Music TO GO!

2024年11月05日

ヘッドフォン祭2024秋レポート

先週末に恒例のヘッドフォン祭が開催されました。場所は今回もステーションコンファレンス東京で、約80社が展示しました。いくつか興味をひいたものを紹介します。

まずDITA AudioではCEOダニー氏が来日、注目の新モデル「KA1」についていろいろ詳しく聞くことができました。
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まずKA1のヘッドバンド付きでイヤーピース無しというセミオープンのコンセプトについては、アイディアとしては最近流行りのフルオープンタイプのように外の音を聞くことができる開放型イヤホンというコンセプトです。しかし、フルオープンだと低音のコントロールができないので、そこはDITAらしく音質を高めるためにセミオープンという形式を採用したとのこと。
日本の地下鉄でも使用できるだろうということ。音漏れも最小限とのことです。
実際に低音もよく出るようです。ドライバーはダイナミックで、詳細は明かせませんがかなり良いものを使用していますので音質は期待できます。
もう一つのポイントはケーブル端子がMMCXと2ピンの二つあるということです。これは音質重視のイヤフォンなので、どちらでもケーブルが使えるようにするという意味もありますが、ポイントは2ピンが側面についているということで、これはShure掛けを可能にするとともに、フォステクスTM2やiFi GO PodなどのTWSタイプのBTアダプターを使用可能とするためだそうです。
このほかにも稼働部はかなり考え抜かれた設計になっており、多機能性も期待できます。価格はターゲット価格がUSD299近辺ということです。

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DITA KA1プロトタイプ

DITA Audioはこのほかにも「Mecha」という新製品が登場。
比重がアルミニウムの約半分という超軽量なLiMa(リチウムマグネシウム)合金振動板+高効率デュアルマグネットを採用したメカっぽいイヤホンです。ちなみにDITA Audioの関連会社は金属加工に長けています。価格は12万前後とのことで、音はシャープで鮮明、クリアな音で、ニュートラル傾向でした。

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DITA Mecha

finalでは11月14日に発売される「A6000」がおそらく関東初出展ではないかと思います。かなり小さく、低域も深く中高域もシャープです。A4000の上位機種という感じで、音傾向はA4000に似ているがより高品質なサウンドという感じでした。A3000とはちょっと違うように思います。
また高音質TWSの草分けだった「ZE3000」にANCがついた「ZE3000SV」も展示。ANCは音質重視でマイルド調整ということ。ANC以外にも音質はより向上していて、よりクリアで特に空間再現力が高くなったように思います。

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fina A6000(左)とZE3000SV(右)


次にお馴染みのFitEarですが、今回は一層怪しい「謎のイヤフォン・大」と「謎のイヤフォン・小」を展示。
これはいままでのFitEarにない設計を試行したもので、特に大きい方は新設計のフィット感を試してほしいとのこと。小さい方はIMargeに似た造形のようです。
どちらもノズルの音導管の奥に「白い何か」が詰まっているのが特徴で、これも新採用のようです。
聴いてみると、両方とも今までのfitearとちょっと違うサウンドで、最近のシャープ傾向の堀田サウンドよりも柔らかくリッチで、開放感が感じられます。大きい方はより音楽的で、装着感はやや大きめですが悪くはないです。小さい方は大きいのに比べると正確系ですが一般的にはリスニング寄りと思えます。

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FitEar謎のイヤフォン大小(左)と謎のイヤフォンの謎の白い何か

アユートブースではFir Audioの新製品に注目。Fir Audio「Projeck K」は全域高性能で、大きなベントホールはATOMのものだと思います。「第二の鼓膜技術」に共通したATOMらしい音抜けがよいイヤフォンでひときわクリアなリスニング寄りの音です。
Fir Audio「FR10」はエレクトロダイナミック形式というよくわからない形式のシングルドライバーですが、かなり音は良く、モニター的でやはりATOMらしく音抜けが良い印象です。
四角く回転しないMMCX端子も特徴。

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FiR Audio Project K

MUSINブースではiBasso Audioの新製品「DX340」の先行版を展示。位置付けとしてはDX260の上で、MAXラインとは異なるそう。特徴は「D16 TAIPAN」で採用された1bitディスクリートDACを採用していること。電源をデジタルとアナログで完全に分ける方式を採用し、設定画面ではDACとアンプで別々のゲインが設定できるのが面白い。
音はDX260系統の音で、より鮮明な感じです。DX260は音が細かい、DX340は音がシャープという感じでしょうか。

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iBasso DX340

Jaben JapanのブースではSoftearsの新製品を展示。「Volume S」は人気のあったVolumeの後継機ですが大幅に改良されています。低音の強さを二種類選べるスイッチ搭載。
「Studio2」はモニター傾向の音だけど躍動感があって、リスニングでも使いやすいと思います。また「Soft Tail」というUSB-C/3.5mmアダプターも展示していましたが、これは小型ながら音は良かったです。

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Softears Volume S(左)とStudio2(右)

Softearsは技術力に長けていて、「RS10」にはBAドライバーのパッシブタイプ(ダイナミックのパッシブラジエーターに相当)なども搭載しています。
下の図では赤丸のBAに結線されていないのでそれがわかります。効果についてはまた後で書きます。
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RS10と赤丸部分がパッシブBA


FIIOでは「RR11」という普通のポータブルFMラジオが展示されていたのがユニーク。日本は災害時の必要性もあって意外と出そうな気がします。

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FIIO RR11

またNIPOという中国のメーカーではヘッドフォン祭初展示となる「N2」というDAPを展示していました。
AndroidベースのDAPでES9039を搭載しています。音は解像力が高く、試聴曲の手嶌葵の声の掠れ具合もよく再現していました。ニュートラルでややドライのESSらしい音です。
また面白いのは「A100」というスティックDACとは言えませんがスマホ用のDACです。これはまだ開発中ですが、やや平たい筐体の背面が磁石(magsafe?)でスマホにくっつくというもの。音質はN2の90%近くまで持って行きたいとのこと。

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NIPO N2(左)とA100(右)

Campfire AudioではCamJamに登場していた「Clara」は展示がありませんでした。

今回は平面磁界型イヤフォンの共演も聴きどころでした。Campfire Audioの「Astrolith」の他に、ミックスウェーブでは64 Audioの初の平面磁界型イヤフォン「SOLO」を展示。
どちらかというとリスニングよりの音で、音が速いのもAstrolithと似ています。歯切れが良く、低音もたっぷり出ていて、パンチが強く、正確性も高いのもAstrolithと共通の特徴に思えます。ただ高域がややきつい点があり、ここは2wayで高域専用チャンバーのあるAstrolithに部がありそうです。ちなみにSOLOも高域で共振するヘルムホルツ・レゾネーター方式のチャンバーを備えています。
FIIOも「FP3」という平面型のイヤホンを展示していました。こちらもクリアさが高く、きれいなサウンドが楽しめました。

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64 Audio SOLO(左)とFIIO FP3(右)

こうした平面型イヤフォンの音質性能の高さを考えると、今後ともますます平面磁界型イヤホンが加熱していくのかもしれません。
posted by ささき at 11:58 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする