聴。
かなり性能の高いプロ用DACなので音がわかりやすく。D8000 DCとDC PROの差がよく分かりました。
音はProの方がよりフラットで細身でシャープでアタックも鋭い感じ。通常モデルもそれだけで聞くと十分にHIFI系ですが、Proと比べるとよりふくよかでリスニング寄りの音です。低域のアタックはProよりはおとなしめに感じます。
このほかにもSendy Audioにインタビューなどを行いましたが、これはまた別の機会に。
以下目を引いたものをあげていきます。
ミックスウェーブのCampfire Audioブースでは待望のミュージシャンコラボモデルである「Clara」を展示。
音はロック・エレクトロに適合した低音の重みがあるサウンドながらヴォーカルもクリアによく聴こえるのが印象的。これについては詳しいレビユー記事を書いています。
エミライブースではFokusシリーズの新作「Rex5」と有線イヤフォン「Knight」が展示されていました。
Rex5はFokusシリーズですが、ANCが内蔵されAudiodoのパーソナライズ機能が追加されたのがポイント。平面型ドライバーもツィーターとして搭載しています。
音は高域は自然で中低域に厚みのある音ですが、パーソナライズ前提なので音はよくわかりません。
Knightは全世界限定生産でUS$285。BA、10mmダイナミック、ピエゾのハイブリッド。価格に対して音がとても良い感じ。中高音域はNobleらしくソリッドでシャープ、かつ画像生成の歯切れが良い。低域は控えめだが量感は十分ある絶妙な感じ。
ムジンブースでは新しいスティック型DAC「ヌンチャク(仮)」を展示。一見してDC Eliteのように見えますが、中に真空管が入っている真空管アンプです。DACもDC Eliteとは異なるとのこと。真空管はレイセオンのサブミニ管のデュアル構成でおそらく JAN6418だと思う。JAN6418のデュアル構成だとバランス対応だと思う。音はやはり心地よく、独特の艶っぽさがある感じ。あまり暖かすぎず、リスニング系の音です。
またSHANLINGのデスクトップコンパクト仕様、DAC内蔵ヘッドフォンアンプ「EH1」とR2R対応の「EH2」にバスとトレブルの独立したつまみがあったことが面白い。昔の日本のミニコンポとかラジカセはバスとトレブルの独立調整がよくあったと思うけど、現代の中国のちょっとレトロ志向が伺えて面白い。ラウドネスボタンがあればさらに完璧。
NuralのInovatorは生産に近いバージョンを展示。音はハーマンカーブに近いフラット基調で、ドンシャリのコンシューマーサウンドとは一味違ったHiFi調でハイエンドユーザーに良さそうです。
また今回ポタフェスではQobuzがブースを持って展示していました。iPadにFIIO K9 AKMやFIIO R9にQobuzアプリを入れてデモをしていましたが、個人的にはQobuzが輝くのはAudirvanaとかRoonみたいな音楽再生ソフトとの統合だと思うので、そういう展示もあった方がいいかもとちょっと思いました。
また、今回のポタフェスと同時開催イベントとしてfinalが近隣のUDXプラザでハイエンドヘッドフォン試聴会を開催。
他のメーカーとのタイアップしながら予約制で開放型をゆっくり聴くと言うコンセプトのようです。
私はWeiss DAC502でQobuz音源を試聴。
かなり性能の高いプロ用DACなので音がわかりやすく。D8000 DCとDC PROの差がよく分かりました。
音はProの方がよりフラットで細身でシャープでアタックも鋭い感じ。通常モデルもそれだけで聞くと十分にHIFI系ですが、Proと比べるとよりふくよかでリスニング寄りの音です。低域のアタックはProよりはおとなしめに感じます。
このほかにもSendy Audioにインタビューなどを行いましたが、これはまた別の機会に。
2024年12月07日
MQAのQRONO d2a技術とは何か、技術白書からの考察
先日発表されたMQA Labsの新技術、QRONOラインナップのひとつである「QRONO d2a」技術とは"d2a(Digital to Analog)"という名称から、DA変換に関する技術であることは容易に想像がつきます。またQRONOは時間を意味するChronoのアナグラムであり、時間に関する技術とも推測できます。
端的にいうとQRONO d2aとは、DACにカスタマイズしたデジタルフィルターです。それでは従来のものとはどのように違うのかというところをMQA Labsの発行した技術白書から考察します。
まず技術白書のサブタイトルが「アナログの魂を持つデジタルオーディオ」というところからも「QRONO d2a」の目指すところが推し量れると思います。
前書きではアナログオーディオからデジタルオーディオに移行して、数値的には性能が改善されたが、音は生き生きとしたものではなかった。それを聴覚的に探っていくところから始まったとあります。
まず従来のデジタルフィルターはデジタル変換に起因する問題(エイリアシング)を避けて、測定的な数値を向上するのが目的であり、そのことが副作用としての時間的なスミア(にじみ)を生じていたとしています。これは「ブリックウォール(レンガ壁)」設計ともいうべきもので、特定の周波数を壁のように急峻に切り立たせています。
なぜブリックウォールにすると時間的な滲みが出るかというと、車が道路の段差を通過する際、段差を超えた後も車が長時間揺れ続けるようなものです。この揺れが音のスミアに相当します。スミアとは絵の線がぼやけてしまうようなもので、この揺れはデジタルのアーティファクト(副作用)でよく出てくるポスト・リンギングでもあります。ポスト・リンギングは実際の音の後に聞こえないはずの音が生じることです。実際の音の前に音が聞こえるプリ・リンギングは車の例えでは表せませんが、それはつまり自然界にない不自然なものだということです。それゆえプリ・リンギングの方がより悪質です。
「QRONO d2a」はこうした当たり前と思われていたデジタルっぽさにメスを入れたものです。つまりプリリンギングは生じないようにし、スミア、ポストリンギングも最小に抑えるということです。
従来のフィルターは周波数に関係なく一様に適用されていましたが、これは88kHzなど高解像度の音楽信号に対してフィルターが過剰に働きすぎて(不要な処理を行い)、音質に悪影響を与えることがあるいうことです。それに対してQRONO d2aのフィルターは、88kHz以上についてサンプリング周波数に合わせて最適化されて設計されています。
次にノイズシェーピングを用いて信号の低レベルの部分を可聴帯域外に移動し、その部分をノイズマスキングします。低レベルの信号がマスクされるということは、データのビット数の下位ビット(24ビット目など)があまり重要ではなくなるということです。低レベルの信号部分はDACの精度が低いので、これはDAC自体のみかけの性能を向上させるのに役立ちます。つまりDAC性能のもっとも美味しい部分を取り出しやすくなり、それゆえにQRONO d2aのフィルターはDACハードに応じてカスタマイズされた設計になっています。
つまりQRONO d2aとは、入力周波数ごとにそのDACの最も美味しいところを取り出すことのできるデジタルフィルターということができます。
48kHz(左)と192kHzにおける従来フィルター(赤)とQRONO d2a(緑)の違い
(MQA Labs WHITE PAPERより)
それでは実際にどのような効果があるかというと、上の技術白書のデータに表れています。
どちらも赤線が従来のDACの内蔵フィルターで、緑線がQRONO d2aフィルターです。QRONO d2aは48kHzでは従来のフィルターに対して1/2の時間で鳴り止んでいます。そして192kHzでは1/20もの短さで鳴り止んでいます。つまりQRONO d2aはハイレゾ領域でより有効に機能するということができます。
MQA labsではQRONO d2aによるCDレベルの再生は、従来の96kHzハイレゾファイルの時間応答に相当し、QRONO d2aで再生した192kHzハイレゾファイルは、最高のアナログ・システムの時間性能を超えるとさえ語っています。
聴覚上の効果としては、以前は不明瞭だったテクスチャーが明らかになり、ミクロレベルのダイナミクスが改善され、楽器の輪郭がはっきりし、ステレオの音場とイメージが向上するとしています。それによって音楽は自然に再生され、臨場感が増し、リスナーの疲労を軽減するということです。
まとめると、QRONO d2aとは数値的に優れたデータそのままの音再現よりも、音楽を聴いたときの音の良さを最大限に引き出すための技術ということができると思います。
またQRONO d2aが下位ビットを使わないで高音質を志向すると言うことは、MQAが下位ビットにデータを埋め込む技術であることを考えると、MQAの互換性を保ちながらも、その制約を克服してさらに高音質を目指した進化系の技術と言うことが考察できると思います。
端的にいうとQRONO d2aとは、DACにカスタマイズしたデジタルフィルターです。それでは従来のものとはどのように違うのかというところをMQA Labsの発行した技術白書から考察します。
まず技術白書のサブタイトルが「アナログの魂を持つデジタルオーディオ」というところからも「QRONO d2a」の目指すところが推し量れると思います。
前書きではアナログオーディオからデジタルオーディオに移行して、数値的には性能が改善されたが、音は生き生きとしたものではなかった。それを聴覚的に探っていくところから始まったとあります。
まず従来のデジタルフィルターはデジタル変換に起因する問題(エイリアシング)を避けて、測定的な数値を向上するのが目的であり、そのことが副作用としての時間的なスミア(にじみ)を生じていたとしています。これは「ブリックウォール(レンガ壁)」設計ともいうべきもので、特定の周波数を壁のように急峻に切り立たせています。
なぜブリックウォールにすると時間的な滲みが出るかというと、車が道路の段差を通過する際、段差を超えた後も車が長時間揺れ続けるようなものです。この揺れが音のスミアに相当します。スミアとは絵の線がぼやけてしまうようなもので、この揺れはデジタルのアーティファクト(副作用)でよく出てくるポスト・リンギングでもあります。ポスト・リンギングは実際の音の後に聞こえないはずの音が生じることです。実際の音の前に音が聞こえるプリ・リンギングは車の例えでは表せませんが、それはつまり自然界にない不自然なものだということです。それゆえプリ・リンギングの方がより悪質です。
「QRONO d2a」はこうした当たり前と思われていたデジタルっぽさにメスを入れたものです。つまりプリリンギングは生じないようにし、スミア、ポストリンギングも最小に抑えるということです。
従来のフィルターは周波数に関係なく一様に適用されていましたが、これは88kHzなど高解像度の音楽信号に対してフィルターが過剰に働きすぎて(不要な処理を行い)、音質に悪影響を与えることがあるいうことです。それに対してQRONO d2aのフィルターは、88kHz以上についてサンプリング周波数に合わせて最適化されて設計されています。
次にノイズシェーピングを用いて信号の低レベルの部分を可聴帯域外に移動し、その部分をノイズマスキングします。低レベルの信号がマスクされるということは、データのビット数の下位ビット(24ビット目など)があまり重要ではなくなるということです。低レベルの信号部分はDACの精度が低いので、これはDAC自体のみかけの性能を向上させるのに役立ちます。つまりDAC性能のもっとも美味しい部分を取り出しやすくなり、それゆえにQRONO d2aのフィルターはDACハードに応じてカスタマイズされた設計になっています。
つまりQRONO d2aとは、入力周波数ごとにそのDACの最も美味しいところを取り出すことのできるデジタルフィルターということができます。
48kHz(左)と192kHzにおける従来フィルター(赤)とQRONO d2a(緑)の違い
(MQA Labs WHITE PAPERより)
それでは実際にどのような効果があるかというと、上の技術白書のデータに表れています。
どちらも赤線が従来のDACの内蔵フィルターで、緑線がQRONO d2aフィルターです。QRONO d2aは48kHzでは従来のフィルターに対して1/2の時間で鳴り止んでいます。そして192kHzでは1/20もの短さで鳴り止んでいます。つまりQRONO d2aはハイレゾ領域でより有効に機能するということができます。
MQA labsではQRONO d2aによるCDレベルの再生は、従来の96kHzハイレゾファイルの時間応答に相当し、QRONO d2aで再生した192kHzハイレゾファイルは、最高のアナログ・システムの時間性能を超えるとさえ語っています。
聴覚上の効果としては、以前は不明瞭だったテクスチャーが明らかになり、ミクロレベルのダイナミクスが改善され、楽器の輪郭がはっきりし、ステレオの音場とイメージが向上するとしています。それによって音楽は自然に再生され、臨場感が増し、リスナーの疲労を軽減するということです。
まとめると、QRONO d2aとは数値的に優れたデータそのままの音再現よりも、音楽を聴いたときの音の良さを最大限に引き出すための技術ということができると思います。
またQRONO d2aが下位ビットを使わないで高音質を志向すると言うことは、MQAが下位ビットにデータを埋め込む技術であることを考えると、MQAの互換性を保ちながらも、その制約を克服してさらに高音質を目指した進化系の技術と言うことが考察できると思います。
2024年12月06日
MQA LabsがQRONOを市場投入、Bluesoundの新製品に搭載
またMQAに動きがありました。
まずここまでの流れを整理すると、2023年の9月にMQAはカナダのLenbrookグループに買収されます。レンブルックグループは傘下にBluesoundやNAD、PSB Speakersなどのオーディオブランドを擁しています。
アスキー記事: カナダのLendbrookがMQAを買収
その後に今年のCES2024直前の1月、再スタートすることをリリースで宣言しています。
アスキー記事: MQAのその後、衝撃の経営破綻から買収、再スタートへ
このリリースでは"監督"するに"oversee "というニュアンスを使ったことから、MQAの独立性に考慮してMQAには組織としての独立性には介入しないが戦略に関しては口を出すというようなスタンスでいると考えられます。MQAの業界スタンダードのポジションを考慮したと考えられます。
そして今年(2024年)の6月にはMQAの中核技術が「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」という3つの技術であることをリリースで表明しています。
アスキー記事: MQAに新動向、MQA技術の先にある「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」とは?
「AIRIA」はワイヤレスを考慮したMQAの延長線であるSCL6のリブランドであると考えられます。ただし残りの「FOQUS」と「QRONO」についてはあまり情報はなく、「FOQUS」はアナログ/デジタル変換における革新的なアプローチ、「QRONO」は再生機器内で様々なオーディオ処理を強化するものであるとだけアナウンスがありました。
ただし名称から推測すると、FOQUSは焦点が定まったという意味のFocus、QRONOは時間を意味するChronoに由来する造語と考えられます。つまりFOQUSはなんらかの解像度を上げる処理、QRONOはMQAのフィルタリングがそうであるような時間領域に関する処理であると推測できます。
そして12月5日、MQA Labは「QRONO」についての詳細を発表しました。
MQAニュースリリース: QRONO by MQA Labs Hits the Market (MQA LabsがQRONOを市場投入)
それによると「QRONO」ラインナップの中の「QRONO d2a」と「QRONO dsd」という二つの技術を発表しています。これらは(レンブルック傘下である)Bluesoundの新しいストリーマー(ネットワークプレーヤー)である「NODE ICON」に搭載されます。
端的にいうと、QRONO d2aはDACのフィルターと交換できる(DACハードに応じた)カスタムのデジタルフィルター、QRONO DSDは軽量なDSD/PCMコンバーターです。
MQA Labsのエンジニアリング・ディレクターであるAl Wood氏は次のように語っています。
「QRONO はハードウェアパートナーおよびライセンシーにソリューションを提供するプラットフォームです。我々は基本的な信号処理技術の緻密な適用に重点を置いています。これらには各DACチップから最高の性能を引き出すため、デジタル・アナログ変換の全体的なインパルス・レスポンスと透明性を向上させるフィルターやノイズ・シェイパーが含まれます。DSD変換は可能な限り軽く処理され、録音における重要な時間要素の細部までをすべて保持します。そしてBluesoundのNODE ICONにQRONOを統合した音質に満足しています」
MQA Labsのビジネス開発ディレクターであるAndy Dowell氏は次のように付け加えています。
「人間の聴覚は特に細かいディテールを聴くときにこれまで理解されていたよりもはるかに正確です。MQA Labsチームの専門知識をオーディオ再生の改善に応用することで、技術がユーザーの体験を向上させ続けるHiFi業界の繁栄というレンブルックのビジョンをさらに推し進めることができます」
このコメントはMQAのボブスチュアートがたびたび語っていたMQAの時間的処理の重要性と同じです。
BluesoundのNODE ICONはEversolo DMP-A8やA6に似た大きな液晶画面を搭載したネットワークプレーヤーです。ES9039Q2M DACをデュアル搭載し、ヘッドフォンアンプにTHX AAAを採用しています。
現在はプリオーダーとなっていますが、価格はUSD1399とあります。Bluesoundとしては新しいフラッグシップとなります。現行のNODEモデルはDSD対応がないようですが、その対応として今回の「QRONO dsd」の搭載に至ると考えられます。
https://www.bluesound.com/zz/node-icon?srsltid=AfmBOoqW2xl14dqoSZPZ7Hp8zz-u4mdLpBDgWACvBG4Kt07dBgETXMBe
MQA LabsではQRONO技術は、(デジタルでありながら)最高のアナログ・システムをさえ超える時間的性能を可能にするとしています。MQA LabsはCES、NAMMおよびISEに出展するとのことです。
まずここまでの流れを整理すると、2023年の9月にMQAはカナダのLenbrookグループに買収されます。レンブルックグループは傘下にBluesoundやNAD、PSB Speakersなどのオーディオブランドを擁しています。
アスキー記事: カナダのLendbrookがMQAを買収
その後に今年のCES2024直前の1月、再スタートすることをリリースで宣言しています。
アスキー記事: MQAのその後、衝撃の経営破綻から買収、再スタートへ
このリリースでは"監督"するに"oversee "というニュアンスを使ったことから、MQAの独立性に考慮してMQAには組織としての独立性には介入しないが戦略に関しては口を出すというようなスタンスでいると考えられます。MQAの業界スタンダードのポジションを考慮したと考えられます。
そして今年(2024年)の6月にはMQAの中核技術が「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」という3つの技術であることをリリースで表明しています。
アスキー記事: MQAに新動向、MQA技術の先にある「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」とは?
「AIRIA」はワイヤレスを考慮したMQAの延長線であるSCL6のリブランドであると考えられます。ただし残りの「FOQUS」と「QRONO」についてはあまり情報はなく、「FOQUS」はアナログ/デジタル変換における革新的なアプローチ、「QRONO」は再生機器内で様々なオーディオ処理を強化するものであるとだけアナウンスがありました。
ただし名称から推測すると、FOQUSは焦点が定まったという意味のFocus、QRONOは時間を意味するChronoに由来する造語と考えられます。つまりFOQUSはなんらかの解像度を上げる処理、QRONOはMQAのフィルタリングがそうであるような時間領域に関する処理であると推測できます。
そして12月5日、MQA Labは「QRONO」についての詳細を発表しました。
MQAニュースリリース: QRONO by MQA Labs Hits the Market (MQA LabsがQRONOを市場投入)
それによると「QRONO」ラインナップの中の「QRONO d2a」と「QRONO dsd」という二つの技術を発表しています。これらは(レンブルック傘下である)Bluesoundの新しいストリーマー(ネットワークプレーヤー)である「NODE ICON」に搭載されます。
端的にいうと、QRONO d2aはDACのフィルターと交換できる(DACハードに応じた)カスタムのデジタルフィルター、QRONO DSDは軽量なDSD/PCMコンバーターです。
MQA Labsのエンジニアリング・ディレクターであるAl Wood氏は次のように語っています。
「QRONO はハードウェアパートナーおよびライセンシーにソリューションを提供するプラットフォームです。我々は基本的な信号処理技術の緻密な適用に重点を置いています。これらには各DACチップから最高の性能を引き出すため、デジタル・アナログ変換の全体的なインパルス・レスポンスと透明性を向上させるフィルターやノイズ・シェイパーが含まれます。DSD変換は可能な限り軽く処理され、録音における重要な時間要素の細部までをすべて保持します。そしてBluesoundのNODE ICONにQRONOを統合した音質に満足しています」
MQA Labsのビジネス開発ディレクターであるAndy Dowell氏は次のように付け加えています。
「人間の聴覚は特に細かいディテールを聴くときにこれまで理解されていたよりもはるかに正確です。MQA Labsチームの専門知識をオーディオ再生の改善に応用することで、技術がユーザーの体験を向上させ続けるHiFi業界の繁栄というレンブルックのビジョンをさらに推し進めることができます」
このコメントはMQAのボブスチュアートがたびたび語っていたMQAの時間的処理の重要性と同じです。
BluesoundのNODE ICONはEversolo DMP-A8やA6に似た大きな液晶画面を搭載したネットワークプレーヤーです。ES9039Q2M DACをデュアル搭載し、ヘッドフォンアンプにTHX AAAを採用しています。
現在はプリオーダーとなっていますが、価格はUSD1399とあります。Bluesoundとしては新しいフラッグシップとなります。現行のNODEモデルはDSD対応がないようですが、その対応として今回の「QRONO dsd」の搭載に至ると考えられます。
https://www.bluesound.com/zz/node-icon?srsltid=AfmBOoqW2xl14dqoSZPZ7Hp8zz-u4mdLpBDgWACvBG4Kt07dBgETXMBe
MQA LabsではQRONO技術は、(デジタルでありながら)最高のアナログ・システムをさえ超える時間的性能を可能にするとしています。MQA LabsはCES、NAMMおよびISEに出展するとのことです。
2024年12月05日
nwmブランドの新世代新製品「nwm DOTS」、「nwm WIRED」レビュー
nwm(ヌーム)はNTTソノリティが販売するブランドで、オープンイヤー型ながら周囲に音漏れがしない技術「PSZ」を特徴としています。端的に説明すると「PSZ」は背圧を逆相の音として放射して周囲の漏れを打ち消すという仕組みです。
そのnwmブランドの新製品が先日発売されました。オープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤフォン「nwm DOTS(ヌーム・ドッツ)」(市場価格24,200円)と安価な有線イヤフォン「nwm WIRED(ヌーム・ワイヤード」(市場価格4,950円)です。NTTソノリティでは耳スピーカーと呼んでいます。
nwm DOTS(左)、nwm WIRED
研究所のスピンオフ製品を思わせるように以前のnwm製品はいささか実験機的な性格がありました。以前のnwm製品についてはアスキーに書いた記事を参照ください。
音もれを打ち消す、ながら聴きイヤホンの新提案、NTTソノリティ「nwm MBE001」
それと比較すると、今回の製品は「nwm DOTS」、「nwm WIRED」共に同級の他社製品と比較してもイヤフォン製品として十分に完成度が高い本格的な製品群になっているのが特徴です。
デモ機を貸し出してもらったので、本稿ではインプレッションを中心に書いていきます。
* 「nwm DOTS」
オープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤフォン「nwm DOTS」はPSZ技術の他にもデザインとカラーリングの点でとても個性的なイヤフォンです。円を基調とした個性的なデザインは"DOTS"の名前とともに点と点が繋がるという意味合いを込めているということです。「nwm DOTS」は通話性能も高く、NTTのもう一つのコア技術である「Magic Focus Voice」を搭載して通話品質を向上させています。
ドライバーの口径は旧モデルと同様に12mmですが、新規開発により以前のモデルよりも音質・音圧を向上させている点がポイントです。特に一般に低音として知覚する100Hz付近のレスポンスを上げたということです。
