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2024年11月19日

Softears開発者インタビュー

先日当ブログでSoftears「Enigma」のレビューを書きました。実際に聴いてみるとかなり特徴のあるメーカーだと思いましたが、開発者たちが先日のヘッドフォン祭の時に来日した際にインタビューをしました。以下はそのインタビューとメールでのやり取りから構成した内容です。

Softears製品は国内ではJaben Japanから購入できます。
https://jabenjapan.thebase.in

* Softears開発メンバーインタビュー

今回来日したメンバーの名前と担当は以下の通りです。

来日メンバー.jpg
(左から) ゼネラルマネージャ:杜(Crade Dio)、創業者・主任技術者:NKウォン(NK WONG)、海外担当マネージャ:翁昊(Hao Weng)

Q: みなさんが来日した今回の目的を教えてください

ヘッドフォン祭に参加して日本市場を調査するために来日しました。我々はこれから日本市場にもっと深く参入したいと考えています。

Q: Softearsの設計哲学について教えてください

まず我々の目標は中国を代表するハイエンド・カスタム・イヤホン・ブランドになることです。Softearsのスローガンは 「HEAR THE TRUTH (真実を聴く)」で、創業者のNKウォンは完璧をあくなき追求する人物であり、その性格はビジネスへのアプローチにも反映されています。彼はSoftearsが発売するすべての製品に美的な感覚も追求し、(音的に)クリアなモデルは見た目でも透明に見えるように作ろうとしています。接着部から隙間に至るまで、細部に至るまで綿密に管理され、そのすべてが均質でなければならないわけです。品質基準の適合度合いについては国や業界の基準を超えています。このように目に見える部分と見えない部分の両方で考え抜かれた設計がなされ、イヤホンひとつひとつが優れた職人技として扱われなければならないと考えています。
Softearsはクラフトマンシップの精神を持ち、常に卓越性を追求し、消費者に高品質でハイエンドの中国製イヤホンを提供することに尽力しています。

Q: Softearsのこれまでの歩みについて教えてください

創業者のNKウォンはイヤホンの研究開発で10年の経験を持っています。当初、Softearsは深センの華強北にあるスタジオとして、カスタムオーダーを受けるところからスタートしました。しかし、より大きな飛躍のためNKウォンは、自社ブランドの設立を決意。彼はMoondrop(水月雨)のCEO鄭氏とも協力し、成都に移ってSoftearsを設立しました。
2017年に設立されたSoftearsは、1000平方メートルの工場を拠点に、研究開発、撮影、販売、生産、管理、財務、倉庫スタッフを含む40人以上の従業員を擁しています。
いまでは優れた設計と革新的技術のおかげで、我々は国家ハイテク企業として認められるようになりました。

Q: Softearsの現在の業務について教えてください

我々はイヤホンの設計、チューニング、オーディオ検査機器の開発を専門とし、はダイナミックドライバー、バランスド・アーマチュア、その他各種スピーカーの開発にも注力しています。Softearsは若い会社ですが経験豊富な企業として、研究開発、製造、販売を総合的に行っています。我が社は独立した問題解決能力と研究開発能力、標準化された業務手順を有しています。また、2台の小型5軸CNC精密フライス盤や10台の3Dプリンターなど、さまざまな研究開発支援設備も保有しています。
Softearsは自社開発の他にOEMとODMサービスも行っており、国内外の数多くのブランドに研究開発と製造を提供しています。我々はほぼすべてのインイヤーモニタービジネスのニーズにワンストップソリューションを提供できます。

Q:Softearsの代表的なイヤフォン製品と技術について教えてください

2019年にSoftearsは最初の2つの製品、「RS10」と「ケルベロス」を正式に発売しました。特にRS10は、そのユニークで精巧な透明のデザインと、片側15個の部品からなる複雑な内部構造で際立っています。当時としては最も複雑なクロスオーバーのひとつであり、真の5ウェイ・クロスオーバーと10+1バランスド・アーマチュア・ドライバーの組み合わせが特徴です。
RS10は高音域に2基のKnowles製のBAドライバー、中音域に4基のeaudio(中国メーカー)製のBAドライバーを搭載、eaudioのドライバーはフルレンジタイプでNKウォンが設計しています。低音域には4基のSonion製BAドライバーを搭載、他にBAのパッシブドライバーを搭載しています(後述)。
中国では、オーディオファンの間でイヤホンのリファレンスとして知られるようになりました。この成功によりSoftearsは大きな注目と賞賛を集めることになったのです。その後、ユニークな外観と優れた音質の「Turii」は、さらに多くのユーザーを魅了して、高い評価を得ています。

RS10とEnigma.jpg
Softears RS10(左)とEnigma

我々は技術と革新に重点を置いています。一例を挙げるとパッシブドライバーの開発に注力していることです。Enigmaにはダイナミックドライバーのパッシブドライバーを搭載していますが、RS10には革新的なBAドライバーのパッシブドライバーを搭載しています。

Q: BAドライバーのパッシブドライバーというのは聞きなれない言葉ですが、どのようなものですか

従来のBAドライバーからコイルとアーマチュアを取り外したBAドライバーのことです。このRS10の画像をみるとBAドライバーに結線されてなく、音導管のみで接続されているのが分かると思います。
RS10.jpg RS10のパッシブBA.jpg
RS10と赤丸部分がパッシブドライバー、ちなみにRS10のシェルは空洞ではなく樹脂が詰まっています

パッシブドライバーは他のBAドライバーから発生する音圧を吸収する吸音体として効果的に機能します。これによってより良いエアフローを作ることができ、鼓膜に対する圧力を軽減でき、低音の音質を向上させることができます。

Q: 今回の新製品について教えてください

まず人気のあった「Voleme」の後継機である「Volume S」です。Volumeにはなかった音質切り替えのスイッチを搭載し、低音の量感を変えることができます。
アルミとカーボンの筐体で、ドライバー構成はBAドライバー2基、ダイナミックドライバー1基、ダイナミックのパッシブドライバーを1基搭載しています。
位相を電気的に制御する技術も採用しています。
パッシブ・ダイナミック・ドライバーは、ウール素材から作られた素材を反転させて低音ユニットのドームに配置したものです。それにより低音ユニットの高域成分を吸収し、低音をよりピュアにしてエネルギー性能を向上させます。

VolumeSb.jpg
Softears Volume S

新たなエントリーモデルは「Studio2」で、従来プロメーカー向けだったStudio4の下位機種ですが、リスニング目的にも向くように設計しました。
「22955(knowles)」、「29689(knowles)」という人気のある「クラシックな」構成に似た設計を採用しています。オールBAドライバーですが高域のBAには外部に通じるベントがあり、これによって鼓膜の負担を軽減します。

Studio2b.jpg Studio2のベント.jpg
Softears Studio2、右の写真にベント穴が見えます

またUSB/3.5mmアダプターの「S01」も販売します。我々はこれを"Softtail"と呼んでいます。軽量化を念頭に開発しました。

Softtail.jpg IMG_1058.jpeg
"Softtail" USBアダプター、右はiPhoneにSofttail経由でStudio2を接続

Q: 今後の製品計画について教えてください

今度はダイナミックドライバー構成のみのマルチドライバー機を計画しています。3-4基の帯域別のダイナミックドライバーを搭載する予定です。
ダイナミックドライバーのマルチドライバーにしたのは低音を増やすためではなく、シングルダイナミックモデルは中音域が薄くなりやすいからです。これにより解像力とヴォーカルの魅力を引き出せるでしょう。
またシングルダイナミックでハイエンドの機種も検討しています。

ワイヤレスイヤフォンについても開発しています。まだ明かせませんがとてもユニークな特徴を搭載する予定です。

Q: 最後に日本のイヤフォンファンへのコメントをお願いします

日本のみなさん、私たちは研究開発と技術に専念するブランドです。真面目に心を込めて制作していますので、みなさんに我々の製品を気に入ってもらえたら幸いです。よろしくお願いします。

* 製品インプレッション

今回の新製品をいくつか聴かせてもらったので、そのインプレッションを最後に掲載します。

「Volume S」はクリアで鮮明な音で、低音のパンチが気持ち良いサウンドです。ヴォーカルの明瞭感も高く、全体にリスニングよりのサウンドです。
スイッチを切り替えて「クラシック」モードにすると低音が減ることで低域の量感が変化します。

「Studio」はプロ機ベースらしく、モニターライクなサウンドでスピード感があります。すっきりとした音調で音楽聴くにも躍動感があって歯切れが良い。音の開放感がある。解像度が高い。

それと「Softtailアダプター」も小さい割に優れた音質で躍動感があります。

Softearsはとてもユニークな技術を持っている技術志向のメーカーだと感じました。これからの展開にも期待できるメーカーです。



posted by ささき at 06:16 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする