先日qdcの新製品であるWHITE TIGERが発売されました。まずWHITE TIGERのことを語る前に共通部分を説明する意味でもTIGERについて述べます。
* TIGER
TIGERは中国のプロフェッショナル・オーディオ市場において大きなシェアを持つqdcが昨年の寅年を記念して開発したハイエンドのマルチドライバー・ユニバーサルイヤフォンです。
2022年10月8日に発売された製品で直販価格は247,500円 (税込)です。
TIGER
TIGERではシェルが通常のアクリルではなく、硬度の高い金属のチタン製です。フェイスプレートの部分が虎縞の模様に繰り抜かれてローズゴールドの中層が透けて見え、虎を想起させる独自性のあるデザインもユニークです。
TIGERでは6 基の BA ドライバーと 2 基の静電(EST)ドライバーによる片側合計 8 基のハイブリッド構成を採用しています。TIGERにおいては低域部分もBAドライバーが担当しています。クロスオーバーはAnole V14 と同じ 4wayタイプで、これにより10Hz - 70kHzというかなり広い帯域特性を得ているとのことです。
TIGERの内部構成図
標準ケーブルは3in1タイプの交換式プラグを採用し、3.5mmアンバランス・2.5mm4 極バランス、4.4mm5 極バランスの三種類に交換が可能です。イヤフォン側の端子は2ピンでソケットを使用して確実に装着するタイプです。
TIGERはダブルフランジ・イヤーピースの出来が良く、ノズルの部分がうまく耳穴にフィットするので、イヤーピースがいつもよりひとサイズ小さくても良いくらいです。わたしはダブルフランジが苦手なのだけど、これはシングルみたいにうまくフィットしますね。
この装着性の良さと金属のシェルのおかげでTIGERは極めて遮音性の高いユニバーサルイヤフォンになっています。電車内で使うとANCなみに音が低減できるほど。これは音量をあまり上げなくて済むとともに、入ってくるノイズを小さくできるので細かな音の再現性でも有利となりますね。
* オリジナルTIGERの音質
音質はとても先鋭的な音で透明感が高く感じられます。また音場がとても広い感じがします。オールBAという印象よりはずっと低域はたっぷり出ている感じです。全体的にはすっきりと端正で原音忠実度の高いサウンドだと思います。
中高音域はシャープで切れ味が良いけれども、刺さるようなきつさを感じないのはチューニングの巧みさを感じさせます。楽器音はきわめて美しく鮮明で、それできつさが少なく感じられます。このため弦楽器の鳴りが極めて美しく響き、演出的とか音楽的というのではなく、音が極めて純粋で澄んでいると感じさせます。中高音の上に伸びる感じがすうーっと上にどこまでも引き上げられる感じが気持ち良く感じられます。
高域のベルやハイハットの音は鮮明で倍音が感じられる鳴りの良さがあるように思います。この辺はESTの効果なのでしょうか。美しくカーンと響き、歪みが少なく端正です。高域特性は数字の上だけではなくかなり良いと思います。
TIGERとSP3000
ハイエンドイヤフォンらしく解像力の高さも特筆もので、楽器音のゴリゴリ感やヤニが飛び散る感じだけではなく、ジャズの中でミュージシャンがヤアっていう声が浮き上がって聞こえるほどです。この辺りは先に書いた外来ノイズの遮音性の高さも寄与しているでしょう。ジャズトリオの演奏などでは楽器音の切れ味の良さとともに足で思わずリズムをとってしまうほどにスピード感のノリが良い。この辺の音の特性はBAドライバーがメインであると思わせてくれます。
反面でBAドライバーがメインだと低音が物足りないかと思うかもですが、TIGERは低音の量感がたっぷりと感じられて音の深みと迫力が堪能できます。それでいて膨らまずにソリッドで引き締まって強いパンチが楽しめるのは逆にBAドライバーならではの低域表現の良い点です。
TIGERとWHITE TIGERではドライバー構成自体は同じで、音の大まかな点はTIGERとWHITE TIGERで共通しています。しかし、シェル素材が異なることと、ノズル部分の材質が異なることで音には違いが出ています。それを以降で解説していきます。
* WHITE TIGER
WHITE TIGERは2023年7月14日に発売されたTIGERのバリエーションモデルで、日本限定300台の限定製品、直販価格は198,000円(税込)とTIGERよりも低減されています。
WHITE TIGERはドライバー構成が同じですが、シェルをチタンからアクリルに変更したモデルです。カラーリングも変更されて、WHITE TIGER(白虎)という名前にふさわしいデザインになっています。
WHITE TIGER
またノズルがチタンシェルと一体成形だったTIGERと比べると、WHITE TIGERのノズルは別成形の金属ノズルになっているのでこれでも音質は異なってくると思います。これはStudioシリーズのエッセンスが生かされているとのこと。つまりWHITE TIGERはデザインだけではなく、音質も異なっています。
WHITE TIGERノズル形状
もう一つ重要な改良点はケーブル交換用の端子がqdc独自形式から、一般的な2ピンに変更されたことです。人によってはこの変更の方が魅力的に思えるかもしれません。qdc独自端子はかなりしっかりはまるのですが反面で抜けにくく、交換用のケーブルも少ないので、リケーブルを楽しむというよりは断線対策というプロ用途に考えられていたと思います。
TIGERと同じく3.5mmアンバランス・2.5mm4 極バランス、4.4mm5 極バランスの三種類に交換が可能です。また内箱には竹製ハンドメイドパッケージが使われています。
WHITE TIGER パッケージ
* TIGERとWHITE TIGERの音の比較
実際にTIGERとWHITE TIGERを比較してみます。
TIGER(右)とWHITE TIGER
比較するのに手に持っただけで、WHITE TIGERはだいぶオリジナルのTIGERより軽量に感じられます。シェルはきれいな樹脂製でフェイスプレートの紋様もきれいに浮き出るように見えます。チタンのTIGERとはまた違って、好みの問題かもしれません。イヤーピースは付け替えてみたけれども、やはりオリジナルと同じようにダブルフランジタイプが良いように思います。ポイントは装着感ですが、オリジナルよりも耳にピッタリはまるように思います。これはやはり手慣れた樹脂の造形だからなのでしょうか。オリジナルでもかなり装着感は良好だと思っていたので、これは驚きです。まさにユニバーサルイヤフォンという感じです。
遮音性は静かな部屋でファンの音に聞き耳を立てて、比べてみるとオリジナルとほぼ変わらないか、わずかにホワイトタイガーの方が良いように思います。はじめは金属シェルのオリジナルの方が良いかと思ったのだけれども、おそらくはホワイトタイガーの方がより密着性が高いので音を遮断できているのかもしれません。
TIGER(上)とWHITE TIGER
A&K SP3000でTIGERとWHITE TIGERを聴き比べてみると、オリジナルのTIGERよりもWHITE TIGERの方が硬質感は和らいでより聞きやすく、モニター的よりもリスニング寄りになった印象をうけます。WHITE TIGERの方がより音の広がり感があって、聴き比べるとオリジナルのTIGERの方がやや音が細身でコンパクトな感じを受けます。反面でオリジナルのTIGERの方がより先鋭的に感じられます。
高音域の伸びや、細かな音の解像力などはほぼ同じに聴こえるので、性能的にはやはり同等だと思います。音量位置も同じですね。
機材との相性で言うと、A&K SR35ではWHITE TIGERの方がより適合するように感じられます。これはポップやロックでより迫力が感じられ、リスニング的に少し甘く柔らかく感じられるからだと思います。
WHITE TIGERとSR35
A&K SP3000だとオリジナルのTIGERの方が良録音の弦楽四重奏を顕微鏡でモニターするような点も魅力ではあるのですが、よりリスニング寄りのSR35の場合にはWHITE TIGERの方がポップ音楽の魅力を引き出せるように思います。
SR35でメタルを聞くとオリジナルのTIGERの方がよりシャープで鋭く感じられるが、少しドライに感じられます。WHITE TIGERの方がより開けて迫力があって躍動感が感じられます。こうした硬めの録音ではWHITE TIGERの方が許容範囲は広いので好ましく聴こえる感じでしょうか。ヴォーカルも聞き取りやすいですね。特にメタルのライブのMCで比べると、WHITE TIGERの方が”カモン、メイク、ファッキング、ノイズ”とか叫んでいるのがきちんと聞き取れます。
オリジナルのTIGERの方はジャズトリオや弦楽四重奏の良録音の時に真価を発揮できる感じですね。
また両者ともおすすめはSE300のNOS/Aモードで楽しむことで、両者とも性能レベルが高いのでSE300の隠し持っている細かい音を引き出し、そのアナログ感のある音の滑らかさでオリジナルのTIGERではより硬さが解れ、WHITE TIGERではより柔らかく音楽をリラックスして楽しめるように感じられます。
WHITE TIGERとSR35
* WHITE TIGERでのリケーブル
そしてWHITE TIGERの魅力はなんと言っても業界標準的な2ピンでリケーブルができるということです。
例えばDITA AudioのDreamに付属していたVan Den Hulのケーブルではより明瞭感が感じられ、パッと晴れあがるようにより鮮明なサウンドが楽しめます。
Beat AudioのSignal(8芯)を使うとよりニュートラルで高域と低域が拡張されてワイドレンジ感が生まれるように思います。
左 WHITE TIGERとDITAケーブル、右 WHITE TIGERとBeat Signal(8芯)
やはりリケーブルすることでサウンドの個性を変えることができます。WHITE TIGERにおいては、イヤーピースはあくまで遮音目的に考えて、音を変えたいときはリケーブルすると言うのが良さそうです。
ただ標準ケーブルも音質は悪くなく、やはり合わせて設計しているので音の相性は良いと思います。つまり買ったらまずリケーブルすべきというのではなく、このケーブルをつけて音をこうしたいというビジョンを持って音をカスタマイズしたいという人には良いと思います。
WHITE TIGERに2ピンケーブルを色々差し替えて試してみたのですが、わりとみなうまくはまる印象です。2ピンは癖あるものも多いけど、この端子自体悪くないです。qdcはこういうところもなかなかしっかりしていますね。
* WHITE TIGERのまとめ
オリジナルのTIGERとWHITE TIGERではデザインだけではなく、音にもはっきりとした違いがあります。解像力やワイドレンジ特性など性能的には同じレベルで、個性や合う音楽や機材が異なります。
価格的にもかなり安くなっているので、同じレベルの音性能でリスニング寄りの音が欲しいユーザーに向いていると言えると思います。また2ピンケーブルを持っているマニアにもおすすめです。
Music TO GO!
2023年07月31日
2023年07月29日
PhilewebにVolumioのChatGPT応用のAI検索に関する記事を執筆
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https://ascii.jp/elem/000/004/144/4144495/
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