またPSZの音漏れ低減効果も従来より改善されています。DSPを使って逆相音を出すイヤフォンとは違い、PSZは音響のみで逆相音を実現しているのがポイントですが、その分でPSZの性能向上は単にDSPの性能を上げれば済むというものでもありません。このことを開発元に聞いたところ次のコメントをいただきました。
「音響シミュレーションをデザイン時点から活用し、新規開発ドライバの実力を十分に引き出せるよう音響構造や逆相放射用の穴形状、位置などを工夫・改善しています。実際、nwm DOTSの逆相用の穴はデザインに合わせてかなり複雑な配置・形状になっています。nwm WIREDの逆相穴に関してもデザインに馴染むよう、旧モデル(nwm MWE001)よりもすっきりした印象になっていると思います」
確かに逆相穴は筐体の周囲に開いているのですが、違和感のあるものではありません。
実機を見ると以前のものよりも普通のイヤフォンという感じです。むしろ円のデザインが印象的で、市販のカジュアルなイヤフォンという印象を受け、PSZのような特徴的な技術が隠されているようには見えません。充電機能付きのケースも前よりもコンパクトになっていて実用的です。
本体はとても軽量で装着感はほとんどありません。極めて快適でオープンイヤータイプの中でも装着感はかなり良いと思います。この装着性の秘密として、「nwm DOTS」ではイヤーフックが特徴的で、普通のイヤーピース(テールチップ)をはめ込んでクッション代わりにし、さらに大きさも調整できるという特徴を備えています。このイヤーピースを使ったクッションがとても良くできているわけです。
また「nwm DOTS」を使い始める時にまず悩むのはこのイヤーピースの大きさの選択と、前後の位置です。大きい方がクッション効果が高いと思うけれども、まず耳のサイズに合わせて選ぶのが基本だと思います。またクッションの大きさで耳への距離が多少変わるので音も少し変わります。小さい方がより音の広がりがよく感じられ、大きい方が普通のイヤフォンに近く密度感があるように感じられます。
またイヤフックの前後でのイヤピースの装着位置も変更できます。個人的にはイヤフックは耳たぶがしっかり円弧に収まるように装着した方が良く、イヤーピースは少し後ろ側に装着した方が良いと感じましたが、耳の形は千差万別なのでここは試行錯誤しながらベストポジションを決めていくのも楽しみの一つでしょう。
音質についてもかなり優れています。同クラスの他のオープンイヤー型と比べても遜色ありません。独特の開放的な音の広がりが良く、クリアで解像力も高く感じられます。低音はオープンイヤー型らしく軽めですが、パンチがあり引き締まっています。中高音域は普通のイヤフォンと遜色ないくらいの高い音質があると思います。特にピアノの音色が美しく感じられます。弦楽器を聴いても音色が気持ち良く、基本的な音の解像感とか歪みの少なさなど音性能は高いと思う。ベルの音が美しく響くのは歪み感が少ないからでしょう。音色はニュートラルでヴォーカルもクリアでよく歌詞が明瞭に聴き取れます。ロックでも重低音中心でなければスピード感があり、パワフルな感じは十分に楽しめます。
また従来のイヤフォンに比べると、周りの音がそのまま入ってくると同時に、いままでにないような空間が開けていて開放的な音空間が楽しめます。まるで音楽が周囲に溶け込んでいるような感覚にも陥る。中高音域は音質もしっかりしているので、不思議なリアル感が味わえます。
それと高音域にきつい刺激的な音が少ないのも特徴です。これは耳を塞がないことによるもののように思います。
独特の音の開放感とヴォーカルの聴き取りやすさと楽器音の美しさはこのイヤフォンの長所です。例えばエリックサティの音楽を聴きながら原稿を作成するなどの用途にはうってつけです。
最近発売されたIsabelle Lewis「Greetings」では個性的なヴォーカルと軽いビート感、深みのある落ち着いた曲調が心地よさを感じさせ、ファミレスで聴いていてもどこか別空間に誘われるような感覚を受けます。
作業に向いているApple Musicの「チル・ミックス」をしばらく聴いていたが、あまり低音が足りなくて不満になるケースはなかったですね。録音の優れた曲も多いのですが、音質もミドルクラスのワイヤレスイヤフォンとしては十分に満足できます。ただし曲にウッドベースが入るようなジャズヴォーカルでは少し物足りなさはあります。
アニソンではやはり重低音はありませんが、女性ヴォーカルがとてもクリアで声が聴き取りやすいので、イヤフォンで中高域を重視して選ぶ人には向いていると思う。
音漏れはファミレスであれば多少音量をあげていても隣のテーブルで聴こえることはまずないと思います。数十センチ離れるとかなり聞こえにくいので隣の席でもかなり聴き取りにくい程度にはなるでしょう。
また細かい点ですが、操作性が良くタッチの感度が良いのも特徴的です。ただし普通の完全ワイヤレスとはフェイスプレートの位置が違うので多少の慣れが必要です。
* 「nwm WIRED」
オープンイヤー型の有線イヤフォン「nwm WIRED」は価格が安く試しやすい点がポイントで、PSZイヤフォンのエントリーモデルとして捉えることができます。
有線なので低遅延が重要なゲームで使いたいというときにも使えるでしょう。またPCの3.5mm端子にも使えるので汎用性は高いのも特徴です。後で書きますが、エントリーモデルにしては音質が高いのも特徴といえます。
Macbook Air(M2)の3.5mm端子で聴いてみました。装着感は良く、周りの音はやはり全て聞こえてきます。
低価格モデルという先入観から音は期待できないと初め思いましたが、予想外に音がよいと感じました。安価な製品にありがちな音の雑味が少なく、中高域中心ならオーディオが好きな人でも気持ちよく聴くことができます。
こちらも原稿執筆中にApple Musicの「チル・ミックス」を聴きながら試してみましたが、滑らかで広がりが感じられる音質で、自然な音場感が感じられます。また弦が擦れるような音までわかる十分高い解像力を持っています。高音域の音がとてもクリアで、ベルの音が心地よく響く。サックスなど楽器音はリアルに聴こえます。ピアノの音色がとても美しく感じられる。
音質に関しては先に書いた「nwm DOTS」との共通点が多いと思います。
オープンイヤー型とはどういうものか、PSZとはどういうものか興味を持っているが高価だと試しにくいと思っているユーザーが試してみるのにもよいでしょう。
* まとめ
nwmブランドのイヤフォンはヘッドフォン祭で初めて披露された時からチェックしていますが、今回の新製品は「nwm ONE」も含めてnwmブランドの第二世代という感じがします。
また発売は先になりますが、「nwm GO」というアウトドアの釣りとかジョギングに向いたモデルが用意されています。もともとビジネス用だったnwmブランドの適用範囲がさらに拡大して行くようです。先日NTT武蔵野研究所の見学をした際にも「nwm」製品が単に音楽を聴くだけではなく、インフラの一部としても機能するということがわかりました。様々な今後の展開にも要注目です。
もう一つのMEMSスピーカーのメーカー「USound」の記事をPhilewebに執筆
もう一つのMEMSスピーカーのメーカー「USound」の記事をPhilewebに執筆しました。
MEMSスピーカーに興味のある方はご覧ください。
https://www.phileweb.com/sp/review/column/202412/05/2485.html
MEMSスピーカーに興味のある方はご覧ください。
https://www.phileweb.com/sp/review/column/202412/05/2485.html
FIIOのヘッドホンアンプ「K11」の通常版とR2R版の違いの記事をPhilewebに執筆
FIIOのヘッドホンアンプ「K11」の通常版とR2R版の違いの記事をPhilewebに執筆しました。
https://www.phileweb.com/review/article/202412/03/5784.html
https://www.phileweb.com/review/article/202412/03/5784.html
Shanling「EC Smart」の記事をPhilewebに執筆
Shanlingのスマートなデザインでかつ音も良いCDプレーヤー「EC Smart」の記事をPhilewebで執筆しました、
https://www.phileweb.com/review/article/202411/11/5783.html
https://www.phileweb.com/review/article/202411/11/5783.html